タコは道具を持ち運ぶ?メジロダコとココナッツの殻の隠れ家

タコの中には、ココナッツの殻の半分を抱えて海底を歩き回るものがいます。殻を持ち運び、あとで隠れ家として使うというのです。タコは道具を持ち運ぶのでしょうか。

この行動が報告されたのは、メジロダコ Amphioctopus marginatus です。2009年の論文によると、インドネシアの海の砂泥底で、メジロダコがココナッツの殻の半分を重ねて体の下に抱え、最大20m運び、必要なときに隠れ家として組み立てるのが観察されました。論文の著者は、これを無脊椎動物の道具使用の例としました。ただし、隠れ家を道具に含めるかどうかは定義によって評価が分かれ、タコが「先を見越して計画している」と言えるかどうかも、実験で確かめられたわけではありません。観察の中身と議論を、SOLBOY DIVE CENTERが論文と博物館の解説から整理します。

インドネシアの砂泥底での観察

観察は1999年から2008年にかけて、インドネシアの北スラウェシとバリの沖で、水深18mまでの潮下帯の砂泥底で行われました。昼夜あわせて500ダイバー時間以上をかけ、20個体を超えるメジロダコが調べられました。

タコは、空の巻貝の殻や、捨てられたココナッツの殻の半分、そのほかの人のごみの中にいたり、底に潜っていたりしました。殻を重ねて体の下に抱えたまま、かなりの距離(最大20m)を移動する個体が観察されたのは、北スラウェシで3回、バリで1回の、計4回です。殻を持たない2個体が、底に埋まっていたココナッツの殻を、水を噴き出して泥を飛ばしながら掘り出す様子も見られました。

腕を脚にして殻を運ぶ

運ぶときは、殻の凹んだ面が上を向くようにそろえ、腕を殻の外側に回して、腕を硬い脚のように使って歩きます。論文はこの歩き方を「竹馬歩き」と呼んでいます。

著者は、この八本腕のぎこちない歩き方は、何も持たないときの移動より明らかに効率が悪いと述べています。運んでいるあいだは頭と胴が捕食者にさらされ、殻はその場では身を守る役に立ちません。殻を運ぶ利益は、あとで海底の隠れ家や、潜って身を包む巣として使えることだけだというのです。ただし、エネルギーの消費や食べられる危険の大きさが実際に測られたわけではありません。

2枚の殻を運ぶ場合、タコは別々の部品を正しく組み合わせて、一つの隠れ家にしなければなりません。著者は、殻が今の作業の一部としてではなく、あとで使うために運ばれる点と、部品を組み合わせる点を、道具使用とみなす根拠に挙げています。

隠れ家は「道具」なのか

一方で、隠れ家を道具に含めるかどうかには議論があります。論文の著者自身も、動物が物を集めて使う行動は昆虫から霊長類まで続いていて、「道具」の定義はいつまでも議論の対象になると書いています。広く使われる定義では、隠れ家として物を使うことは、ふつう道具使用とはみなされません。この定義では、ヤドカリが巻貝の殻を使う例は道具使用から外れます。

水生動物の道具使用をまとめた2013年の総説は、巣や隠れ家、常に身につけている物は、捕食者が現れたときなど適切な状況で特定の方法で操作される場合を除いて、道具とはみなさないとしました。そのうえで、メジロダコのココナッツの殻を、身を守るための道具使用の例の一覧に入れています。

「将来を考えている」と言えるか

頭足類の知能をめぐる2021年の総説は、この観察から「タコはココナッツの殻が将来守ってくれると予見できる」という主張が出されたことを紹介しています。しかし同じ総説は、頭足類の複雑な認知をめぐる最近の主張の多くは逸話的な証拠にもとづくため、判断が難しいとしています。研究者は行動の裏にある心のしくみの解釈に慎重であるべきで、より単純な説明を先に検討すべきだとも述べています。

同じ総説は、メジロダコ以外のタコでも、二枚貝や巻貝の殻、プラスチックやガラスの瓶などを集めて運び、身を守るために使う観察があると紹介しています。

メジロダコと、ココナッツの殻

オーストラリア博物館によると、メジロダコは主に浅い海から水深約200mまでの、砂や泥、貝殻の混じった底にすみ、砂や泥に潜ることもできます。捨てられた二枚貝の殻やココナッツの殻の半分を身を守るために使い、その理由は、すむ場所の砂泥底が開けていて危険なためと考えられています。

ココナッツの殻は、人の沿岸の集落から出たものです。2009年の論文の著者は、この行動は軽くてきれいなココナッツの殻が手に入るようになるより前に、大きな空の二枚貝の殻を使って進化した可能性が高いと推測しています。

よくある質問

タコはみなココナッツの殻を運ぶのですか?

いいえ。殻を運ぶ様子が記録されたのは、インドネシアの砂泥底のメジロダコで、運搬が観察されたのは計4回です。ほかのタコでも殻や瓶を集めて使う観察はありますが、すべてのタコに当てはまるわけではありません。

これは道具使用なのですか?

論文の著者は、あとで使うために運び、部品を組み合わせる点から道具使用としました。一方、隠れ家として物を使うことを道具に含めない定義もあり、評価は定義によって分かれます。

タコは先のことを考えて殻を運んでいるのですか?

そう主張する見方もありますが、確かめられてはいません。2021年の総説は、頭足類の複雑な認知をめぐる主張の多くは逸話的な観察にもとづくとして、慎重な解釈を求めています。

まとめ

インドネシアの砂泥底で、メジロダコがココナッツの殻の半分を抱えて最大20m運び、必要なときに隠れ家として組み立てる様子が観察されました。運んでいるあいだはぎこちない竹馬歩きで、殻はその場では身を守りません。

論文の著者はこれを道具使用とした一方、隠れ家を道具に含めない定義もあり、タコが将来を見越しているのかは確かめられていません。観察された数が少ないことも、心に留めておきたい点です。