ナマコの中に住む魚がいる?カクレウオの仲間の暮らしと、ナマコへの入り方

ナマコの体の中を住みかにする魚がいる、と聞くと驚くかもしれません。そんな暮らしをしているのは、カクレウオ科の魚たちです。

カクレウオ科の一部の魚は、ナマコだけでなく、ヒトデや二枚貝などの体の中にすみます。同じように体の中にすむ魚でも、宿主をすみかとして使うだけの種と、宿主の体の中を食べてしまう種がいて、その違いはおもに属で分かれます。ナマコへの入り方や、ナマコの防御をすり抜ける仕組みも研究されています。カクレウオの仲間の不思議な暮らしを、SOLBOY DIVE CENTERが研究で分かったことから案内します。

ナマコだけでなく、ヒトデや貝の中にも

カクレウオ科の魚は、ウナギのような細長い体をしています。ナマコ、ヒトデ、二枚貝など、さまざまな海の無脊椎動物の中にすむ魚として知られています。英語ではパールフィッシュと呼ばれ、ある種の貝の内側で、真珠層にすっかり覆われて死んだ個体が見つかったことが名前の由来とされています。

ただし、科のすべての魚が宿主の中にすむわけではありません。2016年の論文によると、種によって宿主に入り、中にすむことができるのは Onuxodon・Carapus・Encheliophis の3つの属で、それ以外の属では、こうした共生は知られていません。日本の沿岸からは、2013年の図鑑の集計で6属13種が知られていて、自由に泳いで暮らす種もいます。

日本でも記録があります。鹿児島県の奄美大島の沿岸では、ホソシンジュカクレウオ(Onuxodon fowleri)がジャノメナマコの腸の中から見つかりました。この種は、ジャノメナマコのほか、シャコガキなどの二枚貝やバイカナマコからも報告されています。同じ調査では、カザリカクレウオ(Carapus mourlani)の2個体がマンジュウヒトデの消化管の中から見つかりました。Onuxodon 属は、真珠貝の中にすむことでもよく知られています。

すみかにするだけの種と、中を食べる種

宿主の中にすむカクレウオ科の魚は、暮らし方で2つに分けられます。2016年の論文では、Onuxodon 属と Carapus 属は宿主をすみかとして使い、外で餌をとる「片利共生者」、Encheliophis 属は宿主の中で過ごす時間が長く、生殖腺や消化腺といった内部の組織を食べる「寄生者」とみなされています。生き方の違いは、口のあごや、のどの奥にある咽頭顎の形にも表れています。

Carapus 属の成魚は、宿主の外へ出て、ゴカイの仲間、甲殻類、小魚などの小さな獲物を狩ります。日本の記録論文によると、カザリカクレウオは日中は宿主をすみかとし、夜になると外へ出て甲殻類・多毛類・小魚などを食べることが知られています。

体の成分を調べた研究でも、同じような違いが示されています。フランス領ポリネシアのモーレア島のラグーンで、魚とナマコの体に含まれる窒素と炭素の同位体を測った2004年の研究では、Carapus boraborensis と Carapus homei は、変態中の幼生から幼魚、成魚まで、宿主のナマコの組織を食べていませんでした。一方、シモフリカクレウオ(Encheliophis gracilis)は、ナマコの組織を食べている可能性が高いという結果でした。

2016年の論文は、系統と形、発生のデータを合わせて、寄生する種は、すみかとして使う片利共生の種から生じたと結論しています。

ナマコへの入り方は、頭からと尾からの2通り

カクレウオの仲間は、ナマコの肛門(総排出腔)から体の中へ入ります。2005年の論文がまとめた先行研究によると、宿主に入ろうとする魚は、頭を下に向けて泳ぎながらいろいろな物を探り、宿主を見つけると、その後ろの端を探します。

肛門を見つけたあとの入り方は2通りあります。一つは頭から入り、尾を激しく打って進む方法です。もう一つは、頭を肛門の入口に置いたまま、細い尾の先を体に沿わせて前へ回し、尾の先がナマコの中に入ったら体の向きを立て直して、後ろ向きに入っていく方法です。1979年の研究の値として、体の大きい成魚では80%が尾から入り、幼魚ではこの比率がすっかり逆になると紹介されています。幼魚は頭が小さく、頭から入るのに広い入口を必要としないためです。

肛門の位置をどう見つけるのかは、先行研究の間で意見が分かれていました。モーレア島で Carapus boraborensis と Carapus homei を調べた2005年の論文では、魚はナマコが呼吸で出す水の流れを手がかりに、肛門の位置を見つけていました。魚が触れるとナマコは肛門を閉じますが、呼吸のために緩めると魚は頭に水の流れを感じ、体をガイドにして尾を前へ回しました。実験室の観察では、ナマコは平均でおよそ8秒ごとに、約2秒間、水を吐き出していました。

ナマコの防御と毒をすり抜ける

ジャノメナマコなど、一部のナマコには「キュビエ器官」という身を守る器官があります。2005年の論文によると、モーレア島の野外でジャノメナマコの肛門に棒を差し込んで刺激したとき、キュビエ器官が出されたのは46個体のうち2個体だけでした。著者らは、この防御は捕食者の攻撃を減らすが、カクレウオ類の侵入には効果がないとしています。

ナマコの体には、膜を壊す働きを持つ「サポニン」という物質が多く含まれ、捕食者を遠ざけるのに役立っています。2015年の研究では、実験室でカクレウオ類5種と、自由に泳ぐ魚7種を同じ量のサポニンにさらしたところ、自由に泳ぐ魚はストレスの反応を示し、カクレウオ類より約45倍速く死にました。カクレウオ類もサポニンの影響を受けないわけではありませんが、ほかの魚よりはるかに強いといえます。

一つのナマコに、何匹も入っていることも

モーレア島の湾の周辺で、2000年と2002年の7〜8月に水深1〜20mのジャノメナマコ257個体を調べた研究では、84%の個体にカクレウオ類が入っていました。一方、同じ場所の別の種のナマコ(Holothuria fuscogilva 21個体、Holothuria edulis 18個体)からは、カクレウオ類は見つかりませんでした。どのナマコにも魚が入っているわけではありません。

同じナマコに Carapus boraborensis の雄と雌のペアが入っていた例は14件記録され、Carapus homei では1個体のナマコに6匹(雄1匹・雌5匹)が入っていた例もありました。この2種は、同じナマコの中で同じ種やほかの種と出会うと、音を出すことも分かっています。

ナマコは、幼生の育ちにも関わっています。Carapus homei では、サンゴ礁に定着するときにナマコの中へ入り、その後の大きな変態で体長が60%短くなります。飼育実験では、ナマコの中で過ごした幼生で、変態が最も速く進みました(15日)。

ナマコを持ち上げたり、肛門をのぞき込んだりして魚を探すのはやめましょう。ナマコの中にはキュビエ器官という防御の仕組みを持つものがいて、体に魚にとって毒になる物質を含む種もいます。触れずに見守るための心がけは、セブ島の海洋保護区のマナーでも取り上げています。

よくある質問

カクレウオの仲間は、ナマコに害を与えるのですか?

属によって違います。Carapus 属などはナマコをすみかとして使い、外で餌をとる片利共生者です。一方、Encheliophis 属はナマコの生殖腺などの内部の組織を食べる寄生者とみなされています。

どこから、どうやってナマコに入るのですか?

肛門(総排出腔)から入ります。頭から入る方法と、細い尾の先から後ろ向きに入る方法があり、1979年の研究の値では、成魚は80%が尾から、幼魚は逆に頭から入ることが多いとされています。

ナマコには、いつも魚が入っているのですか?

いいえ。モーレア島の調査では、ジャノメナマコの84%にカクレウオ類が入っていましたが、同じ場所の別の種のナマコからは見つかりませんでした。場所や時期、ナマコの種類によって違います。

まとめ

カクレウオ科の一部の魚は、ナマコやヒトデ、二枚貝などの体の中を住みかにします。Carapus 属などはすみかとして使って外で餌をとり、Encheliophis 属は宿主の内部の組織を食べるというように、属によって宿主との関係が違います。

ナマコへは肛門から頭や尾を先にして入り、呼吸の水の流れを手がかりに入口を見つけることが、モーレア島の研究で示されています。モーレア島で調べられたジャノメナマコでは、キュビエ器官はカクレウオ類の侵入を防ぎませんでした。また、別の実験では、調べたカクレウオ類はナマコの毒にほかの魚よりはるかに強いことが示されています。