とげに覆われた丸いウニ。上から見ても口は見当たりませんが、ウニの口はどこにあるのでしょうか。
一般的なウニの口は、体の下側、ふつう岩に接している面の真ん中にあります。そこには、5本の歯をもつ「アリストテレスのランタン」と呼ばれる咀嚼器が収まっています。肛門は反対の上側にあります。ただし、カシパンの仲間など砂に潜るウニのように、肛門が口のある側や体の縁へ移っているウニもいます。口と歯の仕組みと、何を食べているのかを、SOLBOY DIVE CENTERがウニの体の上下に沿って紹介していきます。
口は下、肛門は上
京都大学白浜水族館の解説によると、ウニの中身を見ると、背中側が肛門、腹側が口になっています。研究では、成体の口がある側を「口側」、肛門がある側を「反口側」と呼びます。
なお、ウニの殻の上側の中央には穴がありますが、これは肛門そのものではありません。地中海の Paracentrotus lividus を調べた2022年の研究によると、生きた個体では、この穴は肛門のまわりの小さな板(囲肛部)でふさがっています。
口と肛門の位置は、育つ途中で決まります。同じ P. lividus では、胚のときに最初にできる消化管の開口(原口)がのちに幼生の肛門になり、変態後の稚ウニの時期に消化管が作り替えられて、成体の口と肛門が開き、アリストテレスのランタンができます。
5本の歯をもつ「アリストテレスのランタン」
現生のウニの多くは、アリストテレスのランタンと呼ばれる複雑な咀嚼器を持っています。水族館の解説でも、ウニの口には五枚歯の強力な咀嚼器がついていると紹介されています。
ランタンは5つに対称なつくりで、5つの顎(錐体)がそれぞれ1本の歯を持ちます。2012年の研究によると、これまでの研究で、ランタンは歯5本を含む40個の骨格の部品と、多数の筋肉などからできているとされています。P. lividus では、ランタンは殻の中央、口のまわりの上と内側にあり、のどの部分(咽頭)を取り囲んでいます。
ランタンは主に食べるための器官ですが、その一部は食べることに直接使われません。たとえば、ランタンの上にある部品を上げ下げする筋肉は、主に呼吸を助けていると説明されています。
伸び続け、自分で研がれる歯
2014年の総説によると、ウニの5本の歯は自分で研がれ、すり減った分を絶えず補います。歯は伸び続けるので、1本の歯の中に、できたばかりの部分から固まった部分まで、石灰化のすべての段階が含まれています。歯は時間とともに前へ送られて、すり減った分を補います。
歯が自分で研がれる仕組みには、歯の材料の違いが関わっています。歯の中の板や柱をつなぐ後からできる鉱物は、最初にできる鉱物よりマグネシウムがずっと多く、これが歯の自己研磨を可能にしていると説明されています。正形のウニの殻には開口部があり、食事のときにはランタンがそこから突き出ます。
口で何を食べているのか
水族館の解説によると、ウニの仲間は多くが植物食で、主に海藻を食べています。正形のウニは、ランタンを、岩などに付いた生物をかき取ったり大きな餌を食べたりするための、つかむ道具として使います。
ただし、食べ方は種によって違います。エーゲ海の4種のウニを比べた2024年の研究では、肉食の傾向がある雑食の Arbacia lixula が、植物食の種とはランタンの形や歯の成分ではっきり分かれていました。殻の大きさに対するランタンの大きさは、餌が少ないときに大きくなる性質とされています。
日本の調査もあります。大阪湾の関西国際空港の石積み護岸で3年間調べた研究では、バフンウニとムラサキウニの胃の中に、周りの海藻群落と似た割合で、スギノリ科の紅藻とホンダワラの仲間が多く見られました。北海道の忍路湾でキタムラサキウニにコンブを与えた野外実験では、食べる量は主に生殖の周期とともに変わり、生殖巣が育つ5月に多く、成熟前の9月に少なく、冬は水温が低いため食べられませんでした。
ウニの口まで食べ物を運ぶのには、管足も使われます。円盤状の先端をもつ管足は、体のどこでつかまえた食べ物も口へ運ぶほか、姿勢を保ったり移動したりするのに使われます。管足を使った歩き方は、ヒトデの歩き方の記事で紹介しています。
肛門の位置が違うウニもいる
肛門が上にあるのは、丸い形の正形のウニの話です。砂に潜って暮らすウニ(不正形類)の多くは、体の一部か全部が砂などに覆われ、砂をのみ込んで有機物をこし取ります。そうしたウニの一種 Echinoneus cyclostomus では、長い直腸が口側にある肛門へつながっていました。
カシパンの仲間(カシパン類)は、すべて形の変わったランタンを持ち、のみ込んだ砂をより細かくすりつぶす道具として使います。カシパン類のあるグループでは肛門が口の近くにあり、Dendraster 属の現生3種では、成長の途中で肛門の位置が殻の縁から口の方へ移っていきます。
「ランタン」という名前の由来
ウニの体のつくりや暮らしは、紀元前4世紀にアリストテレスが初めて記述しました。後の動物学者がその著作をもとに、ウニの顎の装置に「アリストテレスのランタン」という名前をつけ、今では無脊椎動物学の用語として定着しています。日本の大学の発表でも、ウニの口はアリストテレスによってランタンに見立てられたと説明されています。
一方で、2008年の研究は、アリストテレスの『動物誌』の該当箇所は、写本によって口と読むか体と読むかがはっきりしないとしています。著者らは、北ギリシャの発掘で見つかった穴の開いた青銅のランタンと中の灯が記述の手本で、それぞれ殻と顎の装置に当たると結論しました。名前の由来には、こうした見方の違いがあります。
水中でウニを見かけても、口を見ようとしてつかんだり、ひっくり返したりしないでください。
よくある質問
ウニの歯は、何本あるのですか?
アリストテレスのランタンには5本の歯があり、5つの顎がそれぞれ1本ずつ持っています。歯は伸び続けて、すり減った分を補います。
ウニの餌は、海藻だけですか?
多くは植物食で、主に海藻を食べます。ただし、肉食の傾向がある雑食の種もいます。大阪湾のバフンウニとムラサキウニでは、周りの海藻群落と似た割合で紅藻やホンダワラの仲間を食べていました。
どのウニも、肛門は上にあるのですか?
丸い形の一般的なウニでは上にありますが、カシパンの仲間など砂に潜るウニでは、肛門が口のある側や体の縁の近くにある種もいます。
まとめ
一般的なウニの口は、体の下側の真ん中にあり、5本の歯をもつアリストテレスのランタンが収まっています。歯は伸び続け、自分で研がれ、ウニは主に海藻をかじり取って食べます。肛門は反対の上側にあります。
ただし、肛門の位置や口の使い方は、ウニの仲間によって違います。砂に潜るカシパンの仲間では、ランタンは砂をすりつぶす道具になり、肛門が口の近くへ移っている種もいます。