ヒトデはどうやって歩く?体の裏にある小さな足の仕組み

海底でじっとしているように見えるヒトデも、少しずつ場所を変えています。けれども、腕を大きく振って歩いているわけではありません。ヒトデは、いったいどうやって進んでいるのでしょうか。

ヒトデの体の裏側には、「管足(かんそく)」と呼ばれる小さな足がたくさん並んでいます。管足は体の中の水の圧力で伸び、筋肉で曲がったり縮んだりします。先端は吸盤のように吸いつくのではなく、接着物質を出して地面にくっつき、別の物質を使って離れると考えられています。この小さな足が少しずつ交代しながら、ヒトデの体を運んでいるのです。SOLBOY DIVE CENTERが、研究や大学の水族館の解説をもとに、ヒトデの歩き方の仕組みをひもときます。

ヒトデは世界に約2,000種いて、仕組みを詳しく調べた研究の多くは、ヨーロッパの海にすむAsterias rubensなど一部の種類を対象にしています。すべてのヒトデに同じように当てはまるとは限らない点を踏まえて読んでください。

腕ではなく「管足」で歩く

NOAA(アメリカ海洋大気庁)は一般向けの解説で、ヒトデは体の下側にある小さな管足を使って移動し、管足は獲物を押さえるのにも役立つと説明しています。京都大学白浜水族館の解説も、ヒトデの腕の中に入り込んだ水の管から管足が出ていて、この管足で移動すると紹介しています。

管足の数はとても多く、Asterias rubensでは各腕の裏側に4列に並び、中くらいの大きさの個体で約1,500本あると研究者は報告しています。NOAAは、英名でsunflower sea starと呼ばれる大型のヒトデの大人は1万5千本の管足を使い、1分間に1mの速さで動けると紹介しています。

1本の管足は、伸び縮みする円筒形の「柄」と、先端の平たい「円盤」でできています。柄の根元は、体の中にある「瓶嚢(びんのう)」という筋肉でできた小さな袋につながっています。

水の圧力と筋肉で、伸びて曲がって縮む

ヒトデの体の中には、「水管系」と呼ばれる水の通り道があります。管足はこの水管系の一部で、中は海水に似ているものの、カリウムの濃さなどが少し違う液体で満たされています。

2026年に発表されたAsterias rubensの研究は、これまでの研究をもとに、管足の動きを次のように説明しています。瓶嚢が縮んで中の圧力が上がると、液体が押し出されて管足が伸び、先端が地面に触れて付きます。柄の筋肉の一部が縮むと、管足は曲がります。地面から離れたあとは、柄の筋肉が縮んで管足が短くなり、液体が瓶嚢へ押し戻されます。

瓶嚢には輪のように巻く筋肉、柄には縦に走る筋肉があり、液体をやり取りしながら互いに逆向きに働いています。先端が地面に付いているときに柄の筋肉が縮むと、体を引き寄せる力になります。管足は、水の圧力だけでも筋肉だけでもなく、その両方を組み合わせて動いているのです。

吸盤ではなく、接着物質でくっつく

管足の先端は、吸盤のように吸いついていると長く考えられ、そう広く知られてきました。ところが、Asterias rubensとウニの一種(Paracentrotus lividus)の管足を調べた2012年の研究では、ガラスなどに付いた状態で固定した先端は完全に平らで、吸盤のようなくぼみはありませんでした。管足を引きはがすのに必要な力も、引っぱる角度によって変わりませんでした。研究者は、管足は吸引ではなく接着物質でくっついていると結論づけています。ただし、穴のあいた面を使った確認はウニでしかできず、吸引がまったく関わっていないとまでは言い切れない、とも述べています。

では、くっついた足はどうやって離れるのでしょうか。2022年のAsterias rubensの研究によると、管足の先端には接着物質を出す細胞が2種類と、離れるための物質を出す細胞が1種類あります。足が離れたあと、地面には接着物質が「足跡」として残ります。離れるときには、たんぱく質を分解する酵素の一種が出され、接着層と管足の表面との結びつきを弱めていると考えられています。離れる仕組みの細かい部分は、まだ研究が続いています。

2010年の研究は、柄の筋肉の力と先端の接着を組み合わせることで、ヒトデは垂直な面を登ったり、裏返しから起き上がったり、二枚貝をこじ開けたりできると説明しています。

たくさんの足が、少しずつ交代で働く

2026年の研究では、ベルギーの海岸で採集したAsterias rubensが実験室のガラス水槽で這う様子を、高解像度の動画で調べました。地面に付いている管足は、全体の1割に満たない数でした。1本の管足が付いている時間は1分未満で、多くは3〜20秒ほど。付く、くっついている、離れる、という動きを、たくさんの管足がくり返していました。

速く動くときは、1本1本の付いている時間が短くなっていました。背中に体重の25%や50%の重りを背負わせると、付いている時間は、空の背負い具のときの平均4.3秒から、5.9秒、8.4秒へと延びました。研究者は、脳のような中心がなくても、それぞれの管足が自分にかかる力に応じて付いている時間を調節していると考えています。ただし、どの方向へ進むかについては、体全体での調整が必要だろうとも述べています。

ヒトデの種類によっては、這うだけでなく、跳ねるような歩き方をするものもいます。インド太平洋にすむProtoreaster nodosusを調べた2024年の研究は、このヒトデが跳ねるように歩き、水中での重さを増やすと、そろって力を出す管足の数を増やして対応したと報告しています。

種類によって、速さも歩き方も違う

フィリピン南部のダバオ湾にあるサマル島の浅い海で、2008年に4種類のヒトデの移動速度を測った研究があります。海底に敷いたシートの上で測ったところ、平均の速さはLinckia laevigataが1分間に8.1cm、Protoreaster nodosusが18.8cm、サンゴを食べることで知られる多腕のヒトデAcanthaster planciが35.3cm、Archaster typicusが45.8cmと、種類によって5倍以上の差がありました。著者は、シートの上で測った速さは自然の海底での速さとは違うかもしれないと注意しています。セブ・マクタンでの測定ではありません。

管足の先端の形も一様ではなく、こぶ状のもの、単純な円盤状のもの、補強された円盤状のものの3つの型に分けられています。

腕は5本とは限らない

ヒトデというと5本腕の星形を思い浮かべますが、NOAAによると、すべてのヒトデが5本腕というわけではなく、10本、20本、40本もの腕を持つ種類もいます。Patiria miniataというヒトデには5本腕と6本腕の個体がいますが、腕の数による這う速さの違いは見られなかったという研究もあります。

ヒトデは失った腕を再生できることで知られ、棘皮動物の再生についての総説によると、場合によっては残った腕から体全体を再生することもあります。ただし、再生の力は種類やグループによって違います。

ヒトデに似た仲間のクモヒトデは、歩き方が違います。現生のクモヒトデの多くは、細長い腕をむちのように動かして移動します。北海道大学の研究の紹介でも、クモヒトデは腕を使って地面を這うと説明されています。ただし、洞窟にすむ種類のように、管足で歩くクモヒトデもいます。

ヒトデを見かけたら

水中でヒトデを見かけても、裏返したり、岩から剥がしたり、持ち上げたりしないようにしましょう。研究によると、ヒトデを扱うと管足の柄が途中で切れて、先端が岩に付いたまま残ってしまうことがあります。また、ヒトデは手で触れられると動きを止めてしまうため、移動を調べる研究でも、しばらく慣らしてから観察しています。少し離れた位置から、腕の先や体の縁の動きを、時間をかけて眺めてみてください。海の生き物を観察するときのマナーは、セブ島ダイビングの海洋保護区マナー|サンゴと生き物を守る基本でも紹介しています。

歩き方を知ると、観察も変わる

大きく場所を変える魚だけでなく、海底を少しずつ進む生き物にも、それぞれの暮らしがあります。セブの海の様子は、海の生き物の紹介をご覧ください。海への参加をお考えの方は、初めての方向けの案内やファンダイビングのページへ。ご不明な点はLINEから当店へご相談いただけます。

よくある質問

ヒトデの管足は吸盤なのですか?

研究によると、吸盤のように吸いつくのではなく、先端から出す接着物質でくっついています。Asterias rubensとウニの一種の実験では、先端に吸盤のようなくぼみはありませんでした。ただし、吸引がまったく関わっていないとまでは言い切れない、と研究者は述べています。

ヒトデはどれくらいの速さで動くのですか?

種類や条件によって大きく違います。フィリピン南部の海で4種類を測った研究では、平均で1分間に約8cmから約46cmまでの差がありました。ただし、海底に敷いたシートの上での測定で、自然の海底での速さとは違う可能性があります。

ヒトデの腕は、いつも5本ですか?

いいえ。すべてのヒトデが5本腕というわけではなく、10本、20本、40本の腕を持つ種類もいます。同じ種類の中で、5本腕と6本腕の個体がいることもあります。

ヒトデを裏返して、足の動きを見てもいいですか?

裏返したり、剥がしたり、持ち上げたりするのはやめましょう。扱うと管足が途中で切れてしまうことがあり、ヒトデも動きを止めてしまいます。そのままの姿を、少し離れて眺めてください。

まとめ

ヒトデは、腕を振って歩くのではなく、体の裏側に並ぶたくさんの管足で進みます。管足は水管系の水の圧力で伸び、筋肉で曲がったり縮んだりします。先端は吸盤ではなく接着物質でくっつき、別の物質で離れると考えられています。

Asterias rubensを調べた実験では、一度に地面に付く管足は全体のごく一部で、付いたり離れたりする動きが繰り返されていました。速さや歩き方、腕の数は種類によってさまざまです。海でヒトデに出会えたら、触らずに、そのゆっくりした動きを眺めてみてください。