ジュゴンは何を食べる?海草を専門に食べる海の哺乳類と、日本の現状

ジュゴンは、海の中で草を食べて暮らす哺乳類です。その食事の中身と食べ方には、どんな特徴があるのでしょうか。

ジュゴンが専門に食べるのは、海の中に生える種子植物の「海草」で、海藻(海の藻類)は原則として食べません。泥ごと口に入れて海草を食べ、海底には「食み跡」と呼ばれる跡が残ります。日本では沖縄諸島が分布の北限で、環境省のレッドリスト2020で絶滅危惧IA類とされています。沖縄のジュゴンについては、2019年までに知られていた個体が姿を消したとする研究と、2022年にふんからジュゴンのDNAが見つかったとする研究があります。ジュゴンの食べ物と暮らし、日本の現状を、SOLBOY DIVE CENTERが研究と環境省の資料から紹介します。

太平洋とインド洋にすむ、ただ一つの海牛類

ジュゴンは海牛類に属する海の哺乳類で、太平洋とインド洋にいま生息する、ただ一つの海牛類です。京都大学の研究者の総説によると、ソロモン諸島から紅海まで、太平洋の西部とインド洋の熱帯の浅い海に広く分布しています。呼吸のために1〜5分おきに水面に出てきて、あまり深くは潜れず、最大で20mを12分間潜った記録があります。

いま生きている種に限れば、ジュゴンは1科1属1種です。大西洋側には、ジュゴンとよく似た3種のマナティーがすんでいます。

海草を専門に食べる

総説によると、ジュゴンはマナティーと違い、海草を専門に食べ、海藻を食べることは原則としてありません。ただし、食べるものが何もないときは、海藻を食べることもあります。

好む海草は地域によって違います。柔らかい海草を好み、調べられたタイとフィリピンでは、ウミヒルモだけを食べ、ほかの海草は食べていないと考えられています。一方、沖縄では、ウミヒルモ以外のリュウキュウスガモなども食べていることが確認されています。

食べ方も独特です。海底の泥と一緒に海草を口に取り込み、水の流れを起こして泥を吹き出してから海草を食べます。食べたあとの海底には「食み跡」が残り、その長さは1〜5mほど、幅は19〜25cm、深さは約3〜5cmです。

草を消化するための体のつくりもあります。消化管の長さは体長の10倍にもなり、盲腸と大腸で腸内の微生物と共生して発酵させ、海草のセルロースを分解して消化します。なお、総説の著者は、これまで推定されてきた食べる速さは、1年を通した平均と比べるとかなり大きく見積もられているのではないかと考えています。

フィリピンのダバオ湾での観察

総説の著者らは、フィリピンのミンダナオ島南東部にあるダバオ湾でも観察を行いました。ジュゴンが食べに来るウミヒルモの藻場の広さは1ha程度でしたが、9頭が同時に見られたことから9頭以上、観察から10〜15頭がこの藻場に来ていると推定されました。

2022年の研究によると、フィリピンではジュゴンの個体群は分断されていて、台湾では地域的に絶滅しています。三重県の鳥羽水族館で飼育されているジュゴンは、1986年にフィリピンで保護されたメスです。

マナティーとの違い

ジュゴンとマナティーは、海の哺乳類の中では珍しく、水中の植物を食べるように適応した仲間です。それでも違いがあります。食べ物では、ジュゴンが海草を専門に食べるのに対し、マナティーは海草専門ではありません。

口のつくりも違います。2024年の解説によると、海牛類は口の前に角質のパッドを持ち、植物を扱うのに、ジュゴンは一対の牙を、マナティーは生え替わり続ける臼歯を使います。すむ場所も、ジュゴンは太平洋とインド洋、マナティーは大西洋側です。ジュゴンの尾びれは、後ろの縁がへこんだ三日月形をしています。海牛類は外洋の暮らしには移れず、海草などのえさが多い沿岸と結びついたまま暮らしてきました。

日本のジュゴンの現状

日本では、沖縄諸島がジュゴンの分布の北限です。2015年の学会記録によると、明治26・27年ごろから、沖縄島ではダイナマイトを使った猟でジュゴンの乱獲が始まりました。環境省のレッドリスト2020(2020年3月27日公表)では、ジュゴンは哺乳類の絶滅危惧IA類に掲載されています。2026年10月時点の環境省の説明では、哺乳類を含む陸域動物の多くの分類群は、このレッドリスト2020の評価が最新です。国際自然保護連合(IUCN)では、種全体は「危急」、南西諸島の亜個体群は2019年に「深刻な危機」とされていて、評価の対象が違います。

沖縄島のジュゴンの数については、2022年の研究が、19世紀の約280〜420頭から、1917年に約100頭未満、1979年に70頭未満、1997年に11頭、2006年以降は3頭と推定し、知られていた個体は2019年までにすべて姿を消すか死んだと報告しました。識別されていた個体Bは、2019年3月18日、エイのとげが刺さった状態で死んで、運天漁港に打ち上げられました。

一方、2024年の研究は、2022年に宮古諸島の伊良部島と沖縄島の久志の海草藻場で集めた大型の草食動物のふんをDNAで調べ、その一部がジュゴンのものだと分かったと報告しています。この地域のジュゴンは、最近の研究で絶滅したと扱われていました。沖縄では、地元の漁協による海草の食み跡の長期的な調査も行われてきました。ジュゴンは保護の対象で、沖縄ではきわめて少ないため、近づいたり触ったり、えさを与えたりしないでください。

よくある質問

ジュゴンは、海藻も食べるのですか?

原則として食べません。ジュゴンが専門に食べるのは海草ですが、食べるものが何もないときは、海藻を食べることもあるとされています。

日本のジュゴンは、絶滅したのですか?

断定はできません。沖縄島で知られていた個体は2019年までにすべて姿を消したとする研究がある一方、2022年に集めたふんからジュゴンのDNAが見つかったとする研究もあります。環境省のレッドリスト2020では、絶滅危惧IA類とされています。

ジュゴンとマナティーは、どう違うのですか?

ジュゴンは海草を専門に食べ、植物を扱うのに一対の牙を使います。マナティーは生え替わり続ける臼歯を使います。すむ場所も、ジュゴンは太平洋とインド洋、マナティーは大西洋側です。

まとめ

ジュゴンは海草を専門に食べる海牛類で、泥ごと口に入れて海草を食べ、海底に食み跡を残します。長い消化管と腸内の微生物の働きで、海草を消化しています。

日本では沖縄諸島が分布の北限で、環境省のレッドリスト2020で絶滅危惧IA類とされています。知られていた個体が2019年までに姿を消したとする報告の後、2022年に採取されたふんからジュゴンのDNAが見つかったことも報告されています。