クモヒトデは、腕を失っても再生できる?自分で切り離し、丸ごと生やし直す腕

細長い腕をくねらせて動くクモヒトデ。腕が途中で切れてしまったら、また生えてくるのでしょうか。

クモヒトデは、おとなになってからでも、失った腕を丸ごと再生できます。危険がせまると、つかまれた腕を自分で切り離す「自切」もします。ただし、再生にかかる日数は、種類や失った腕の長さ、体の大きさ、水温などによって大きく変わります。腕が切れる仕組みと、再生の進み方を、SOLBOY DIVE CENTERが飼育実験と野外の調査から読みときます。

腕を自分で切り離す「自切」

1984年の日本の総説によると、棘皮動物の多くは自切をします。クモヒトデやウミシダ、ヒトデは、腕をつかまれるとその腕を自分で切り落とします。このとき、腕の骨片をつなぐ靭帯がとてもやわらかくなり、その部分で腕が切り離されます。身を守るための反応です。

この切り離しに関わるのが、「キャッチ結合組織」です。コラーゲンでできた結合組織で、神経の働きで、秒から分の単位で硬さを素早く変えられます。緊急のときに極端にやわらかく切れやすくなることで、体の一部を切り離せるようにしています。

2024年の研究によると、クモヒトデの自切は、腕の骨(椎骨)と骨の間の切れ目で起きます。表皮のもともと弱い部分、神経の働きで弱くなる腱、硬さの変わる結合組織が、切り離しを支えています。別の2024年の研究は、となり合う椎骨をつなぐ靭帯と、筋肉の端の腱が、引っ張りに耐える強さを急に大きく失うことで腕が切れると説明しています。大きな筋肉はそのまま残されます。

腕のどの切れ目でも切り離しが起こせることと、速く再生できることの両方が、クモヒトデの自切を役立つものにしています。ただし、自切がいつも身を守る結果になるとは限りません。汽水域のクモヒトデ Ophiophragmus filograneus を極端に高い塩分や低い塩分にさらした実験では、自切が増え、その後死亡しました。

腕を丸ごと再生する

クモヒトデの仲間(クモヒトデ綱)は棘皮動物の中で最も種類が多く、2,000種を超えます。日本産でもおよそ340種が知られています。2016年の研究によると、クモヒトデは腕を切断されたあと、腕を丸ごと再生します。おとなになっても、腕全体を再生できます。

再生の進み方は、北海の砂泥に潜る Amphiura filiformis で詳しく調べられています。14℃の水槽で飼い、盤(体の中心部分)から1cmのところで切った腕の観察では、次のように進みました。

  • 切断後1〜4日:傷がふさがり、表皮がつくり直される
  • 平均5.3日:切り口の先に小さな再生のもと(再生芽)が出る
  • 平均7.8日:最初の節ができる
  • 2〜3週:再生した部分の50%で、とげや管足などができあがる
  • 4〜5週:その割合が95%になる

ここでの50%・95%は、再生した部分のうち、とげや管足などができあがった部分の長さの割合で、腕の長さが元に戻るまでの日数ではありません。また、これはこの種・この条件での値で、ほかのクモヒトデにそのまま当てはまるものではありません。

2024年の研究では、腕の再生で、傷の治癒、細胞の増殖、分化を順に担う遺伝子の働きの波が見つかりました。体から切り離した腕の一部でも、体についた腕と同じく先端側から再生し、根元側は傷がふさがるだけでした。日本の東京大学三崎臨海実験所で調べられたテヅルモヅルの仲間 Astrocladus dofleini は、複雑に枝分かれした腕を持ちますが、その再生の形づくりは、ほかのクモヒトデの枝分かれしない腕と似たパターンでした。

再生の速さは、条件で大きく変わる

同じ条件で実験しても、再生の速さには予想外に大きな個体差がありました。2006年の研究によると、再生では、腕の長さを伸ばすことと、餌をとる機能を取り戻すことの間に兼ね合いがあり、失った腕の長さが、どちらにより多くエネルギーを使うかを決めていました。

再生には負担もかかります。外傷で失った腕の再生には代謝の大きな上昇がともない、二酸化炭素の多い条件(pH 7.0)の実験では再生に使える余力が大きく減り、再生の速さは80%低下しました。地中海の Ophioderma longicauda を17・26・30℃で14週間飼った研究でも、再生は水温の影響を強く受けました。

海の中では、腕はよくかじられている

スウェーデン西岸の水深40mにすむ Amphiura filiformis の野外調査では、捕食者がクモヒトデ全体を食べることは少なく、腕だけをかじり取り、その腕はあとで再生されていました。この個体群では、年間の生産量の約13.3%が腕の再生にあてられ、おとなでは再生した部分の重さが体全体の12〜30%(平均22%)を占めていました。

1988年の日本の総説によると、深海のクモヒトデでも再生した腕が多く、かなり捕食を受けていることがうかがえます。捕食者としては魚、特にソコダラの仲間や、カニ、ヒトデが知られています。

ヒトデが管足を使って歩く仕組みはヒトデの歩き方の記事にあります。水中でクモヒトデを見かけても、腕をつかんだり、引っ張ったりしないでください。

よくある質問

クモヒトデの腕は、どのくらいで再生するのですか?

種と条件で大きく違います。14℃で飼った Amphiura filiformis では、1〜4日で傷がふさがり、約8日で最初の節ができ、4〜5週で再生部分のほとんどにとげや管足などができあがりました。

切り離された腕から、新しいクモヒトデができるのですか?

研究で確かめられているのは、体に残った側から腕を再生することです。Amphiura filiformis の実験では、切り離した腕の一部は先端側だけが再生し、根元側は傷がふさがるだけでした。

自切をすれば、クモヒトデは助かるのですか?

捕食者から逃れるための防御反応と考えられていますが、いつも助かるとは限りません。極端な塩分にさらした実験では、自切が増えたあとに死亡した例がありました。

まとめ

クモヒトデは、おとなになってからでも腕を丸ごと再生できます。腕は、骨と骨の間の決まった切れ目で、靭帯や腱が急に弱くなることで切り離され(自切)、つかまれた腕を手放して身を守ります。

再生は、傷がふさがり、再生のもとができ、節がつくられて進みますが、その速さは種、失った長さ、体の大きさ、水温、海水の状態で大きく変わります。海の中では腕がよくかじられていて、再生にかなりのエネルギーが使われている個体群もあります。