カニはなぜ横に歩く?脚と体のつくりと、前に歩くカニ

カニといえば、横歩きを思い浮かべる人が多いでしょう。でも、カニはなぜ横に歩くのでしょうか。そして、すべてのカニが横に歩くのでしょうか。

研究によると、横歩きは、脚の関節が横方向によく曲がることや、胸の部分が進む方向に伸びていることと関係しています。2026年に発表された50種のカニの研究では、横歩きは前に歩いていた祖先から一度だけ生まれ、その後いくつかのグループで前歩きに戻ったと推定されました。主に前に歩くカニもいます。ただし、横歩きがなぜ有利なのかについては、仮説にとどまっています。カニの歩き方の研究を、SOLBOY DIVE CENTERが2026年の研究を中心に見渡します。

横歩きは、カニの代表的な特徴

2026年の研究によると、横歩きは「真のカニ」と呼ばれる短尾下目を特徴づける性質で、カニの生態的な成功に役立った可能性があります。真のカニは約7,904種いて、姉妹群のヤドカリなどの仲間(約3,437種)を大きく上回ります。1994年の日本の解説は、日本の周辺だけでもカニは900種を超えると紹介しています。

同じ1994年の解説によると、カニは8本の歩脚を交互に繰り出しながら横に歩き、歩脚の付け根の関節はどの方向にも動くので、横に歩きながら向きを変えることもできます。

脚の関節と、胸の形

横歩きのカニは、どんな体のつくりをしているのでしょうか。2008年の研究は、横歩きのカニ Carcinus maenas、主に前に歩くカニ Libinia emarginata、前に歩くザリガニ Procambarus clarkii の3種の骨格と関節を比べました。その結果、よく進む向きに曲がる関節ほど動く範囲が大きく、その関節より根元側の脚の節は相対的に長い傾向がありました。胸の部分の伸び方、脚の長さ、休むときの脚の置き方にも、歩く向きの好みが表れていました。

Libinia emarginata は、多くのカニと違って、80%の時間を前に歩きます。このカニの脚の根元側の筋肉は、近い仲間の横歩きの種より多くの運動ニューロンに支配され、前に歩くエビやザリガニの仲間に似ていました。研究者らは、前歩きから横歩きへ移るときに、脚の根元側の役割が減り、より先にある関節が重視されるようになったと提案しています。

横歩きは、一度だけ生まれた

2026年の研究は、生きたカニ50種の動きを撮影して解析し、その動き方を横歩きと前歩きの2つに大きく分けました。50種のうち35種が横歩き、15種が主に前歩きでした。系統と照らし合わせると、横歩きは前に歩いていた祖先から一度だけ生まれ、そのあと、暮らし方が特殊化したいくつかのグループで、前歩きへの逆戻りが別々に何度か起きたと推定されました。早くに分かれた系統は、カニの共通の祖先が持っていた前歩きを保っていると考えられています。

研究者らは、横歩きなら左右どちらへも素早く動け、捕食者から逃げるのに有利かもしれないと考えています。また、横歩きが真のカニの多様化を後押しした鍵だったという考えと矛盾しない結果だとしています。ただし、動き方は1種あたり1個体から測ったもので、横歩きと種の多さの関係はあくまで相関にとどまることも指摘されています。

前に歩くカニ、ミナミコメツキガニ

前に歩くカニの例が、ミナミコメツキガニの仲間です。日本の種(Mictyris guinotae)は日本の固有種で、種子島から琉球諸島の河口の干潟に分布します。信州大学の研究者らの論文によると、このカニは多くのカニと違って前に進むので、放浪する集団は行進する軍隊のように見え、英語では「兵隊ガニ(soldier crab)」と呼ばれます。おもな捕食者は鳥で、鳥に気づくと砂泥に体をねじ込んで隠れるため、集団はすぐに消えてしまいます。

2026年の研究も、ミナミコメツキガニの仲間(解析したのは Mictyris brevidactylus)を前歩きのカニとし、群れで暮らして集団でそろって動くことが、前歩きへの逆戻りにつながった可能性を挙げています。

よくある質問

カニは、みな横に歩くのですか?

いいえ。2026年の研究では、調べた50種のうち15種が主に前に歩いていました。ミナミコメツキガニの仲間なども、前に進むカニです。

カニの脚は、横にしか曲がらないのですか?

そうとは言い切れません。1994年の解説によると、歩脚の付け根の関節はどの方向にも動きます。3種を比べた研究では、よく進む向きに曲がる関節ほど動く範囲が大きくなっていました。

横歩きには、どんな得があるのですか?

左右どちらへも素早く動けるため、捕食者から逃げるのに有利かもしれないと考えられています。ただし、確かめられた理由ではなく、仮説の段階です。

まとめ

カニの横歩きは、横方向によく曲がる関節や、進む方向に伸びた胸の形と関係しています。2026年の50種の研究では、横歩きは前に歩く祖先から一度だけ生まれ、いくつかのグループで前歩きに戻ったと推定されました。

一方で、ミナミコメツキガニのように前に歩くカニもいて、横歩きが有利な理由はまだ仮説です。「カニは横に歩く」は、多くのカニに当てはまる特徴といえます。