殻のすき間から、青や緑、金色に輝く外套膜をのぞかせるシャコガイ。貝なのに、なぜあんなに色鮮やかなのでしょうか。
鮮やかな色の主な正体は、外套膜の表面に並ぶ、光を反射する細胞(虹色素胞、英語で iridocyte)がつくる色です。その下には、光合成をする共生藻(褐虫藻)がぎっしりすんでいます。研究では、この細胞が光合成に役立つ光を組織の奥へ送り、役立たない光を反射していると考えられています。あの色は、体の中の藻と光の関係に深く関わっていると考えられています。色の仕組みと共生藻との関係を、SOLBOY DIVE CENTERが光の研究から読み取ります。
外套膜に褐虫藻をすまわせる二枚貝
シャコガイの仲間は、亜熱帯などの浅い海にすむ大型の二枚貝です。2021年の日本の論文によると、シャコガイ類は外套膜の中に褐虫藻と呼ばれる藻(渦鞭毛藻)を共生させ、栄養の多くを褐虫藻に頼っているとされます。共生がうまくいかなかった個体は生き残れません。シャコガイは、単細胞の藻と共生する数少ない二枚貝のグループの一つです。
2021年の研究で紹介された過去の研究によると、光合成をする藻は、光合成でつくった栄養の最大95%をシャコガイに渡すことがあります。2016年の研究は、栄養の乏しい海で最大1.4mにまで育てるのは、主に組織の中に保つ密な藻のおかげだと説明しています。サンゴも同じように褐虫藻と共生していて、その仕組みはサンゴの記事で説明しています。
シャコガイの藻は細胞の外にいて、胃から伸びる枝分かれした細い管の中にすんでいます。藻の大部分が入る細い管は、色素と虹色素胞を含む、色鮮やかで伸び縮みする外套膜の外側の部分に集まっています。
あの色は、光を反射する細胞の色
2014年の研究によると、シャコガイの外套膜の表面は虹色素胞の層で覆われていて、これがきらきらした色鮮やかな見た目を生んでいます。2016年の研究も、シャコガイの青・緑・金色の虹色は、表面の虹色素胞が反射する光によると述べています。
シャコガイの虹色素胞は、1つ1つが直径約8µm(5〜15µmほど)の小さな球形の細胞です。イカやコウイカの大きく平たい虹色素胞(約100µm)とは形が違います。
色が藻そのものの色ではないことは、珍しい個体からも分かります。2014年の研究の図では、虹色素胞を持たない Tridacna crocea(ヒメジャコ)の個体は、高い密度の藻のために暗い色に見えていました。
色をつくる細胞は、光を配り直している
パラオのコロールで、ヒメジャコ、シラナミ、Tridacna derasa の生きた組織の中の光を測った2014年の研究では、虹色素胞の層が、光合成に役立つ波長の光を組織の中へ横や前方に散らして配り、役立たない波長は反射していました。縦に柱のように並んだ藻の配置と組み合わさって、入ってきた光が柱の側面に均等に配り直され、組織の深いところでも光合成ができると考えられています。著者らは、浅いサンゴ礁の光の強さでは、この配置によって藻が太陽の光を効率よく使い、光による傷みを避けられる可能性があるとしています。
同じ3種を調べた2016年の研究は、測定とコンピュータでの計算から、細胞の中の反射の仕組みが色のついた光を反射し、別の散らし方が前方へ光を送って藻を照らすと説明しています。計算では、調べたすべての大きさと波長で、入ってきた光のエネルギーの90%以上が前方へ散らされる光で運ばれました。
ただし、反射の強さは一様ではありません。同じ研究では、反射の強さの最大値が1〜35%とばらつき、3種のどれでも、同じ個体の中でも個体どうしでも同じくらいの差がありました。また、虹色素胞の働きについては、日焼け止めとする説から、光合成を助けるとする説まで、さまざまな考えが出されてきました。
日差しを受けながら、紫外線から守る
シャコガイは、殻の重い蝶番や岩に穴を掘る暮らし方によって、殻の開いた側がいつも空を向き、外套膜を日光にさらすように進化してきたとされます。一方で、強い日差しには有害な紫外線も含まれます。
石垣島で漁業者が採集したヒメジャコ3個体を調べた2020年の研究では、紫外線を吸収する物質(マイコスポリン類)の一部が外套膜の最も外側の層に集まっていて、外套膜の表面の層は波長320nm前後の紫外線を吸収していました。ヒメジャコは、浅いサンゴ礁に多くすむ種です。
共生する藻の種類も、種や場所で違う
シャコガイの幼生は、生まれたときには褐虫藻を持たず、世代ごとに周りの環境から取り込む必要があります。日本のシャコガイの種苗生産の研究では、ヒレジャコの幼生に、生きた褐虫藻を含むシャコガイの糞を与えると、9日目に15〜34%が胃に褐虫藻を取り込み、14日目には褐虫藻が幼生の縁に届いて共生の成立が確かめられました。
共生する藻の種類は、シャコガイの種や大きさ、すむ場所によって違います。紅海のシラナミでは、アカバ湾の個体が3つの属の藻を持ち、ほかの地点の個体は1つの属だけと共生していました。フィリピンの11地点で8種を調べた研究では、多くの個体で1つの属の藻が優勢で、最も多いのは Cladocopium 属でした。この研究の採集地は、ボホールやカミギンなどで、セブ・マクタンは含まれていません。
見かけても、触らずに
シャコガイの仲間は、サンゴ礁の大切な資源として長く利用されてきましたが、天然の資源量は大きく減っていると報告されています。水中で見かけても、採ったり、外套膜をつついたりしないでください。
よくある質問
シャコガイの色は、共生藻の色なのですか?
主な鮮やかさは、外套膜の表面にある虹色素胞が光を反射してできる色です。虹色素胞を持たない珍しい個体は、藻のために暗い色に見えていました。外套膜には色素もありますが、色素の種類まではここで扱った研究では特定されていません。
シャコガイは、栄養をどこから得ているのですか?
栄養の多くを、外套膜の中にすむ褐虫藻の光合成に頼っているとされます。藻は、光合成でつくった栄養の最大95%をシャコガイに渡すことがあると報告されています。
シャコガイも、サンゴのように褐虫藻と共生しているのですか?
はい。シャコガイの藻は細胞の外、胃から伸びる細い管の中にすんでいます。幼生は生まれたときには藻を持たず、周りの環境から取り込みます。
まとめ
シャコガイの鮮やかな青・緑・金色は、外套膜の表面に並ぶ虹色素胞が光を反射してできる色が中心です。その下には共生藻(褐虫藻)が密集していて、虹色素胞は光合成に役立つ光を組織の奥へ配り、役立たない光を反射していると考えられています。
色の反射の強さは個体によってもばらつき、外套膜の表面には紫外線を吸収する物質も見つかっています。共生する藻の種類も、種や場所によって違います。