ニュースで「サンゴの白化」という言葉を聞いたり、海で真っ白になったサンゴを見かけたりして、「白いサンゴはもう死んでいるの?」と気になった方もいるのではないでしょうか。
白化は、サンゴが体の中に住む藻を失って白く見える状態のことです。白化で白くなったサンゴは、その時点ではまだ生きています。ただし、弱って死にやすい状態でもあります。白化の仕組みと原因、2023年から2025年にかけて世界で起きた大規模な白化、そしてダイバーとしてできることを、NOAAや国立環境研究所の解説をもとにSOLBOY DIVE CENTERがお伝えします。

白化とは?サンゴから褐虫藻が抜けて、白い骨格が透けて見える状態
サンゴはイソギンチャクやクラゲの仲間の動物で、組織の中に褐虫藻(かっちゅうそう)という小さな藻を住まわせています。褐虫藻は光合成で作った栄養をサンゴに渡していて、サンゴの色の多くも、この褐虫藻によるものです。

米国海洋大気庁(NOAA)によると、サンゴは水温や光、栄養などの条件が変わってストレスを受けると、組織の中の褐虫藻を体の外へ出してしまい、真っ白になります。これが白化です。国立環境研究所の解説では、環境のストレスで褐虫藻の光合成の仕組みが傷つき、褐虫藻がサンゴから失われることで起こると説明しています。
白化は多くの場合、一気にではなく、ストレスが強まるにつれて少しずつ進みます。色が薄くなり始め、やがて白くなります。このときポリプはほぼ透明になり、その下にある白い骨格が透けて見えるのです。
白いサンゴは死んでいる?
白化したサンゴは、死んでいるわけではありません。NOAAは、白化してもサンゴは生き延びることがあるものの、ストレスが大きく、死にやすい状態にあると説明しています。
その後どうなるかは、ストレスの強さと長さによって変わります。
- ストレスが弱まった場合:白化が重くなければ、サンゴは回復することがあります。国立環境研究所も、環境が回復すれば褐虫藻を再び取り込んで健全な状態に戻ると説明しています。
- ストレスが長く続いた場合:主な栄養源である褐虫藻を失ったままの状態が長引くと、サンゴは最終的に飢えて死んでしまいます。白化している間は、病気にもかかりやすくなります。
回復したサンゴにも影響は残ります。NOAAによると、白化から回復したサンゴは見た目が元どおりでも健康が損なわれていて、病気にかかりやすく、骨格の成長や繁殖に回せるエネルギーが減ります。白化は、回復すれば終わりという出来事ではないのです。
白化はなぜ起きる?
最大の原因は海水温の上昇
NOAAは、気候変動による海水温の上昇を、サンゴの白化の最大の原因に挙げています。国立環境研究所の解説では、サンゴが暮らすのに適した水温は25〜28℃といわれ、30℃を超える状態が長く続くと白化が起こるとしています。ただし、白化の引き金になるのはその海の平年より高い水温で、温帯の海では30℃に届かなくても白化が起きた例があります。
水温以外のストレスも白化を起こす
白化を起こすのは高水温だけではありません。NOAAや国立環境研究所の解説では、次のようなストレスも挙げられています。
- 水温が低くなりすぎること
- 水温が高いときの強い日射(浅いサンゴ)
- 大潮の極端な干潮で空気にさらされること(浅いサンゴ)
- 大雨で海水が急に薄まることや、陸から汚れや土砂が流れ込むこと(沿岸のサンゴ)
こうしたストレスが高水温と重なることで、影響が大きくなることも指摘されています。
2023〜2025年、世界で起きた大規模な白化
2024年4月15日、NOAAは世界が観測史上4回目の「世界規模のサンゴ白化現象」のさなかにあると発表しました。過去10年で2回目の世界規模の白化です。
NOAAのサンゴ礁監視プログラム(Coral Reef Watch)の集計では、2023年1月1日から2025年9月30日までに、世界のサンゴ礁の面積の約84.4%が、白化が起こるレベルの熱ストレスを受けました。少なくとも83の国と地域で大規模な白化が記録されています。これは「84%のサンゴが白化した、死んだ」という意味ではなく、白化を起こすほどの高水温にさらされた海の広さを示す数字です。
世界規模の白化は回を追うごとに広がっています。白化レベルの熱ストレスを受けたサンゴ礁の割合は、1回目の1998年が21%、2回目の2010年が37%、3回目の2014〜2017年が68%でした。
NOAAは2026年6月、この4回目の世界規模の白化は2025年半ばに「おそらく終息した」と判断したと発表しました。一方で、Coral Reef Watchの統括者は「サンゴ礁がほぼ毎年のように白化する時代に入った」と述べています。NOAAは同じ発表で、数か月以内にエルニーニョの発生が見込まれることから、再び広い範囲で白化が起きるおそれがあるとしていました。
フィリピンでも影響は出ています。フィリピン科学技術省の研究機関(PCAARRD)が2025年11月に紹介した調査では、フィリピン大学海洋科学研究所が2022〜2025年に西フィリピン海のサンゴ礁を調べ、パンガシナン州ボリナオ・アンダとサンバレス州イバでは硬いサンゴの60〜77%が白化し、その多くが重度でした。バタンガス州ロボと東ミンドロ州プエルトガレラでは白化は比較的軽く、20〜43%でした。同じ時期でも、場所によって影響の大きさが違ったということです。セブやマクタン周辺の数字ではありません。
ダイバーや旅行者にできること
白化の最大の原因は海水温の上昇なので、ダイバー一人ひとりが水中で白化を止めることはできません。それでも、弱っているサンゴにさらにストレスを加えないことはできます。

白化しているサンゴは、病気にかかりやすい状態です。NOAAは、サンゴに触れると外側の保護層をはがしたり、感染症を広げたりするおそれがあると注意しています。白いサンゴを見かけても、近づいて触ったり、フィンで砂を巻き上げたりせず、いつも以上に距離をとって観察しましょう。浮力と姿勢を安定させることが、サンゴに触れないための基本です。
サンゴを守るための基本的なマナーはセブ島ダイビングの海洋保護区マナーに、浮力の基本はダイビングの中性浮力とは?にまとめています。また、深い場所ではサンゴの色がくすんで見えることがありますが、これは水が赤い光を吸収するためで、白化とは別の現象です。詳しくは水中では色がどう見える?をご覧ください。
マクタンの海でサンゴ礁を見るときに
SOLBOY DIVE CENTERがご案内するポイントには、サンゴ礁とドロップオフ・スロープのあるナルスアン島や、海洋保護区のヒルトゥガン島があります。海の様子は季節やその年の水温、その日の条件によって変わります。ポイントごとの見どころはセブ島のダイビングで見られる魚や海の生き物で紹介しています。
水中で白いサンゴが気になったら、ダイビングのあとでインストラクターに聞いてみてください。ポイントの最近の様子について気になることがあれば、LINEでご相談いただけます。
よくある質問
白化したサンゴは死んでいるのですか?
白化した時点では、サンゴはまだ生きています。ただし主な栄養源の褐虫藻を失っていて、死にやすい状態です。ストレスが長く続くと、飢えたり病気にかかったりして死んでしまうことがあります。
白化したサンゴは元に戻りますか?
白化が重くなく、水温などのストレスが弱まれば、褐虫藻を再び取り込んで回復することがあります。ただし回復したサンゴも健康が損なわれ、病気にかかりやすくなったり、成長や繁殖に使えるエネルギーが減ったりします。
白化の原因は水温だけですか?
最大の原因は海水温の上昇ですが、水温が低すぎること、強い日射、極端な干潮で空気にさらされること、大雨による海水の希釈や陸からの汚れ・土砂の流入なども白化を起こします。
2023〜2025年の白化はどれくらいの規模でしたか?
NOAAの集計では、2023年1月から2025年9月までに世界のサンゴ礁の面積の約84.4%が白化レベルの熱ストレスを受け、少なくとも83の国と地域で大規模な白化が記録されました。過去最大の規模です。
まとめ
サンゴの白化は、水温の上昇などのストレスを受けたサンゴが褐虫藻を失い、白い骨格が透けて見える状態です。白化したサンゴはまだ生きていて、ストレスが弱まれば回復することもありますが、長引けば死んでしまいます。2023〜2025年には、世界のサンゴ礁の面積の約84%が白化レベルの高水温にさらされました。
ダイバーが白化そのものを止めることはできませんが、触れない、砂を巻き上げない、距離をとるといった行動で、弱ったサンゴにさらにストレスを加えないことはできます。白化の仕組みを知ったうえで、サンゴ礁の海を静かに見守ってみてください。