ウニの中には、海藻のかけらや貝殻、小石を背中に載せているものがいます。たまたま引っかかったように見えますが、実はウニが自分で運び上げたものです。ウニはなぜ、こうした物をかぶるのでしょうか。
この行動は「被覆行動」と呼ばれ、ウニは管足ととげを使って、周りの破片を体の上へ運びます。ただ、「なぜかぶるのか」の答えは一つに決まっていません。紫外線や強い光への対応、捕食者からの防御、波の中での重しなど、いくつもの仮説があり、実験で支持される理由は種や条件によって違います。かぶる仕組みと、理由を確かめようとした研究の結果を、SOLBOY DIVE CENTERが種ごとに分けてご紹介します。
管足が探り、とげが押し上げる
2014年の論文によると、被覆行動は、管足ととげを使って貝殻や石、海藻の破片などを背側へ運んで載せる行動で、浅い海でも深海でも見られます。載せた物は管足で支えられ、とげがてこのように働いて助けると、先行研究では説明されています。
運ぶ様子は、インド太平洋のウニ4種を撮影した2018年の査読前の論文(プレプリント)に記録されています。管足がまず回るように辺りを探り、1本が破片に触れると、ほかの管足も加わって引き寄せます。破片は、管足が引く動きと、とげが押す動きを組み合わせて体の上へ運ばれることが最も多くありました。研究者が覆いを取り除くと、ウニはすぐに管足で新しい破片をつかみ、体の上に載せ直しました。
速さも測られています。サンゴのかけらを運ぶ速さは、Pseudoboletia maculata が毎分2.0cm、ラッパウニ(Toxopneustes pileolus)が毎分1.91cm、シラヒゲウニ(Tripneustes gratilla)が毎分0.99cmでした。
シラヒゲウニを使った2016年の論文の水槽実験では、とげを失っても、覆いを見つけて使う能力は制限されませんでした。著者は、覆うためには管足が決定的に重要だろうと推定しています。
管足は光も感じている
管足は、物をつかむだけの器官ではないようです。2011年の研究では、Strongylocentrotus purpuratus の多くの管足に、光を受け取る細胞が2つのグループで見つかりました。この研究は、骨格を光をさえぎる覆いのように使い、ウニの体全体が大きな複眼のように働くというモデルを提案しています。同じ年に Strongylocentrotus droebachiensis を調べた別の研究も、管足が光の変化を感じる感覚器官でもあるという考えを強く支持すると結論しました。
エゾバフンウニ(Strongylocentrotus intermedius)を中国・大連の研究室で飼育した2014年の実験では、暗い条件にすると被覆行動が有意に減りました。光を感じることと覆うことには、何らかのつながりがありそうです。
理由の候補は一つではない
2014年の論文は、被覆の意味について6つの仮説を整理しています。単なる反射、餌の確保の補助、捕食からの防御、波や漂う物への対応、光の当たりすぎへの対応などです。被覆の理由は種によって違うと考えられていて、複数の要因が関わる現象とみられています。
仮説の中には、弱点が指摘されているものもあります。「餌を体の上にためておくため」という考えは、食べられない物までかぶる理由を説明できません。「波の中で重しにするため」という考えには、覆いがかえって体を頭でっかちにして不安定にするという反論が紹介されています。一方、2018年のプレプリントは、Strongylocentrotus droebachiensis では流れや波に対する重しとしての利用が示されたと、先行研究をまとめています。
紫外線で覆いを増やす種
光との関係を詳しく調べたのが、Strongylocentrotus droebachiensis を使った2001年の論文です。室内で紫外線を当てると、日陰を探す個体が多く見られましたが、目に見える光だけを当てた個体で日陰を探したのは半数未満でした。紫外線を当てられたウニは、すばやくプラスチックのビーズで体を覆いました。食べられないビーズを使ったので、覆いが餌への反応だけで起きた可能性は除かれた、と著者は述べています。
太陽光の下で、光をフィルターで4つの条件に分けた屋外の水槽実験もあります。暗い条件や目に見える光だけの条件の個体は、どの時刻にもビーズをほとんど持たず、被覆は目に見える光の強さでは変わりませんでした。分析の結果、紫外線のUVAとUVBはそれぞれ単独で被覆を引き起こしうる一方、目に見える光はそうではないことが分かりました。ただし著者は、ほかの手がかりも被覆に関わる可能性を排除しておらず、自然の海で被覆が深さや日射と結びつくかは、この時点では野外で直接確かめられていませんでした。
Lytechinus variegatus の12個体を使った2007年の実験でも、紫外線を当てているあいだは、より多く、より広く、より重い貝殻を覆いに使いました。紫外線の下では中くらいの大きさの物を選んだことから、研究者は、物を運ぶ手間と紫外線にさらされる不利益とのつり合いがあるのかもしれないと考えています。
光だけでは説明しきれない
シラヒゲウニを調べた2016年の論文は、光の影響を別の角度から見ています。2015年に仏領ポリネシアのモーレア島の礁で行った野外調査では、岩の下に体の一部だけが入っている個体のほうが、完全に岩の下にいる個体より多く覆っていました(覆われた割合の目視推定で25.6%と18.0%)。
同じ研究の水槽実験では、明るい日なたで、紫外線を通しにくい赤いプラスチックを透明なプラスチックより多く使いました(30分後に34.8%と20.1%)。薄暗い日陰では、どちらも19.3%で差がありませんでした。ところが、とげを切り取ったあとは、明るい条件と暗い条件で覆いの総量に差がなくなり、著者はこれを、光だけが被覆の引き金ではない根拠と考えました。著者は、このウニの被覆では日光からの防御が主な動機の一つだと結論していますが、同じ10個体を繰り返し使った小さな実験です。
2014年の論文の著者も、光の届かない深海で被覆が観察されていることを挙げ、光だけが被覆を決める要因ではないと述べています。
捕食者に対する効果は、相手と時間しだい
捕食者から身を守る働きは、はっきり示された例と、効果が限られた例があります。南極の Sterechinus neumayeri では、捕食者の大型のイソギンチャクの触手がまず覆いに付き、ウニがその覆いを手放して逃げるという、「外せる盾」のような働きが先行研究で報告されています。1999年の論文によると、南極のマクマード湾周辺で海藻と共存する3地点では、ウニの96.5%が、覆いの90%以上に紅藻の Phyllophora antarctica を使っていました。海藻のない場所で採った個体に水槽で選ばせても、12時間後には紅藻を海藻以外の素材より多く使いました。
この研究の水槽実験では、覆いのない対照のウニは、20個体のうち14〜16個体がイソギンチャクに捕まって食べられました。生きた海藻を覆いにしても、防御物質を抜いた海藻を覆いにしても、食べられた数は覆いのない対照と有意に違いました。海藻の化学的な防御は、逃げるのに必要ではなかったのです。
エゾバフンウニの稚ウニでは、結果が違います。2001年の論文は、北海道の積丹で1993年7月に、人工的に育てた稚ウニとカニの Pugettia quadridens をかごに入れて調べました。貝殻を覆いの材料として入れたかごでは、最初の2時間に1個体も食べられず、著者は被覆が短い時間ならカニの捕食を防ぐのに有効だったと結論しています。ただし、覆った個体も最終的には食べられました。著者は、小さなかごの中ではカニとの接触が避けられないためと考えています。
2014年の論文が中国・大連の水槽で行った12時間の実験では、カニの Charybdis japonica にさらされた稚ウニで、被覆は食べられる数を有意に減らしませんでした。著者は、被覆の捕食を防ぐ働きは限られているとしつつ、特定の捕食者に短い時間さらされるような場合には、有効な防御になりうると述べています。
何を選んでかぶるかも、種で違う
2018年のプレプリントの比較では、シラヒゲウニと Salmacis sphaeroides は海草などの植物質を好み、Pseudoboletia maculata とラッパウニはサンゴのかけらなどの石灰質を好みました。深くなるほど覆いが減ったのは、4種のうちラッパウニだけでした。著者は、素材を選んだり量を変えたりすることから、被覆を動物の「道具使用」と見なせると提案していますが、これは確立した見方ではありません。
Lytechinus variegatus を野外で20個体調べた2020年の研究では、ウニは自然の物より多くの人工のごみを拾って覆っていました。海の中にある物なら、ごみでも覆いの材料になってしまうようです。
被覆行動がどのように進化したかについても、推定は分かれています。2016年の論文は一度進化して一部の属で失われたと考え、2018年のプレプリントは、多くのウニで被覆が見られないことから、いくつかの系統で別々に進化したと考えています。
背中のかぶり物は、ウニが管足を使って集めたものです。観察するときは覆いや体に触れず、少し離れたところから眺めてください。
よくある質問
背中の海藻や貝殻は、たまたま付いたものですか?
研究で観察されているのは、管足ととげを使って破片を体の上へ運ぶ行動です。覆いを取り除かれたウニが、すぐに新しい破片を載せ直した観察もあります。南極の Sterechinus neumayeri では、海藻のない場所の個体でも、水槽で紅藻を選んで使いました。
ウニは紫外線をよけるためにかぶっているのですか?
Strongylocentrotus droebachiensis や Lytechinus variegatus の実験では、紫外線を当てると覆いが増えました。ただし、深海でも被覆は見られ、シラヒゲウニではとげを切り取ると明るさによる差がなくなりました。紫外線は理由の一つになりえますが、それだけでは説明できません。
かぶると、敵に食べられにくくなるのですか?
相手と時間によります。南極の実験では、海藻の覆いがイソギンチャクから逃げるのに役立ちました。エゾバフンウニの稚ウニでは、カニの Pugettia quadridens に対して最初の2時間だけ効果があり、カニの Charybdis japonica に対しては12時間の実験で有意な効果がありませんでした。
どのウニも物をかぶるのですか?
いいえ。2018年のプレプリントは、多くのウニでは被覆が見られないとしています。かぶる種のあいだでも、好む材料は種によって違います。
まとめ
ウニの被覆行動は、管足が破片を探ってつかみ、とげと協力して体の上へ運び上げる行動です。管足は光を感じる器官でもあると考えられ、一部の種では紫外線を当てると覆いが増えます。南極の種では、海藻の覆いが捕食者のイソギンチャクから逃げるのに役立ちました。
一方で、とげを失うと明るさによる差が消えた例、深海でも見られる例、カニに対して効果が短い時間に限られた例もあります。被覆の理由は種や状況によって違い、一つの答えにまとめることはまだできません。