羽のような腕を広げて岩や海藻にとまるウミシダ。見た目はシダの葉や植物のようですが、ウミシダは動物なのでしょうか。
ウミシダは動物です。ヒトデやウニ、ナマコと同じ棘皮動物の仲間で、茎を持つウミユリと同じウミユリ綱に入ります。腕と、腕から生えた細かい枝(羽枝)で網のように広がり、流れてくる小さな餌を粘液の付いた管足でとらえて口へ運びます。体の下側の巻枝で岩などにつかまり、腕で這って移動し、泳げる種もいます。植物のように見えるウミシダの暮らしを、SOLBOY DIVE CENTERが茎を持つ親戚のウミユリとあわせて解き明かします。
ヒトデやウニと同じ、棘皮動物
2007年の日本の総説によると、現在見られる棘皮動物は、ウミユリ綱・ヒトデ綱・クモヒトデ綱・ナマコ綱・ウニ綱の5つのグループ(綱)です。その中でウミユリ綱だけが海底に固着する暮らし方を持ち、5綱のうちで最も原始的なグループとされています。2024年の研究も、ウミユリ類はほかの棘皮動物の姉妹群で、この仲間の進化の歴史を理解するうえで重要だと述べています。
棘皮動物の成体には、五つの方向に対称な体、方解石でできた内側の骨格、水管系といった、大きく変わった体のつくりがあります。オーストラリア博物館の解説でも、ウミシダの一種 Cenolia trichoptera は動物界の棘皮動物門に分類されています。管足を使ったヒトデの歩き方は、ヒトデの記事で紹介しています。
茎のあるウミユリ、茎を手放すウミシダ
現生のウミユリ綱は、一生茎を持つ有柄ウミユリ類と、成長の途中で茎を切り離して自由に暮らすウミシダ類に大きく分けられます。ウミシダは有柄ウミユリとほぼ同じ形をしていますが、茎を持ちません。
ただし、ウミシダにも茎のある時期があります。発生の時期にはウミユリ類と同じような柄をつくり、相模湾の小網代で調べられたニッポンウミシダでは、受精卵が1〜2日で泳ぐ幼生になり、受精後2〜3か月で茎を切り離して、稚ウミシダとして自由な暮らしを始めます。
神奈川県三浦市の小網代で2009〜2010年に毎月潜って調べた研究では、トゲバネウミシダの成体はカジメやアラメの根元のほか転石の下で多く見られましたが、着底した幼い段階の個体は海藻の根元からだけ記録されました。
ウミユリ綱は、有柄ウミユリとウミシダを合わせて約600種、そのうち有柄ウミユリは約80種とされます。別の資料ではウミシダ500種以上、有柄の種100種未満とされていて、数え方には幅があります。ウミユリ類はインド太平洋に多く、茎のないウミシダの多くは沿岸の浅い海にすみます。一方、有柄ウミユリは現在、水深100mより深い場所に限られています。
腕と羽枝で網を張り、流れから餌をとる
腕の数は5本から100本を超えるものまでさまざまです。腕には羽枝と呼ばれる短い枝が生え、羽枝は腕とともに餌をとるのに使われます。多くのウミユリは、腕と羽枝で「ファン」と呼ばれる円形の網を張り、海中に漂うプランクトンや細かい有機物(デトリタス)を選ばずにとらえます。
2007年の総説の説明では、餌は腕の近くを流れる水が乱れるときに、腕から伸びた粘液の付いた管足でとらえられ、食溝という溝に沿って中央の口へ運ばれます。オーストラリア南部の Cenolia trichoptera について、オーストラリア博物館は、40本もの腕を動かして小さな粒子をとらえ、粒子は食溝に沿って口へ運ばれると紹介しています。ウミシダは口と管足が体の上面にあり、ヒトデとは逆向きです。
流れへの向き方も観察されています。駿河湾の陸棚の縁でトリノアシを撮影した1987年の研究では、トリノアシは腕を底の流れに向けて曲げたお椀のようなろ過の網をつくり、茎でその網を水中に持ち上げていました。網を張り続けるには、硬さの変わる結合組織が役立っていて、流れが変わる中でも少ないエネルギーで長い時間保てると紹介されています。
巻枝でつかまり、腕で這い、泳ぐ
ウミシダは、萼のいちばん下にある中背板という板から多くの巻枝を出し、これで岩などにつかまります。オーストラリア博物館の解説でも、ウミシダは体の下側にある粘着性の巻枝で、岩や海藻につかまると説明されています。駿河湾のトリノアシでは、茎の先の半分が硬い海底に沿って横たわり、約10組の巻枝が海底をつかんでいました。
2007年の研究の紹介によると、ウミシダは腕を使って海底を這えるだけでなく、短い距離なら泳げる種もいます。ウミシダが動くことは、捕食者から逃げることと結び付けて考えられてきました。
茎のあるウミユリも、動くことがある
茎のあるウミユリも、ずっと同じ場所にいるとは限りません。有柄ウミユリのゴカクウミユリ科の仲間は、ときどき茎の先を自分で切り離し、腕を使って海底を這うように動いて、すむ場所を移ることができます。
水槽での観察では、この這う動きは毎秒約0.1mmときわめて遅いものでした。ところが、グランドバハマ島沖の水深420mで潜水艇から観察された有柄ウミユリは、それより2桁速い、毎秒約10〜30mmで這っていました。
有柄ウミユリが深い海にだけ残り、浅い海では動きやすいウミシダが栄えた理由については、捕食者から逃れにくい茎のある仲間が浅い海で生き残れなかった、という説明があります。2018年の日本の総説が紹介するこの説明は、仮説の一つです。
ウミユリの仲間に見られる再生した腕は、自分で腕を切り落とした結果と解釈されています。水中でウミシダを見かけても、つかんだり、岩や海藻からはがしたりしないでください。
よくある質問
ウミシダは、ヒトデの仲間なのですか?
同じ棘皮動物の仲間です。ただし、ヒトデはヒトデ綱、ウミシダはウミユリ綱で、グループは違います。ウミシダは口と管足が体の上面にあり、ヒトデとは逆向きです。
ウミシダとウミユリは、何が違うのですか?
どちらもウミユリ綱ですが、有柄ウミユリは一生茎を持ち、ウミシダは成長の途中で茎を切り離して自由に暮らします。有柄ウミユリは現在、水深100mより深い場所にすみ、ウミシダの多くは沿岸の浅い海にすんでいます。
ウミシダは泳げるのですか?
腕で海底を這うだけでなく、短い距離なら泳げる種がいると紹介されています。すべてのウミシダが泳ぐわけではありません。
まとめ
植物のように見えるウミシダは、ヒトデやウニと同じ棘皮動物で、茎を持つウミユリと同じウミユリ綱の動物です。腕と羽枝で網を張り、流れてくるプランクトンなどを粘液の付いた管足でとらえて、食溝に沿って口へ運びます。
発生の初めには茎がありますが、成長の途中で切り離し、巻枝でつかまりながら、腕で這ったり、種によっては泳いだりします。茎のあるウミユリも茎を切り離して這うことがあり、深い海で速く這う姿も観察されています。