ウミガメは、どうやって長く息を止める?肺の酸素と、心拍と代謝を下げる工夫

肺で呼吸するウミガメは、どうやって長い時間、水の中にいられるのでしょうか。何時間も潜っていたという話は本当なのでしょうか。

ウミガメの主な酸素の蓄えは肺で、血液や筋肉の蓄えは多くありません。潜っている間は心拍を下げ、酸素を使う速さ(代謝)を抑えるほど長く潜れます。水温が低く代謝が下がる冬には、潜水が何時間にも延びた記録がありますが、暖かい海でのふだんの潜水は数分〜数十分です。息止めの仕組みを、SOLBOY DIVE CENTERが記録計の研究をもとに種と季節ごとにまとめます。

酸素は、主に肺にためている

ウミガメの肺は、呼吸だけでなく、酸素の蓄えと浮力の調節にも使われます。アカウミガメ・タイマイ・ヒラタウミガメを調べた研究では、最大の肺の容量は体重1kgあたり114mLでした。2024年の研究によると、ウミガメ類の筋肉のミオグロビン(酸素を蓄えるタンパク質)の濃さは陸の動物と同じくらいで、主な酸素の蓄えは肺です。

体重52kgのアカウミガメについて、文献の値から酸素の蓄えを計算した2005年の研究では、体重1kgあたり22.2mL、全体で約1,154mLになりました。測った値ではなく、計算で求めた値です。

潜る時間は、酸素の量と使う速さで決まる

日本の研究者の解説によると、肺で呼吸する動物の潜水時間は、酸素の蓄えを、酸素を使う速さで割った値に大きく左右されます。ウミガメを含む多くの潜水動物は、餌をとったり休んだりするとき、体内の酸素を使い切る前に潜水を切り上げるとされています。

沖縄県西表島の野生のアオウミガメ11頭を調べた2014年の研究では、水温約28.5℃の海で、休む潜水は平均21.9分、餌をとる潜水は4.4分でした。休む潜水では潜っている時間をできるだけ長くとり、そのあと5〜7回呼吸して酸素を補っていました。餌をとる潜水などでは、酸素を使い切る前に浮上していました。

潜っている間は、心拍を下げる

三陸沿岸で混獲された若いアカウミガメ5頭に記録計を付けて放した研究では、潜水中の心拍は平均12.8回/分で、水面にいるときの20.9回/分より低くなりました。140mより深く潜ったときには、ひれを動かしていても、心拍が一時的に約2回/分まで下がりました。研究者らは、アカウミガメも海の哺乳類や鳥のように、潜り方に応じて心拍を下げる強さを変えているとしています。

飼育したアオウミガメ6頭の研究では、休む潜水中の心拍は平均11.1回/分と低く、運動を始めるとすぐに上がり、休む潜水のあとの呼吸中には約40回/分まで上がりました。

冬には、何時間も潜ることがある

長い潜水の記録は、水温が低い冬のものです。イタリアで保護されたあと放流されたアカウミガメ1頭の記録では、潜水時間の中央値は7月の5.5分から2月の341分まで延び、最長は410分でした。冬の海面水温は約15℃でした。著者らは、計算した酸素を使い切る前に浮上していたことから、これらの長い潜水も酸素を使う代謝の範囲だったとし、ウミガメが淡水のカメのように水中で冬眠するという通説は正しくないと述べています。1頭の記録からの結論です。

日本の研究でも、三陸で混獲されたアカウミガメの亜成体で、水温が12.8℃まで下がった冬に最大300分の潜水が記録されました。ただし、平均の潜水時間は夏の17.8分と冬の23.5分で、差はそれほど大きくありませんでした。

水温との関係は、個体群で違う

2022年の日本の総説によると、地中海のアカウミガメは、夏は約20分の潜水を繰り返し、水温が20℃を下回る冬には400分以上の長い潜水をするようになりました。一方、北太平洋のアカウミガメでは、経験する水温が1年で10℃ほど変わっても、潜水時間は1年を通して約20分でした。メキシコ湾のアカウミガメの成体の雌では、反対に海面水温が高いほど長い潜水が多くなっていました。水温が低いほど必ず長く潜る、というわけではありません。

産卵期の日本のアカウミガメの雌では、最大の潜水深度は82.6m、最大の潜水時間は93分でした。

ウミガメを見かけたら

セブ島でのウミガメとの出会いと観察のマナーは、ウミガメの観察のページにまとめています。水中でウミガメを見かけても、近づいたり、追いかけたりしないでください。

よくある質問

ウミガメは、何時間も息を止められるのですか?

水温が低く代謝が下がる冬には、地中海のアカウミガメ1頭で最長410分の潜水が記録されています。暖かい海でのふだんの潜水は、西表島のアオウミガメで休むときに平均約22分、餌をとるときは約4分でした。

ウミガメは、血液に酸素をたくさんためているのですか?

主な酸素の蓄えは肺です。筋肉のミオグロビンの濃さは陸の動物と同じくらいとされています。

ウミガメは、海の中で冬眠するのですか?

地中海のアカウミガメ1頭の記録では、冬も浮上を繰り返していて、長い潜水も酸素を使う代謝の範囲だったとされ、淡水のカメのような水中での冬眠は否定されました。

まとめ

ウミガメは、主に肺に酸素をためて潜り、潜っている間は心拍を下げます。潜れる時間は、酸素の蓄えと、それを使う速さで決まり、休むときは長く、餌をとるときは短くなります。

水温が低く代謝が下がる冬には、何時間もの潜水が記録されていますが、水温と潜水時間の関係は個体群によって違います。数字は、種・場所・季節・活動によって大きく変わります。