魚はどうやって水中で浮き沈みする?うきぶくろのガスを出し入れする仕組み

水の中の魚は、泳ぎを止めても沈まずに、同じ深さにとどまっているように見えることがあります。魚はどうやって浮き沈みを調節しているのでしょうか。

うきぶくろを持つ硬骨魚は、うきぶくろのガスの量を変えて、いる深さでほぼ浮きも沈みもしない状態(中性浮力)になるよう調節しています。ガスの入れ方は魚によって違い、口から空気を出し入れできる魚と、血液からガスを送り込む魚がいます。ただし、すべての魚がうきぶくろを持つわけではなく、サメにはうきぶくろがありません。うきぶくろの仕組みと、うきぶくろを持たないサメの浮き方を、SOLBOY DIVE CENTERが研究の資料から紹介します。

うきぶくろは、浮力を調節する袋

うきぶくろ(鰾)は、条鰭類と呼ばれる硬骨魚の大きなグループのうち、いくつかの目にある器官です。総説によると、硬骨魚のうきぶくろは体全体の密度、つまり浮力を調節する主な器官で、ガスの量は、ある深さでほぼ中性浮力になるよう調節されます。うきぶくろの形は種によって大きく違いますが、どの種も自律神経による反射でうきぶくろをふくらませたり縮ませたりできます。

うきぶくろは肺と同じ起源をもつ器官で、呼吸の働きが退化したものと考えられています。多くの海の硬骨魚では主に浮力の器官として働き、一部の種では音を出す器官にもなります。

口から出し入れする魚と、血液から送り込む魚

うきぶくろを持つ魚には、うきぶくろが管で食道につながり、口からガスを出し入れできる「開鰾魚」と、うきぶくろが閉じている「閉鰾魚」がいます。キンギョやコイの仲間は細い管でうきぶくろの空気を出し入れできますが、多くの硬骨魚のうきぶくろは、発生のごく初期を除いて外へ通じる管を持ちません。

水産工学研究所の研究者の解説によると、開鰾魚は急に上がるときに空気を出して対処し、閉鰾魚の大部分と開鰾魚の一部は、ガスを分泌したり吸収したりする働きを持っています。ポルトガル沖のイワシの一種 Sardina pilchardus を調べた2015年の研究では、この魚はほかのニシンの仲間と同じく開鰾魚で、うきぶくろは弁のある管で消化管と、また肛門ともつながっていました。

区別がはっきりしない例もあります。ヨーロッパウナギは開鰾魚ですが、稚魚の時期にうきぶくろが開いたあと、すぐに食道とのつながりが閉じるため、働きの上では閉鰾魚です。スズキの仔魚では、ふ化後20日に、うきぶくろと消化管をつなぐ管が完全に閉じていました。

血液からガスを集める仕組み

閉鰾魚は、どうやって血液からうきぶくろへガスを送り込むのでしょうか。ヨーロッパウナギを主に調べた総説によると、ガスは分圧(混ざったガスの中で、それぞれの成分が占める圧力)の差に従って血液からうきぶくろへ広がるだけで、分泌そのものは受け身の現象です。

まず、うきぶくろの壁にある「ガス腺」の細胞が乳酸をつくって出します。ガス腺を通った血液が酸性になると、ヘモグロビンが運べる酸素の量が減ります(ルート効果)。こうして始まった分圧の上昇は、血管が束になった「奇網」で何倍にも高められます。奇網では、うきぶくろへ向かう血管と戻る血管が向かい合って並び、戻る側から向かう側へガスが移ることで、ガスが濃縮されます。

ヨーロッパウナギの奇網では、約5万8千本の動脈側の毛細血管を、約4万4千本の静脈側の毛細血管が数mmにわたって取り囲んでいます。ウナギのうきぶくろの標本の実験では、奇網の動脈側を通る間に、酸素と二酸化炭素の分圧が7〜8倍に上がっていました。新しく分泌されたガスは空気とは組成が違い、酸素が最も多く、次が二酸化炭素です。

反対に、ガスを減らすには、別の血管が通う「吸収部」でガスを血液へ戻します。ウナギでは、上がるときに吸収部でガスが取り除かれ、血液でえらへ運ばれて水中へ出ていきます。

深さが急に変わると、すぐには追いつかない

ガスの分泌も吸収もゆっくりした現象です。そのため、急に深さが変わったときには、うきぶくろの体積をすぐに合わせることはできません。ウナギの計算例では、調節しなければ、水深200mで中性浮力に合わせたうきぶくろは、水深800mでは約25%の体積に縮みます。急な上下の移動では、うきぶくろの体積は水圧に応じて変わると考えられています。

それでも、数百m、ときに1,000mを超える深さで、ガスの入ったうきぶくろを持つ魚がいます。高い水圧に負けないほど、ガスの分圧を高められることを示しています。

最初の空気は、水面で飲み込む

スズキやマダイなどでは、成長後には閉じたうきぶくろを持つ魚でも、仔魚が水面で飲み込んだ空気が最初のガスになります。数種の魚の飼育実験の報告では、空気に触れられないようにして育てた仔魚は、海水に酸素が十分に溶けていても、うきぶくろにガスがたまりませんでした。

小笠原の父島でアカハタの仔魚を育てた研究では、水面の油の膜が空気を飲み込むのを妨げていました。油の膜を取り除いた水槽では7日齢以降にうきぶくろが開いた仔魚の割合が73.3〜87.5%、取り除かなかった水槽では0.0〜20.0%でした。クロダイの仔魚の飼育実験では、うきぶくろが開いたあと、体積の変化によって昼は沈みやすく、夜は中性浮力になりました。

うきぶくろのないサメは、肝臓の油で浮く

多くの硬骨魚と違い、サメにはうきぶくろがありません。代わりに、油の多い大きな肝臓で浮力を高めています。ただし、油はガスより密度がずっと大きいため、浮力を生む方法としては効率が比較的よくありません。ほとんどのサメは、それでも沈む方向の浮力が残り、泳ぎ続けてひれで上向きの力(揚力)を得ています。

サメ32種を比べた研究では、最も深い所にすむ種ほど中性浮力に近く、浅い所の種ほど沈みやすい傾向がありました。深海のサメの肝臓は体重の20%を超えるほど大きく、肝臓の重さの80%以上が軽い油です。ハワイのオアフ島沖で深海のサメ6個体に記録計を付けた2015年の研究では、自然の環境で、むしろ浮きやすい状態のサメがいることが示されました。研究者は予備的な結果としています。

よくある質問

うきぶくろは、すべての魚にあるのですか?

いいえ。うきぶくろは硬骨魚のうちいくつかの目にある器官で、サメにはありません。サメは油の多い肝臓と、泳ぐときのひれの揚力で浮力を補っています。

うきぶくろの中には、空気が入っているのですか?

スズキやマダイなどの仔魚では、水面で飲み込んだ空気が最初のガスになります。一方、ウナギを扱った総説によると、血液から新しく分泌されるガスは空気と組成が違い、酸素が最も多く、次に二酸化炭素が多いと報告されています。

魚は深さが変わっても、すぐに浮き沈みを合わせられますか?

ガスの分泌と吸収はゆっくり進むため、急な深さの変化にはすぐには合わせられません。ウナギの計算では、調節がなければ水深200mから800mへ潜ると、うきぶくろは約25%の体積に縮みます。

まとめ

うきぶくろを持つ硬骨魚は、うきぶくろのガスの量を変えて、いる深さで中性浮力になるよう調節しています。口から空気を出し入れする魚もいれば、ガス腺と奇網で血液からガスを集め、吸収部で戻す魚もいます。

ただ、ガスの出し入れには時間がかかり、うきぶくろを持たない魚もいます。サメは油の多い肝臓と泳ぐときの揚力で浮力を補い、深海のサメには浮きやすいものも報告されています。