ダイオウイカはどれくらい大きい?測り方で変わる長さと、深海での初撮影

深海にすむ巨大なイカ、ダイオウイカ。全長10mとも20mとも言われますが、実際にはどれくらいの大きさなのでしょうか。

ダイオウイカは世界各地の深海にすむ、世界最大級の無脊椎動物です。ただ、その大きさの数字は、長い触腕を含めた全長か、胴の部分(外套)の長さか、そして実際に測った値か推定かによって大きく変わります。触腕を含む全長では10m前後から、18m、20mという数字まであり、確実に測られた外套長の最大は2.79mです。最大の大きさについては、研究者の間でも合意がありません。ダイオウイカの大きさと、深海での初めての撮影までを、SOLBOY DIVE CENTERが数字の根拠を添えて紹介します。

長さは、どこを測るかで変わる

イカの長さの測り方には、いくつかあります。胴にあたる外套の長さ(外套長)、腕の先までの長さ、そして2本の長い触腕の先までを含めた全長です。ダイオウイカは触腕がとても長いため、どれを使うかで数字が大きく違います。

国立科学博物館の研究者による2001年の学会発表は、ダイオウイカは全長10m(触腕を除いた外套膜と頭腕部の長さは4m前後)、体重は数百kgに達すると書いています。2020年のゲノムの論文は、平均的な長さは10〜12mで、全長20mまでの報告があると紹介しています。2013年の論文によると、全長50mという主張もありましたが、より現実的な見積もりは、メスで最大全長18m、オスはそれより少し小さいとされています。

2016年の研究は、ダイオウイカの最大の大きさについて研究者の間で合意がないことを指摘したうえで、確実に測られた外套長の最大は2.79mだとしています。そして、外套長とほかの長さとの関係や個体差をもとに、腕の先までの長さが10m、触腕の先までの全長が20mのイカも十分ありうると推定しました。これは測定された記録ではなく、統計にもとづく推定です。

日本で測られたダイオウイカ

日本の海でも、ダイオウイカが記録されています。2022年3月2日に兵庫県津居山沖の水深206mで、底びき網に生きたままかかった個体は、外套の背側の長さが950mm、触腕を含めた全長はおよそ4mで、体の中に精巣があったことからオスと分かりました。触腕の長さは、左が2,330mm、右が2,900mmで、左右でも違っていました。

2020年3月4日に富山県氷見市の海岸に打ち上げられた個体は、外套の背側の長さが133cmのオスで、左右の触腕は失われていました。ダイオウイカは打ち上げられたり網にかかったりすることがありますが、巨大なため全身の標本を保管するのは難しいとされています。

日本海では、2014年1月から2015年3月にかけて57個体の打ち上げや採集が報告されました(別の資料では「計50例を超える」と記録)。それらの外套の背側の長さは、およそ800〜2,000mmでした。

深海で生きた姿を撮る

国立科学博物館の窪寺恒己氏の講演によると、それまで欧米の研究者が、特殊なカメラや有人潜水艇で深海の生きたダイオウイカを撮影しようとしましたが、すべて失敗に終わっていました。

2004年9月、小笠原の父島沖の深さ900mで、世界で初めてダイオウイカの静止画の撮影に成功しました。2005年の論文によると、カメラと深度記録計の装置が、餌を襲うダイオウイカをとらえていました。切れて回収された触腕から種が同定され、その長さと、ほかの個体の測定値との関係から、触腕を含めた全長は8mを超えると推定されました。著者らは、ダイオウイカはそれまで考えられていたよりずっと活発な捕食者で、長い触腕で獲物を打ち、からめとるようだと述べています。

2006年には、深さ650m付近からダイオウイカを釣り上げ、動き回る姿をビデオカメラで記録しました。2012年には、NHK・ディスカバリーチャンネルと共同で、ダイオウイカの生態の映像の撮影に成功しています。深海の自然な生息場所で泳ぐ姿の動画は、2012年に撮影され、2013年に公表されました。2006年の、釣り上げた個体の動画とは撮影した状況が違います。

動物界で最大級の目

ダイオウイカは目の大きさでも知られています。2012年の研究によると、ダイオウイカと、同じく深海にすむ大型のイカ Mesonychoteuthis は、動物界で最も大きな目を持ち、その直径はほかの現生動物の目のほぼ3倍です。ダイオウイカ1個体の写真からは、直径約27cm、瞳孔9cmの眼球が記録されました。

なぜ、これほど大きな目が必要なのでしょうか。同じ研究は、理論的な計算から、巨大な目は遠くの相手や獲物を見つけるためというより、マッコウクジラのような非常に大きな捕食者を見つけるのに向いていると予測しました。水深600mより深い場所では、120m以上離れたマッコウクジラを見つけられると計算されています。これは理論の予測で、実際に確かめられたものではありません。

世界に1種と考えられるが、暮らしは謎が多い

ダイオウイカの仲間には、これまでに21もの種が名づけられてきました。2001年の時点でも、世界で15〜17種が報告されていました。しかし2013年の研究で、世界中から集めた43の試料のミトコンドリアのゲノムを調べたところ、ダイオウイカは世界に1種(Architeuthis dux)で、よく移動するという仮説と合う結果になりました。

ダイオウイカは水深300〜1,000mにすむと報告されていて、マッコウクジラの胃の中身の調査から、世界の温帯から亜寒帯の外洋の中層に広くすむと推測されています。寿命の見積もりは1年から46年までと、大きな幅があります。

よくある質問

ダイオウイカは、世界一大きいイカなのですか?

世界最大級ですが、断定はできません。2017年の論文は、ダイオウイカは頭足類で2番目に大きく、それを上回るのは Mesonychoteuthis hamiltoni だけだとしています。

全長20mのダイオウイカはいるのですか?

全長20mまでの報告や、統計から20mもありうるという推定はありますが、確実に測られたのは外套長の最大2.79mです。全長は触腕の長さで大きく変わり、打ち上げられた個体は触腕が失われていることもあります。

ダイオウイカの目は、どれくらい大きいのですか?

1個体の写真から、直径約27cm、瞳孔9cmの眼球が記録されています。ほかの現生動物の目のほぼ3倍の大きさです。

まとめ

ダイオウイカの大きさは、触腕を含む全長で10m前後から18m、20mまでという数字がありますが、確実に測られた外套長の最大は2.79mで、最大の大きさに合意はありません。日本で測られた個体には、全長およそ4mのものもいます。

2004年に小笠原沖の深さ900mで初めて生きた姿が撮影され、その後、動画や深海での映像も撮られました。大きな目の役割や寿命など、深海の巨大なイカの暮らしには、まだ多くの謎があります。