フジツボは貝の仲間?エビやカニと同じ甲殻類である理由

岩などにくっついて暮らすフジツボ。硬い殻を持つので、貝の仲間だと思われがちです。フジツボは、本当に貝の仲間なのでしょうか。

フジツボは貝(軟体動物)ではなく、エビやカニと同じ甲殻類で、「蔓脚類」と呼ばれる仲間です。19世紀前半までは軟体動物とされていましたが、甲殻類に共通する「ノープリウス幼生」の時期を持つことが分かり、甲殻類に含められました。ここでの「エビやカニと同じ」は、同じ甲殻類という意味です。フジツボの正体を、SOLBOY DIVE CENTERが幼生と体のつくりを手がかりに紹介します。

殻の中には、逆さまのエビ

アカフジツボの研究を紹介した2017年の解説は、フジツボは石灰質の殻を持つため貝の仲間と間違われることが多いが、エビやカニと同じ甲殻類に属すると書いています。そして、富士山のような形の殻の中で、エビが逆向きになって生きていると考えてよい、とたとえています。

2006年の総説によると、蔓脚類は固着して暮らす、一般に小型の石灰質の殻を持つ甲殻類で、フジツボ、カメノテ、エボシガイが代表です。固着する暮らしに合わせて形が大きく特殊化したため、フジツボの仲間は長いあいだ甲殻類の一員とは思われていませんでした。なお、蔓脚類の分類ではダーウィンの功績が大きく、『種の起源』(1859年)より前の1851年と1854年に、現生種と化石種のモノグラフ計4冊をまとめています。

甲殻類と分かった決め手は、幼生

蔓脚類は19世紀前半まで軟体動物の一員と見なされていましたが、甲殻類に共通するノープリウス幼生の時期を経ることが明らかになり、甲殻類に含められました。

フジツボの仲間は、海中を自由に泳ぐ6期のノープリウス幼生の時期と、それに続く1期の「キプリス幼生」の時期を経て、固着する暮らしに移ります。キプリス幼生はフジツボの仲間だけに見られる幼生です。アカフジツボでは、ノープリウス幼生が6回脱皮し、6回目の脱皮と同時に変態してキプリス幼生になります。

キプリス幼生は、2枚の甲皮に包まれた柿の種のような形で、この時期はえさを食べません。甲皮の後ろからは6対の胸脚が必要に応じて突き出され、泳ぐときに使われます。付く場所を探すときは、一対の第一触角で、二足歩行のように歩きます。

頭でくっつき、一生その場で暮らす

蔓脚類は、頭部の第一触角で付着し、そこに開いているセメント腺からセメント物質を出して固着します。2006年の総説によると、フジツボは幼生の時期に一度着底して変態すると、それ以後は自分から剥がれたり動いたりせず、その場で一生を送ります。

フジツボは、固着のために2種類のセメントを出します。キプリス幼生のセメントは、細い管の中では流れやすさを保ちながら、海水中に出されると素早く固まり、波の激しい場所でも体を「点」で支える強さを持ちます。Balanus amphitrite のキプリス幼生の接着剤では、キチンという多糖類が安定性に役立っている証拠が示されています。成体のセメントは90%以上がタンパク質でできていて、2006年までに6種類のタンパク質が見つかっていました。

2016年の総説によると、フジツボの接着力がどれほど強いかを正確に示した報告はありません。剥がす前に、フジツボの殻のほうが壊れてしまうためです。フジツボは、岩などの鉱物、金属、プラスチックのほか、クジラの表皮やカメの甲羅などの生き物の体にもくっつきます。

あしで、水中のえさをかき集める

フジツボのえさのとり方も、甲殻類らしいものです。胸の体節には、二股に分かれたつる状の付属肢が対になって付いていて、これが「蔓脚」です。蔓脚は殻の口から突き出してリズミカルに動き、周りの水中に浮かぶ粒子を集めます。殻の口のふたが開いているときにだけ、この動きが起こります。2017年の解説は、フジツボは蔓脚でプランクトンを絡め取って口に運んでいる、と説明しています。潮間帯にすむ種を調べた研究では、上げ潮のときに効率よく食べ、呼吸していると考えられています。

フジツボの仲間は、汽水の河口にもすみますが、淡水にすむ種類はいません。岩や貝だけでなく、回遊するカメ、イルカ、クジラの体の表面にも見られます。

よくある質問

フジツボは、貝の仲間ですか?

いいえ。石灰質の殻を持つので貝に間違われやすいのですが、エビやカニと同じ甲殻類で、蔓脚類と呼ばれる仲間です。

なぜ甲殻類だと分かったのですか?

甲殻類に共通するノープリウス幼生の時期を経ることが分かったためです。19世紀前半までは、軟体動物とされていました。

フジツボは、何を食べているのですか?

胸にある蔓脚を殻の口から出してリズミカルに動かし、水中に浮かぶプランクトンなどの粒子を集めて食べています。

まとめ

フジツボは、硬い殻を持っていても貝ではなく、エビやカニと同じ甲殻類の蔓脚類です。甲殻類に共通するノープリウス幼生の時期を経ることから、甲殻類の仲間だと分かりました。

キプリス幼生の時期に第一触角でくっつき、セメントで固着したあとは一生その場で暮らします。殻の中から蔓脚を伸ばして、水中のえさを集めています。