ホヤは、あの袋のような体で何をしている?水をこして食べる、脊索動物の仲間

岩に付いた袋のような体に、穴が2つ。ホヤは動かないように見えますが、あの体の中では何が起きているのでしょうか。

ホヤは、一方の管から海水を吸い込み、体の大部分を占める咽頭の網で、水の中のプランクトンなどの粒子をこし取って食べ、もう一方の管から水を出しています。袋の外側は「被嚢(ひのう)」という覆いで、動物には珍しいセルロースを含んでいます。そして、幼生のときの姿から、ホヤは私たち脊椎動物と同じ脊索動物の仲間に入ります。袋のような体の仕組みと、その意外な素顔を、SOLBOY DIVE CENTERが体の内側からのぞいてみます。

袋の中にもう一つの袋

1980年の日本の同定の手引きによると、ホヤの体の表面は被嚢で覆われ、その中に「筋膜体」と呼ばれる袋が入っています。被嚢の表面には入水管と出水管があり、それぞれの先に入水孔と出水孔が開いています。

入水管の奥に続く咽頭は「鰓嚢(さいのう)」と呼ばれ、鰓孔という多数の穴があいています。鰓嚢の腹側の真ん中には「内柱」があり、腸は出水孔の近くの肛門で終わっています。

咽頭の網で、水をこして食べる

ホヤは海底の岩などに付いたまま、海水の中のプランクトンなどをこし取って食べる動物です。2025年の解説によると、ホヤでは体積の3分の2を大きく広がった咽頭が占め、これが食べるための器官になっています。

咽頭には、繊毛の並んだ小さな裂け目(鰓孔)がたくさんあり、この繊毛が水の流れを起こします。水は入水管から咽頭の部屋と鰓孔を通り、その外側の空間(囲鰓腔)に入って、出水管から出ていきます。

水が咽頭の壁を通るとき、浮かんでいる粒子は、内柱が出し続ける粘液の網にかかります。餌の粒子がついた粘液の網は、ひものように巻き取られて食道へ送られ、そのまま食べられます。水をこす量は体の大きさで変わり、デンマークのフィヨルドで行われたカタユウレイボヤの研究では、乾燥重量との関係が式で示されています。

ときどき、水を勢いよく噴き出す

ホヤ類では、入水管と出水管から水を勢いよく噴き出す「噴出運動」が知られています。1998年の研究が紹介する過去の研究によると、噴出運動は、鰓嚢に取り込んだ水の入れ替え、異物や糞の塊の排出、精子や卵の放出に使われていて、日常的に見られる活動です。

東北大学の施設で飼育したマボヤの体の中の圧力を数週間続けて測った同じ研究では、噴出運動に小噴出と大噴出の2種類があり、それぞれ独立に起こっていて、多くは1日周期のリズムを持っていました。

水中でホヤを押したり、つまんだりして、水を噴き出させるのはやめましょう。生き物に触れない観察の仕方は、海洋保護区マナーのページでも案内しています。

オタマジャクシのような幼生

ホヤは、成体の姿からは想像しにくいのですが、脊索動物門の中の尾索動物亜門に属しています。2007年の日本の解説によると、ホヤの幼生は典型的なオタマジャクシ型で、活発に泳ぎます。幼生の尾には、脊索動物を特徴づける脊索と筋肉、背側の中枢神経索などがあります。

2021年の研究によると、ホヤのオタマジャクシ幼生は餌を食べず、尾は泳ぐために欠かせません。日本の内湾の固着性のホヤ類の多くは、ふつう1日以内の浮遊する幼生期を経て、岩や転石の下面などに付きます。

幼生は、固着できる段階になると光から離れるように泳ぎ下り、体の前にある付着突起で岩などに付きます。これが変態のきっかけになり、尾の組織の大部分は吸収されて、固着して暮らす成体の姿へ変わります。ただし、すべてのホヤの幼生に尾があるわけではなく、モルグラ科には尾のない幼生を持つ種が多く知られています。

脊椎動物に最も近い仲間の一つ

脊索や背側の神経管は、脊索動物を特徴づける基本的な体のつくりです。尾索動物は、このオタマジャクシ幼生を持つことから脊索動物に分類されますが、固着した成体はU字形の腸を持つ大きく変わった体で、脊索動物には見えません。ホヤの成体にも、鰓裂と内柱(甲状腺と同じ起源を持つ器官)という、脊索動物に共通する器官が備わっています。

146の核遺伝子を使った2006年の系統解析は、頭索動物ではなく、尾索動物が脊椎動物に最も近い現生の仲間であることを強く示しました。かつては頭索動物のほうが近いと考えられていたため、古い資料とは説明が違うことがあります。

セルロースを作る、ただ一つの動物の仲間

セルロースは、ブドウ糖(グルコース)がつながった高分子で、生物の中では植物のほか、真菌類と細菌類の一部が作ることが知られています。ところが、ホヤ類・オタマボヤ類・サルパ類からなる尾索動物は、セルロースを合成できる唯一の多細胞動物です。尾索動物のセルロースは、体全体を覆う被嚢の主な成分になっています。

2019年の研究では、セルロース合成酵素の遺伝子が、ゲノムが解読されたすべての尾索動物にあり、ほかの動物のゲノムにはありませんでした。2016年の研究は、この酵素の遺伝子が、放線菌と呼ばれる細菌から遺伝子の水平伝播によって獲得されたものだと述べています。

被嚢は、外敵などから身を守るのに役立っていると考えられています。カタユウレイボヤでは、セルロースを作る酵素の遺伝子に変異を持つ個体が、セルロースを作れないだけでなく、変態や固着にも異常を示しました。このことから、ホヤのセルロースは固着生活に必要だと考えられています。

よくある質問

ホヤの2つの穴は、それぞれ何をしているのですか?

入水管と出水管です。入水管から海水を吸い込み、咽頭の粘液の網で粒子をこし取ったあと、水を出水管から出します。腸も出水孔の近くで終わっています。

ホヤが水を噴き出すのは、なぜですか?

噴出運動と呼ばれる行動で、取り込んだ水の入れ替えや、異物や糞、精子や卵を出すのに使われています。飼育したマボヤでは、小噴出と大噴出の2種類が観察されました。

ホヤは、本当に脊椎動物に近いのですか?

はい。ホヤは脊索動物の仲間で、2006年の系統解析では、尾索動物が脊椎動物に最も近い現生の仲間だと示されました。幼生の尾には脊索や背側の神経索があります。

まとめ

ホヤは、入水管から吸い込んだ海水を、体積の3分の2を占める咽頭に通し、内柱が出す粘液の網で粒子をこし取って食べ、出水管から水を出しています。ときどき勢いよく水を噴き出して、水の入れ替えや糞・異物の排出をしています。

袋のような体の外側の被嚢にはセルロースが含まれ、セルロースを作れる多細胞動物は尾索動物だけです。オタマジャクシ型の幼生を持つことから、ホヤは脊索動物の仲間で、脊椎動物に最も近い現生の仲間の一つと考えられています。