プランクトンは小さな生き物のこと?海の食物網を支える役割

「プランクトン」と聞くと、顕微鏡でしか見えないほど小さな生き物を思い浮かべるかもしれません。けれども、プランクトンかどうかを決めているのは、実は体の大きさではありません。

プランクトンとは、海の流れに逆らって進めるほどには泳げず、潮や海流に運ばれて漂うように暮らす生き物の呼び名です。小さなものが多い一方で、大きなクラゲもプランクトンの仲間です。光合成をする植物プランクトンと、ほかの生き物を食べる動物プランクトンがいて、魚やサンゴの子どもも、成長の一時期はプランクトンとして漂います。マクタン島のダイビングショップ、SOLBOY DIVE CENTERが、公的機関や大学の解説をもとに、プランクトンと海の食物網のつながりをご紹介します。

ここで紹介する内容は、アメリカの公的機関や日本の大学・研究機関の解説、オーストラリアのサンゴ礁での研究などによるものです。マクタン周辺の海のプランクトンを調べたものではありません。

プランクトンは「漂う暮らし」をする生き物の呼び名

NOAA(アメリカ海洋大気庁)は、プランクトンを「海を漂うもの」、つまり潮や海流に運ばれる生き物だと説明しています。潮や海流の力に逆らって移動できるほどには泳げない生き物が、プランクトンです。「プランクトン」という言葉自体も、ギリシャ語の「漂うもの」「さまようもの」に由来します。

広島大学の用語解説も、プランクトンを「水中を漂って生活し、泳ぐ力を持たないか、高くない生き物の総称」とし、大きさは関係なく、細菌からエチゼンクラゲのような大型のものまで含まれると説明しています。つまりプランクトンは、特定の生き物の仲間の名前ではなく、暮らし方による呼び名です。これに対して、魚のように自分で泳いで移動できる生き物はネクトン(遊泳生物)、海底で暮らす生き物はベントス(底棲生物)と呼ばれます。

小さいものが多いけれど、大きなものもいる

NOAAによると、プランクトンはふつう顕微鏡で見るような大きさで、1インチ(約2.5cm)に満たないものが多いものの、一部の甲殻類やクラゲのように大きなものもいます。東京大学大気海洋研究所の紹介でも、プランクトンには数ミクロンに満たない微小な藻類から、数メートルを超えるクラゲの仲間までいると紹介されています。

「プランクトン=目に見えない小さな生き物」とは限らない、ということです。

まったく泳げないわけではない

プランクトンは、まったく動けないわけでもありません。NOAAによると、植物プランクトンのうち渦鞭毛藻(うずべんもうそう)は、むちのような鞭毛を使って水中を動きます。一方、珪藻(けいそう)は鞭毛に頼らず、海流に乗って移動します。

動物プランクトンの多くは、昼は捕食者を避けて深いところを漂い、夜になると植物プランクトンを食べに表層へ上がってきます。また、サンゴの赤ちゃんにあたるプラヌラ幼生は、体の表面の細かい毛(繊毛)で弱く泳ぐ力を持っていますが、波や流れに運ばれて広がっていく、と水産庁の手引きは説明しています。泳ぐ力があっても、流れに逆らって進むほどではない。それがプランクトンの暮らし方です。

植物プランクトンと動物プランクトン

プランクトンは大きさや種類、漂って過ごす期間などでも分けられますが、もっとも基本的なのは、植物プランクトンと動物プランクトンの2つです。

光合成をする植物プランクトン

植物プランクトンは、陸の植物と同じように光合成をして、太陽の光を使い、生き物の体や餌のもとになる有機物を作ります。その過程で二酸化炭素を取り込み、酸素を出します。太陽の光が必要なので、水面に近いところで見られます。

ただし、名前に「植物」とあっても、すべてが植物というわけではありません。NASA(アメリカ航空宇宙局)によると、植物プランクトンには細菌の仲間のシアノバクテリアや、珪藻、渦鞭毛藻、緑藻、円石藻などがいます。すべて光合成をしますが、中にはほかの生き物を食べて、エネルギーを補うものもいます。

食べて暮らす動物プランクトン

NOAAによると、動物プランクトンには、オキアミや巻貝の仲間、浮遊性のゴカイの仲間などの小さな動物のほか、大きな無脊椎動物や魚の子ども、クラゲのように泳ぐ力の弱い動物も含まれます。

一時期だけプランクトンになる生き物もいる

一生をずっと漂って過ごす生き物もいれば、成長の一時期だけ漂い、その後は自分で泳いだり、海底で暮らしたりする生き物もいます。日本語では、前者を終生プランクトン、後者を一時性プランクトンと呼びます。

魚の子ども

NOAAによると、海の魚や無脊椎動物の多くは小さな幼生を生み、幼生は種類によって数週間から数か月、成長しながら水中を漂います。国立科学博物館の解説も、外洋の表層や中層にすむ魚の多くは小さな卵をたくさん産み、生まれたばかりの子どもは泳ぐ力が未発達で、漂うように暮らすと紹介しています。

NOAAの水産部門によると、魚の卵は海流に乗って漂い、ほとんどの仔魚は生まれた直後はほとんど泳げませんが、育つにつれて活発に泳ぐようになります。オーストラリアのグレートバリアリーフにあるリザード島の周りで、漂う時期の終わりに近いサンゴ礁の魚の子どもを調べた1997年の研究では、測ったほぼすべての種類が、周辺の平均的な流れより速く泳ぐ力を持っていました。プランクトンとして漂う時期と、自分で泳ぐ時期の境目は、はっきりした線ではないのです。

サンゴの子ども

NOAAによると、多くのサンゴは卵と精子を水中に一斉に放出し、受精してできたプラヌラ幼生は、プランクトンとして漂います。プラヌラは光に向かって泳ぎ上がり、海流に運ばれたあと、海底へ降りて、条件が合えば着底します。多くの種類は2日以内に着底しますが、もっと長く漂う種類もいます。水産庁の手引きによると、プラヌラ幼生は漂っている間、卵黄の栄養に頼って、基本的に餌をとりません。サンゴの体のつくりやサンゴ礁ができる仕組みは、サンゴは植物?動物?サンゴ礁ができる仕組みと、触れると傷つく理由で紹介しています。

食べる・食べられるのつながりを支える

NASAは、植物プランクトンを、水の中の食物網の土台をなす「一次生産者」だと説明しています。植物プランクトンが光合成で作った有機物が、小さな動物プランクトンから大きなクジラに至る、食べる・食べられるつながりを支えています。

NOAAによると、植物プランクトンはエビや巻貝、クラゲなど幅広い生き物の食べ物になります。動物プランクトンの多くは植物プランクトンを食べ、その多くがより大きな動物に食べられます。動物プランクトンどうしが食べ合うこともあります。魚の子どもも、自分より小さなプランクトンを食べながら、より大きな動物の餌になります。つながりは一本の線ではなく、網の目のように広がっています。

サンゴ礁の魚の中にも、動物プランクトンを食べるものがいます。日本のサンゴ礁を対象にした水産庁の手引きは、タカサゴの仲間やアイゴの稚魚、キビナゴの仲間などを例に挙げています。漂うサンゴの幼生も、魚に食べられることがあります。

濁った海ほど豊か、とは限らない

植物プランクトンが増えると水は濁りますが、濁りの原因はプランクトンだけではありません。NOAAは、泥などの堆積物や固形のごみが増えても水の濁りは強くなり、濁りの強さから海岸の侵食や下水処理の問題が見つかることもあると説明しています。また、栄養が多すぎると藻類が増えすぎて酸素の少ない水が生じ、魚や海草を死なせることがあるとも説明しています。

このように、濁りの原因も、プランクトンが増えたときの影響も一つではありません。水の透明度だけで、海の生き物の豊かさを判断しないことが大切です。海の透明度が日によって変わる理由は、波やうねり、潮の流れ、透明度は、なぜ日によって変わるの?で紹介しています。

海の生き物のつながりを楽しむ

小さな生き物と食物網の関係を知ると、海で出会う魚を見る楽しみも広がります。セブの海の生き物はこちらの記事でも紹介しています。ダイビングに参加するには、体験ダイビングやファンダイビングの案内をご覧ください。日程や参加についてのご質問は、LINEでお尋ねください。

よくある質問

プランクトンは、すべて目に見えないほど小さいのですか?

いいえ。顕微鏡で見るような小さなものが多い一方で、数メートルを超えるクラゲの仲間もプランクトンに含まれます。プランクトンかどうかは、大きさではなく、流れに逆らうほどには泳げず漂って暮らしているかどうかで決まります。

プランクトンは、まったく泳げないのですか?

そうとは限りません。鞭毛で動く渦鞭毛藻や、昼と夜で深さを変える動物プランクトン、繊毛で弱く泳ぐサンゴの幼生などもいます。ただし、潮や海流に逆らって進めるほどには泳げません。

魚もプランクトンになることがあるのですか?

はい。多くの魚は、卵や生まれて間もない子どもの時期にプランクトンとして漂います。育つにつれて泳ぐ力が強くなり、やがて自分で泳いで暮らすようになります。

海が濁っているのは、プランクトンが多いからですか?

そうとは限りません。泥などの堆積物やごみでも水は濁ります。植物プランクトンが増えすぎたあとに酸素が少なくなる場合もあるため、濁っているほど生き物にとってよい環境だとはいえません。

まとめ

プランクトンは、大きさではなく、流れに逆らうほどには泳げず漂って暮らすことによる呼び名です。小さな藻類から大きなクラゲまでいて、光合成をする植物プランクトンと、ほかの生き物を食べる動物プランクトンがいます。魚やサンゴのように、子どもの時期だけプランクトンとして漂う生き物もいます。

植物プランクトンが光合成で作った有機物の栄養は、動物プランクトンや魚の子どもを通じて、大きな魚やクジラにまで届きます。海に潜ったときは、大きな魚の姿の向こうに、目に見えにくい小さな生き物たちのつながりがあることも思い浮かべてみてください。