テッポウウオは、どうやって水鉄砲を当てる?口の仕組みと狙いの技

水の中から、葉の上の虫めがけて水を噴き出して撃ち落とすテッポウウオ。水の中から、どうやって狙いを定めて当てているのでしょうか。

研究からは、いくつもの技の組み合わせで当てていることが分かってきました。口の天井の溝と舌の骨のあいだにできる細い管から水を噴き出し、体の向きで狙いを定めます。標的までの距離に合わせて口の開け閉めを細かく調節し、水が標的の手前で一つの塊にまとまって、強い力で当たるようにしています。水面で光が曲がって標的の位置がずれて見える問題への対応や、落ちた獲物を素早く追う力まで、SOLBOY DIVE CENTERがまとめました。

マングローブや川にすむ魚

テッポウウオの仲間(テッポウウオ科)は、東インド洋から西太平洋にかけて、淡水や汽水の水辺に分布しています。マングローブの湿地にかぶさる植物の葉にとまった昆虫を、水の噴流で撃ち落として食べることで知られています。

和名の「テッポウウオ」は、その中の1種(Toxotes jaculatrix)の名前です。2022年の論文では、日本での記録は西表島と石垣島の川に限られ、環境省と沖縄県のレッドデータブックで絶滅危惧IA類とされていることが紹介されています。サンゴ礁の海で潜って出会う魚とは、すむ場所が違います。

研究でおもに調べられてきたのは、Toxotes jaculatrix と Toxotes chatareus の2種です。

口の中の「吹き矢」

水を噴き出す仕組みについては、2つの考えがあります。一つは「吹き矢」に例えられる考えで、口の天井にある細い溝と、舌を支える骨(basihyal)とのあいだにできる管状のすき間から水を噴き出すとするものです。もう一つは「圧力タンク」に例えられる考えで、口の中に圧力をためておき、弁で一気に開放するとするものです。口の中の容積を急に変えて水を押し出すのか、ためた圧力を弁で放つのか、という違いです。

2022年に博物館の標本を比べた研究では、調べたすべてのテッポウウオの仲間が、細長い口の天井の溝と、歯のある大きな舌の骨を持っていました。口のつくりは種のあいだでほぼ共通で、「吹き矢」の考えを支持する結果でした。ただし、形から考えた結果で、噴射中の動きを直接見たものではなく、「圧力タンク」の考えで重視された口の弁などの柔らかい組織も関わっている可能性が残されています。

体の向きで狙う

噴き出す水の向きは、どうやって決めているのでしょうか。飼育下での観察と体のつくりを調べた研究では、体の向きを合わせることが、狙いを定める唯一の方法だと示唆されています。

距離に合わせて、水を一つの塊にする

テッポウウオの水鉄砲が強いのは、噴き出した水が空中で一つの大きな塊にまとまり、まとめて標的に当たるためです。

2012年の研究は、飼育下の Toxotes jaculatrix 2個体の噴流を高速度撮影で調べました。テッポウウオは口元で噴き出す水の速さを変えることで、水を一つの大きな塊にまとめ、大きな勢いで一気に当てていました。着弾時の水の仕事率を、噴射に使う筋肉の推定質量あたりに換算すると約3000 W/kgで、脊椎動物の筋肉が出せる最大の約500 W/kgを大きく上回りました。研究者は、この力の増幅は魚の体の中ではなく、インクジェットプリンターと同じような噴流の性質によって、体の外で起きていると説明しています。

2014年の研究では、訓練した飼育下の個体で、遠くの標的を狙う噴流ほど長く形を保ち、水が噴流の先端に集まるタイミングが、標的に当たる直前になるよう調整されていました。魚はこれを、口の開き方を変える速さで調節していました。総説では、標的の大きさに応じて撃つ水の量も変えていると紹介されています。

獲物の虫は植物にしっかりつかまっていて、その力はふつう体重の約10倍になります。2015年の Toxotes chatareus の実験では、最も遠い標的(体長の5.8倍の距離)への衝撃力は、最も近い標的(2.3倍)に比べて平均15%未満しか下がらず、最も遠い標的でも、200 mgの昆虫がつかまる力の2倍ありました。

ずれて見える標的への対応

水の中から空気中の標的を見ると、水面で光が曲がる(屈折する)ため、標的の位置や見え方が大きくゆがみます。テッポウウオは、この見え方のずれを乗り越えて当てなければなりません。

そのやり方については、研究によって結論が分かれています。

  • 2000年の研究では、テッポウウオが経験から学んだ屈折の補正を使っている、という仮説は支持されませんでした。
  • 2004年の研究では、見る位置によって複雑に変わる見え方を考慮して、物体の本当の大きさを正確に判断できるよう学習できました。
  • 2024年の研究では、水面の上に風を当てて水の飛び方をずらすと、テッポウウオは撃ち方を合わせていき、条件の変化に体の動きで適応する能力があることと合う結果でした。

屈折でずれて見える標的にも当てられることは確かですが、どのように補っているのかは研究が続いています。

落ちた獲物を、誰よりも先に

撃ち落とした獲物を、ほかの魚に取られずに食べることも大切です。飼育下の実験では、テッポウウオは獲物が落ち始めて約100ミリ秒後には素早く向きを変え、そのときの獲物の位置ではなく、あとで水面に落ちる地点へ体を向けていました。向きを変えたあとは、それ以上見て確かめなくても、予測した地点へまっすぐ向かえます。

泳ぎ出す速さも落下地点までの距離に合わせて調整し、獲物が着水してから約50ミリ秒という短い時間のうちに到着していました。落下地点へ向かうこの動きは、敵から逃げるときの急発進と区別できないほど速く、ほかの水面の魚に大勢で囲まれていても、落とした獲物を確保できると紹介されています。

同じ噴射の技術は水中でも使われ、飼育下の訓練個体では、近くから水を噴いて底に埋まった餌を浮き上がらせることも確かめられています。こうした撃つ能力が、そもそもなぜ・どのように進化したのかは、まだ分かっていません。

よくある質問

テッポウウオは海でも見られますか?

テッポウウオの仲間は、マングローブや川などの淡水・汽水の水辺にすむ魚です。サンゴ礁の海で潜って出会う魚とは、すむ場所が違います。日本では西表島と石垣島の川でのみ記録されています。

舌を動かして狙いを定めているのですか?

研究では、狙いを定めるのは体の向きだと示唆されています。舌を支える骨は水を噴き出す管の一部をつくりますが、噴き出す向きは体全体の向きで決めていると考えられています。

水面で光が曲がるのを、計算して撃っているのですか?

屈折でずれて見える標的にも当てられますが、その補い方は研究によって結論が分かれています。学習による補正を支持しない研究、見え方の違いを学習できたとする研究、条件の変化に撃ち方を合わせられるとする研究があります。

遠くの標的でも、虫を落とせるほど強く当たるのですか?

Toxotes chatareus の実験では、体長の5.8倍の距離の標的でも、近い標的に比べて衝撃力の低下は平均15%未満で、200 mgの昆虫がつかまる力の2倍ありました。

まとめ

テッポウウオは、口の天井の溝と舌の骨でできる管から水を噴き出し、体の向きで狙いを定めます。距離に合わせて口の開け閉めを調節し、空中で水を一つの塊にまとめることで、筋肉だけでは出せない強い力で獲物に当てています。

水面での屈折によるずれへの対応については研究の結論が分かれていますが、獲物の落下地点を素早く予測して先回りする力も確かめられています。マングローブや川の水辺で暮らす、狩りの技をいくつも組み合わせた魚です。