カエルアンコウの仲間の頭の上には、細い棒のようなものが付いています。この棒を振る姿は、まるで釣りをしているように見えます。カエルアンコウは、本当に釣りをしているのでしょうか。
カエルアンコウの「釣り竿」は、背びれの一番前の部分が変化したもので、先端には小さな生き物に似た「疑似餌」が付いています。これを振って小魚をおびき寄せ、口の中を一気に広げて吸い込みます。名古屋大学の研究では、この「釣り行動」のための竿を動かす神経が、ほかの背びれを動かす神経とは別の場所にあることも分かりました。釣り竿と疑似餌のつくりや獲物を吸い込む速さについて、SOLBOY DIVE CENTERが名古屋大学などの研究をもとにまとめました。
釣り竿は背びれ、疑似餌は皮ふが変化したもの
名古屋大学の2024年の発表によると、カエルアンコウの頭の上の釣り竿のような棒は「誘引突起」と呼ばれ、背びれが変化したものです。先端に付いたゴカイのような部分は「エスカ」と呼ばれ、皮ふのひだ(皮弁)が変化したものです。エスカの和名は「擬餌状体」で、種によって、ゴカイやオキアミ、小魚などにそっくりな形になっています。
多くのアンコウの仲間では、第1背びれが棒のように変化して、餌の生き物をおびき寄せるのに使われます。分類の記載では、カエルアンコウの仲間のこの棒は「吻上棘」とも呼ばれます。沖縄島と屋久島の標本から記載されたピエロカエルアンコウでは、擬餌状体は白く、暗い色の水玉模様がありました。
竿は「釣り」専用で、動かす神経も特別
同じ発表によると、カエルアンコウの誘引突起は、泳ぐことや威嚇には使われず、振り回して小魚をおびき寄せて食べる「釣り行動」に特化しています。行動の観察では、第2〜4背びれは威嚇に使われ、第4背びれは泳ぐときにも使われていました。
神経の通り道を調べる解剖の研究では、誘引突起を動かす運動ニューロンが、ほかの背びれを動かす運動ニューロンとはまったく異なる場所にあることが分かりました。研究はカエルアンコウ(Antennarius striatus)を対象にしたものです。
1978年の研究は、Antennarius 属のカエルアンコウが小魚に似せたルアーを使い、このルアーが獲物の目を強く引きつけるだけでなく、少ないエネルギーで低い周波数の水の圧力の刺激も出していると考えられるとしています。
獲物は、ひと口で一気に吸い込む
寄ってきた獲物は、ひと口で吸い込まれます。1979年の研究は、浅い海にすむ Antennarius 属を毎秒800・1,000コマの高速撮影で調べ、口とえらのまわりの空間を非常に速く広げることで、大きな吸い込む力をつくっていることを示しました。獲物は、それまで記録されたどの魚よりもかなり速く丸ごと飲み込まれ、研究者らは、脊椎動物で最も速い食べ方の一つだとしています。
頭の動きも大きく関わります。オオモンカエルアンコウ3個体をX線動画で調べた2021年の研究では、食べるときに頭を体に対して最大56°(平均41°)持ち上げ、その動きは30〜50ミリ秒でした。頭の骨と最初の背骨の間の関節に加え、最初と2番目の背骨の間の関節も、しばしば20〜30°と大きく回転していました。
浅い海の海底で暮らすアンコウの仲間
アンコウの仲間は400種を超える肉食の魚で、変化した第1背びれで獲物を誘う狩りで知られています。そのうちカエルアンコウの仲間は、主に浅い海の海底近くにすみ、例外の一つに、浮かぶ海藻の間で暮らす Histrio histrio がいます。左右に平たい太った体は、泥や砂、岩の海底を移動したり、溶け込んだりするのに向いています。
2022年の報告によると、カエルアンコウの仲間(カエルアンコウ科)の現生の種は世界で15属53種が知られ、多くは浅い海にすみ、日本からは5属15種が報告されています。手足のように変形した胸びれと腹びれで、海底を歩くように動くのも特徴です。
なお、カエルアンコウは以前「イザリウオ」と呼ばれていましたが、日本魚類学会の改名案で、カエルアンコウに改められています。
よくある質問
カエルアンコウは、深海のアンコウと同じ仲間ですか?
どちらもアンコウの仲間ですが、カエルアンコウの仲間は主に浅い海の海底近くにすみ、中深層から深海層にすむ深海のアンコウの仲間(Ceratioideo)とは別のグループです。
釣り竿は、何からできているのですか?
背びれの一番前の部分(第1背びれ)が変化したものです。先端の疑似餌は、背びれではなく皮ふのひだ(皮弁)が変化したもので、擬餌状体と呼ばれます。
カエルアンコウは、どれくらい速く獲物を食べるのですか?
1979年の研究では、それまで記録されたどの魚よりもかなり速く獲物を飲み込むことが示され、脊椎動物で最も速い食べ方の一つとされています。一方、頭を持ち上げる動きの30〜50ミリ秒という値は、2021年にオオモンカエルアンコウ3個体をX線動画で調べた研究の結果で、獲物を飲み込むまでの時間ではありません。
まとめ
カエルアンコウの釣り竿は背びれが変化した誘引突起で、先端の疑似餌は皮ふのひだが変化した擬餌状体です。竿は釣り専用で、動かす神経もほかの背びれとは別の場所にあります。
疑似餌に寄ってきた小魚は、口とえらのまわりを一気に広げる力で、ひと口で吸い込まれます。カエルアンコウの仲間は主に浅い海の海底で暮らし、深海のアンコウの仲間とは別のグループです。