マンタはあの大きな口で何を食べる?プランクトンをこし取る仕組み

大きな口を開けたまま、ゆったりと泳ぐマンタ。あの大きな口で、いったい何を食べているのでしょうか。

マンタの仲間の主な食べ物は、動物プランクトンなどの小さな生き物です。口を開けて泳ぎながら水ごと取り込み、えらの内側にある特別なこし取る装置で餌をとらえ、水はえら孔から出します。ただ、どの深さのどんなプランクトンを食べているのかについては、研究によって見方が分かれています。マンタの食事について、SOLBOY DIVE CENTERが研究の成果を紹介します。

この記事では、オニイトマキエイ(Mobula birostris)とナンヨウマンタ(Mobula alfredi)を調べた研究を紹介します。以前は Manta 属とされていたため、古い研究では学名が違います。ここでは研究ごとに、どちらの種を調べたものかを添えます。

口を開けて泳ぎ、小さな生き物をこし取る

マンタの仲間は口を開けて泳ぎ、0.05〜0.1 mmほどの小さな動物プランクトンから、0.1〜0.5 mmの小型の甲殻類、それより大きなプランクトンまでをとらえます。取り込んだ海水は、えら孔から出ていきます。

プランクトンの餌を水からこし取る食べ方(ろ過食)は、軟骨魚類の中では、ネズミザメ目とテンジクザメ目の大型のサメ(Megachasma・Cetorhinus・Rhincodon の各属)と、マンタを含むイトマキエイ科の3つの系統で、それぞれ別々に進化しました。プランクトンそのものについては、プランクトンの記事でご紹介しています。

えらの内側にある「ろ過の葉」

マンタの仲間のこし取る装置は、えらにある鰓耙(さいは)という部分が大きく形を変えたものです。平たい葉のような「ろ過葉」が長く平行に並び、口に入った水は一方向に流れて、ろ過葉の上を通り、すき間(ろ過の穴)からえらの側へ抜けていきます。

この装置の不思議な点は、水とほぼ同じ重さの小さな粒を、ろ過の穴より小さくても、ねばねばした仕組みを使わずにとらえ、しかも詰まらせないことです。これは、ふるいのように穴より大きな粒だけを残す方法など、それまでに知られていた仕組みでは説明しにくいものでした。

2013年に解剖からイトマキエイ科の流れを調べた研究では、水が流れ込む向きから急に90度曲がってろ過の穴を通ることから、水の流れで餌の粒を浮かせながら運ぶ「交差流ろ過」が使える、と推論されました。

2018年には、オニイトマキエイの標本2体を測って作った模型と、コンピューターによる流れの計算を組み合わせた研究が発表されました。その結果、粒子がろ過葉の翼のような構造にぶつかって、ろ過の穴から「跳ね返る」という、これまでにない分け方をしていることが示されました。この仕組みでは、穴より小さい粒も分けられ、たくさんの水を流せて、詰まりにくいとされています。ただし、模型と計算での結果で、生きたマンタの口の中で測ったものではありません。

口の両側の「頭びれ」

マンタの口の両側には、頭びれと呼ばれる一対のひれがあります。フロリダ自然史博物館の解説によると、摂餌のときには頭びれを広げて角度をつけ、プランクトンの多い水を口へ導きます。エクアドル沖では、オニイトマキエイが口を開けて鰓耙を見せ、頭びれを広げた姿で、動物プランクトンの集まりの中を泳ぎながら食べ続けていました。

頭びれは、胸びれの前の部分が分かれてできたもので、マンタの仲間の体のつくりの最も大きな特徴とされています。

宙返りや渦巻きで食べる

ナンヨウマンタの食べ方は、モルディブのハニファル湾で詳しく調べられています。食べるときの行動は、まっすぐ泳ぐ、海面で食べる、何匹も連なる、重なる、宙返りする、渦を巻く、横向きになる、海底近くで食べる、の8つに分けられています。複数の個体が水を動かして渦を作り、動物プランクトンを集めて食べる「サイクロン」と呼ばれる食べ方も記載されています。

同じ湾の調査では、ナンヨウマンタは、動物プランクトンの量が1立方メートルあたり乾燥重量で53.7 mgを超えると、食べない状態から食べる行動に切り替えていました。これは、体の維持に必要と計算された量の2倍以上でした。食べているときの動物プランクトンは、カイアシ類などの甲殻類が中心でした。

マンタの仲間の食事は、一時的に餌が多くなる、ある程度決まった場所で起こることが多いとされています。

見えない深い場所でも食べている?

これまでのマンタの食べ物の情報は、大部分が昼間の海面近くでの観察によるものでした。そこで、筋肉や脂肪に残る手がかり(安定同位体や脂肪酸)から、何を食べているのかを調べる研究が行われています。

  • エクアドル沖のオニイトマキエイ:2016年の研究では、筋肉の成分は表層の動物プランクトンだけを食べているとすると合わず、食べ物の大部分が中深層に由来することが示唆されました。2018年の脂肪酸の研究も中深層由来を示唆していますが、中深層のプランクトンの多くは昼は深く、夜は浅い所へ移動するため、実際にどの深さで食べているのかは分かりません。
  • オーストラリアとモザンビークのナンヨウマンタ:2013年の研究では、海底近くの動物プランクトンが食べ物の重要な部分であることが示唆されました。
  • セーシェルのナンヨウマンタ:2019年の研究では、浮遊性の動物プランクトンが45%、海底近くから浮き上がってくる動物プランクトンが38%、中深層の餌が17%と推定されました。

ニューカレドニアで衛星標識を付けたナンヨウマンタ9個体は、すべてが300 mより深く潜り、最も深い記録は672 mでした。研究者は、この深い潜水は、夜に深い所で大切な食べ物を得るためではないかと考えています。

よくある質問

マンタは魚を食べるのですか?

マンタの仲間の主な食べ物は、動物プランクトンや小型の甲殻類などの小さな生き物です。口を開けて泳ぎながら水ごと取り込み、えらの内側の装置でこし取って食べます。

こし取る装置は、どうして詰まらないのですか?

模型と計算を使った2018年の研究では、粒子がろ過葉にぶつかって穴から跳ね返る仕組みで、穴より小さな粒も分けられ、詰まりにくいことが示されました。生きたマンタで測った結果ではありません。

マンタはいつも海面近くで食べているのですか?

観察されてきたのは主に昼間の海面近くですが、体の成分の分析からは、中深層や海底近くのプランクトンも食べていることが示唆されています。ニューカレドニアのナンヨウマンタは、672 mまで潜った記録があります。

まとめ

マンタの仲間は、口を開けて泳ぎながら動物プランクトンなどの小さな生き物を水ごと取り込み、えらの内側の「ろ過葉」でこし取って食べています。口の両側の頭びれが水を口へ導き、宙返りや渦巻きなど、プランクトンの量や場所に合わせたさまざまな食べ方も記録されています。

一方で、どの深さのプランクトンをどれだけ食べているのかは、種や場所によって研究結果が分かれています。体の成分の分析や深い潜水の記録から、見えない場所での食事も少しずつ明らかになってきました。