真珠は、貝の中でどうやってできる?外套膜の細胞がつくる「真珠袋」と真珠層

貝の中から生まれる、丸くつややかな真珠。真珠は、貝の体の中でどのようにしてできるのでしょうか。

真珠をつくるのは、ふだん貝殻をつくっている外套膜の細胞です。この細胞が貝の体の中で袋(真珠袋)をつくり、その内側に、貝殻の内側と同じ「真珠層」を分泌して重ねていくことで真珠ができます。天然の真珠は、外套膜が傷ついたことなどをきっかけに、偶然この袋ができたものです。核を入れる養殖真珠では、外套膜の小さな切れ端と真珠核を別の貝に移植して、真珠袋をつくらせます。真珠ができる仕組みを、SOLBOY DIVE CENTERが天然と養殖の違いとあわせて追いかけます。

真珠のもとは、貝殻をつくる外套膜

貝殻は、貝の体を包む外套膜がつくっています。水産総合研究センター(現・水産研究・教育機構)の2014年の資料によると、真珠養殖では、アコヤガイの外套膜という組織が美しい真珠層をつくることを利用しています。

2008年の学会発表によると、天然の貝類では、殻をつくる外套膜の表面の細胞が、偶然に体の中で袋状の構造(真珠袋)をつくることがあり、その中に真珠ができます。東京大学の学位論文の審査結果の報告では、真珠は、異物が入り込んで外套膜の組織が傷ついたことに応じて、貝がその周りに貝殻のような物質をつくることでできると説明されています。2025年の論文も、日常の働きである殻づくりと違い、真珠の形成は外套膜への傷や刺激に応じた防御の仕組みの結果だと述べています。

真珠層は、薄い板のレンガ積み

アコヤガイの貝殻の内側は真珠層と呼ばれ、宝石の真珠と同じ構造をしています。2019年の解説によると、真珠層は、厚さ300〜400nmほどの平たいアラゴナイト(炭酸カルシウムの結晶の一種)が薄い有機物の膜で覆われ、それがレンガのように積み重なった構造です。一方、貝殻の外側の茶色い層は稜柱層と呼ばれ、30〜60µmほどの柱状のカルサイトが厚い有機物の膜に覆われていて、外敵などから身を守る割れにくい構造です。

2024年の総説によると、真珠層は約95%の炭酸カルシウムと約5%の有機物からなり、有機物にはタンパク質やキチン、炭水化物、脂質などが含まれます。結晶と有機物が交互に重なる構造が光の干渉と回折を起こし、真珠層に虹のような色を生みます。日本の研究者も、均一で厚く積み重なった真珠層の構造が干渉色や光沢を生むと説明しています。

結晶ができる仕組みも調べられています。アコヤガイの研究では、Pif という基質タンパク質が、真珠層のアラゴナイトの結晶ができるのに重要な役割を果たすことが分かりました。

養殖真珠は、外套膜の切れ端と核を移植してつくる

2014年の資料によると、アコヤガイの養殖では、外套膜の一部(ピース)を別の貝から切り取り、球形の真珠核と一緒に母貝の生殖巣の中に移植します(挿核)。移植したピースは、真珠核の表面を包む真珠袋になります。この母貝を海で半年〜1年以上育て、真珠袋に真珠層をつくらせ続けると、真珠ができます。真珠養殖を可能にした最も重要な技術は、100年以上前に日本で開発され、今も使われています。

移植のあとは、ピースの縁から細胞が出てきて増え、真珠核を覆います。2013年の研究によると、ピースの外側の細胞が核の表面へ移動して核を完全に包み、この組織が真珠袋と呼ばれます。真珠ができはじめるときには、真珠袋の細胞がまず殻の一番外側の膜(殻皮)を分泌し、次に稜柱層、最後に真珠層が順につくられます。

遺伝子の働きを3か月間調べた研究では、傷が治る過程で、移植から2週間までに真珠袋ができていました。真珠袋が完全にできてから、貝殻づくりに関わる遺伝子が働きはじめると考えられています。

真珠をつくり続けるのは、移植した貝の細胞

移植したピースの細胞が、母貝の体の中に残って真珠をつくり続けているのかは、長く謎でした。2014年の資料によると、組織を移植してから18か月目まで、ピースを取った貝の遺伝子が働いていることが確かめられ、その外套膜の細胞が残って真珠をつくり続けていることが示されました。

フランス領ポリネシアの Pinctada margaritifera を調べた2018年の研究も、この移植は臓器の置き換えではなく、ピースを取った貝に由来する新しい器官(真珠袋)をつくることだと述べています。この貝では15〜20か月の養殖で真珠ができ、その間、真珠袋は、母貝が海水からこし取った餌の栄養からエネルギーを受け取っています。

いつも真珠層になるとは限らない

真珠の表面は、いつも真珠層だけでできるわけではありません。アコヤガイの養殖真珠を調べた日本の研究では、表面のシミやキズの部分は、稜柱層に似た花びらのような結晶で薄く覆われ、シミやキズのない部分では典型的な真珠層ができていました。ピースには、稜柱層に関わる遺伝子が働く細胞と、真珠層に関わる遺伝子が働く細胞の両方が含まれています。

2013年の研究では、移植38日後の真珠袋で、真珠層の真珠をつくった袋と稜柱層の真珠をつくった袋とで、働いている遺伝子の強さが逆になっていました。1955年に長崎県で行われた観察では、ピースの外側の細胞に強い傷をつけるほど、真珠層を分泌する働きが弱くなりました。

天然真珠と養殖真珠のちがい

どちらも、外套膜の細胞が真珠袋をつくり、真珠層を重ねるという点は同じです。天然真珠は、貝の体の中で偶然に真珠袋ができてできるもので、養殖真珠は、人の手で真珠袋をつくらせたものです。核を入れる方法では、ピースと真珠核を移植します。2024年の総説によると、養殖真珠には核を入れたもの(有核真珠)と入れないもの(無核真珠)があり、淡水の真珠の多くは無核です。霞ヶ浦で養殖された淡水の真珠貝イケチョウガイの殻は3層で、いずれもアラゴナイトでできていました。

よくある質問

天然真珠と養殖真珠は、何が違うのですか?

どちらも外套膜の細胞が真珠袋をつくり、真珠層を重ねてできます。天然真珠は、外套膜の組織が傷ついたことなどをきっかけに偶然できたもので、養殖真珠は、人の手で真珠袋をつくらせたものです。アコヤガイなどの有核真珠では、外套膜の切れ端(ピース)と真珠核を移植しますが、淡水真珠の多くは核を入れない方法でつくられます。

真珠の虹色の輝きは、何によるものですか?

真珠層の、薄いアラゴナイトの板と有機物の膜が交互に積み重なった構造が、光の干渉と回折を起こすことで生まれると説明されています。

養殖真珠は、どのくらいの期間でできるのですか?

アコヤガイでは、移植した母貝を海で半年〜1年以上育てます。Pinctada margaritifera では15〜20か月の養殖で真珠ができると報告されています。

まとめ

真珠は、貝殻をつくる外套膜の細胞が貝の体の中で真珠袋をつくり、その内側に、貝殻の内側と同じ真珠層を重ねることでできます。真珠層は薄いアラゴナイトの板と有機物の膜のレンガ積みで、その構造が虹のような光沢を生みます。

天然真珠は外套膜の傷などをきっかけに偶然できたもの、アコヤガイなどの有核養殖真珠は、外套膜の切れ端(ピース)と真珠核を移植して真珠袋をつくらせたものです。移植したピースの細胞は、1年半たっても母貝の中で真珠をつくり続けていることが確かめられています。