ミノカサゴの大きなひれには、どんな役割がある?狩りの胸びれと守りのとげ

扇のように大きく広がる胸びれと、長いとげのある背びれ。ミノカサゴの仲間の大きなひれには、どんな役割があるのでしょうか。

大きな胸びれは、狩りの道具として使われています。胸びれをいっぱいに広げたまま獲物にゆっくり忍び寄り、岩や狭い場所へ追い詰めてから、素早く口で吸い込むように捕らえます。背びれなどの長いとげには毒があり、こちらは主に捕食者から身を守るためのものです。一方、「ひれを広げて仲間に合図し、協力して狩る」という話は、根拠になった研究に疑問が出され、別の種では確かめられませんでした。SOLBOY DIVE CENTERが、確かめられていることと、そうでないことを分けて解説します。

「ミノカサゴ」は Pterois lunulata という1種の和名でもあります。以下、複数の種をまとめて指すときは「ミノカサゴの仲間」と呼びます。

胸びれを広げて、ゆっくり忍び寄る

ミノカサゴの仲間は、忍び寄って狩りをする捕食者です。Pterois miles やハナミノカサゴ(Pterois volitans)は、胸びれをいっぱいに広げたまま、長い時間をかけてゆっくり獲物に近づきます。そして口を素早く開けて突き出し、そのときに生じる水の吸い込みで獲物を捕らえます。

大西洋やカリブ海など、本来の分布域の外で調べた研究のまとめでは、ミノカサゴの仲間は獲物を選ぶと、大きな胸びれを使って岩や狭い場所へ追い詰め、ひれを広げたまま十分に近づいてから素早く襲うと説明されています。獲物は頭からくわえることを好むようで、獲物のとげによる事故を避け、逃げられにくくなると考えられています。

口から水を吹きかける

2026年の研究では、Pterois miles とハナミノカサゴが、獲物の魚に近づくあいだに、狙いを定めた水流を口から吹きかけることが報告されました。水流を受けた獲物は近づくミノカサゴの方へ向きを変え、ミノカサゴは獲物を頭から捕らえることが多くなりました。小さい個体ほど、水を吹きかけやすい傾向がありました。

これは口から出す水流で、ひれの働きではありません。研究者は別の可能性として、広げた胸びれで泳ぐことで生じる水の動きだけでも、獲物の反応を引き起こすのに十分かもしれない、とも考察しています。

「ひれで合図して協力狩り」は確かめられていない

2014年に、キリンミノ(Dendrochirus zebra)を迷路状の水槽で調べた研究があります。この研究は、キリンミノが決まった形のひれを広げる表示で、仲間や別の種(ネッタイミノカサゴ)に獲物の存在を知らせ、協力して狩ると報告しました。協力した個体のほうが1尾あたりの成功率が高く、応じた個体は大きく広げた胸びれで獲物を追い詰めるのを手伝ったとされています。

ところが2018年、掲載誌の編集部は、この研究のデータの妥当性に懸念があるとして「懸念表明」を出しました。著者による訂正では、「各個体を1回の試行にだけ使った」という記述は一部の実験にしか当てはまらず、別の実験の魚を再利用していたと説明されています。

その後、本来の分布域である紅海で Pterois miles を調べた研究では、野外で協力して狩る証拠は見られませんでした。合図とされたひれの動きはよく見られたものの、相手には向けられておらず、合図ではなく狭い場所での泳ぎ方だと考えられました。2023年の水槽実験でも、2尾の Pterois miles は獲物がいても同じ場所に集まらず、狩りで協調している証拠はありませんでした。後続研究の著者は、ミノカサゴの仲間は本来、単独で狩りをする魚だと述べています。

ひれを広げて仲間と協力して狩る、という説明は、確かめられた事実とは言えない段階です。

長いとげは、身を守るための毒の装置

ミノカサゴの仲間(Pterois 属)の背びれなどのとげには毒があります。毒のあるとげは、背びれに13本、しりびれに3本、腹びれに2本の計18本で、それぞれ細く、皮の鞘に包まれています。とげの表皮にある細胞が毒をつくり、それは主に捕食者から身を守るための仕組みです。日本の研究者も、ひれに毒腺のあるとげを持つ「刺毒魚」の代表として、ミノカサゴの仲間を挙げています。

見かけたときは、触れたり、追い回したりせず、距離をとって眺めましょう。水中での生き物との接し方は、海洋保護区マナーのページをご覧ください。

分類の見直しも進んでいる

ミノカサゴの仲間の分類は、遺伝子や体の形、頭の模様をもとに見直しが進んでいます。2025年の日本の論文では、ネッタイミノカサゴは Pterois 属から別の属(キミオコゼ属 Pteropterus)へ移されています。古い資料と新しい資料で、学名が違うことがあります。

よくある質問

ミノカサゴは、大きな胸びれで泳いでいるのですか?

大きな胸びれは、狩りのときに広げたまま獲物に忍び寄り、岩や狭い場所へ追い詰めるのに使われると説明されています。広げた胸びれで泳ぐことで生じる水の動きが獲物の反応を引き起こす可能性も、研究者は考察しています。

ミノカサゴの仲間は、仲間と協力して狩りをするのですか?

2014年の水槽実験でキリンミノの協力狩りが報告されましたが、掲載誌が懸念を表明し、紅海の Pterois miles を調べた研究では協力の証拠は見られませんでした。確かめられた事実とは言えない段階です。

とげの毒は、何のためにあるのですか?

主に捕食者から身を守るためのものです。Pterois 属では、背びれ・しりびれ・腹びれの計18本のとげに毒をつくる組織があります。

まとめ

ミノカサゴの仲間の大きな胸びれは、広げたまま獲物に忍び寄り、岩や狭い場所へ追い詰めるのに使われています。口から水を吹きかけて獲物の向きを変えさせ、頭から捕らえることも報告されました。長いとげの毒は、主に身を守るためのものです。

「ひれで合図して協力して狩る」という話は、もとの研究に疑問が出され、別の種では確かめられていません。大きなひれの役割は、狩りと守りの両面から研究が続いています。