魚も声を出す?浮き袋や歯を使って音を出す魚がいる

水の中で、魚どうしが音でやりとりすることはあるのでしょうか。魚にも「声」と呼べるものはあるのでしょうか。

魚の中には、自分で音を出すことが確かめられた種がいます。音の出し方は、浮き袋に付いた筋肉で浮き袋を震わせる、骨や歯をこすり合わせる、あごを閉じて歯を打ち合わせる、などです。ただし、音を出すことが分かっている魚は約1,000種で、魚がみな音を出すと分かっているわけではありません。音を出す仕組みと、その音が使われる場面を、SOLBOY DIVE CENTERが種ごとの研究から読み解きます。

音を出すと分かっている魚は、どのくらい?

2025年に日本音響学会誌に載った総説では、能動的に音を出すことが分かっている魚は年々見つかっていて、現在約1,000種が知られていると紹介されています。

2023年に発表された世界の目録によると、魚類は約35,000種いて、そのうち発音について調べられたのは1,000種あまりです。同じ目録では、電気で刺激したり手で持ったりといった人の操作がない状態で音を出すことが記録された種だけを数え、魚以外の生き物も合わせて729種としました。どの条件で数えるかによって、種の数は変わります。

熱帯のサンゴ礁の魚に絞った2025年の研究では、能動的な発音が確認されたのは258種で、23目46科にわたっていました。最も多かったのはスズメダイ科(スズメダイ類とクマノミ類、44種)で、ハタ類とイットウダイ科(いずれも16種)が続きます。この研究では、熱帯のサンゴ礁の魚の最大75%が音を出す可能性があるとしていますが、これは可能性として示された上限の値で、確かめられた割合ではありません。

浮き袋を震わせて音を出す

魚が出す音には、筋肉の収縮とゆるみで浮き袋が振動して出る「鼓動音」と、骨や歯などをこすり合わせて出る「摩擦音」などがあります。

2018年の日本の論文の説明では、音を出す魚の多くは頭の骨の後ろから背骨の腹側にかけて「発音筋」を持ち、これを速く縮めて数十〜数百Hzの低い音のパルスを出します。発音筋に浮き袋が接している場合は、その共鳴でより大きな音を出せます。浮力の調節のために浮き袋の体積を変える筋肉が、浮き袋の壁を振動させて音を出すこともあります。発音筋の中には脊椎動物で最も速く振動する種類の筋肉もあり、北米大西洋岸の Opsanus tau という魚では、収縮が最大で1秒に200回に達します。

ニベ科の多くの種は、浮き袋の外側から付く専用の発音筋を縮めて音を出します。ラプラタ川の河口とウルグアイの大西洋岸でニベ科5種を調べた2025年の研究では、3種は発音筋をオスだけが持ち、残りの2種はオスとメスの両方が持っていました。発音筋の雌雄の違いは、種によって異なります。

スケトウダラを調べた1995年の研究は、開腹した5尾に電気刺激を与える実験です。発音筋が瞬間的に縮んでゆるむことで浮き袋が縮んだりふくらんだりして壁が振動し、「グラント音」が出ると考えられました。浮き袋は音を響かせる共鳴器として、音を強めていると推察されています。自然に出した音を録音したのではなく、実験からの推定です。

ほかにも、ホウボウは浮き袋を震わせて音を出しています。ハナミノカサゴ(Pterois volitans)と Pterois miles は、浮き袋に付いた発音筋で何種類かの音を出すことが知られています。カリブ海のキュラソーで外来の個体を解剖した2025年の研究によると、この2種の発音の仕組みの詳細と、音の役割はまだ分かっていません。

こすり合わせる、打ち合わせる

硬骨魚の音の出し方には、浮き袋の筋肉による振動のほか、浮き袋からガスを出す、腹膜の筋肉を振動させる、硬い部分をこすり合わせる、といった方法もあります。こすり合わせる部分の例としては、前歯、のどの奥にある咽頭の歯、ひれの棘が挙げられています。

クマノミ類は、また別の方法を使います。2026年に発表された論評では、これまでの研究をもとに、クマノミ類の攻撃のときの音は、あごを素早く閉じて歯がぶつかることで生じると説明しています。その衝撃が骨格と肋骨を振動させ、すぐそばにある浮き袋の壁を動かします。一方、相手に従うときに出す音の仕組みは、まだ分かっていません。

音はどんな場面で使われる?

音の役割は、種と状況によって違います。

クマノミとハマクマノミを水槽で調べた1988年の研究では、争いの際に「ポップ」「チャープ」と呼ばれる音が出て、優位な個体の下あごがわずかに上下に動いていました。水槽での出会いのうち音が出た割合は、クマノミで112回中73回(65%)、ハマクマノミで343回中62回(18%)でした。著者らは、クマノミ類の争いの誇示行動にとって、音は欠かせない要素ではないと推論しています。

ミツボシクロスズメダイを水槽で調べた1986年の研究では、ポップを含む3種類の音が録音され、ある個体がほかの個体を追いかけたときに音が出ました。北海道の水槽でキツネメバルを2尾ずつ組み合わせた2018年の研究では、2,000Hz未満の低い音のパルスが記録され、威嚇の行動を伴うかどうかで音の特徴が変わりました。

野外の研究もあります。パプアニューギニアのキンベ湾で、Amphiprion percula(クマノミ類の一種)の野生の9群を水中ビデオと録音で調べた2025年の研究では、鳴き声の違いを最もよく説明したのは行動の状況で、体の大きさと群れの中の順位が違いを加えていました。これに対して2026年の論評は、クマノミ類では体が大きい個体ほど音の主な周波数が低いという関係がこれまでの研究で一貫して示されていると指摘しており、解釈は分かれています。クマノミ類が音だけで仲間を見分けられるかを確かめる、音を流して反応を見る実験はまだ行われていません。

モーレア、グアム、セーシェル、フィリピンの海でイットウダイ科6種を昼間に録画した2024年の研究では、調べた6種すべてが、追いかけや競い合いなどの争いと仲間への合図を合わせた6種類の場面で音を出していました。ウツボを集団で威嚇するときや、掃除をするベラ類とのやりとりでも音を出すことが、以前に報告されています。著者らは、この科では昼間の音が目で見て伝える合図を補っていると示唆しています。

ニベ科では、多くの種で卵の採集と録音を同時に行い、音を出すことと求愛との間に関係があることが記録されてきました。

水槽の音と、海の音

小さな水槽で録音した魚の鳴き声は、本来の波形が大きくゆがむことが報告されています。水槽で得た音の特徴や頻度を、そのまま海の中の値として扱うことはできません。

海で音を記録する研究もあります。2016年の解説で紹介された千葉県館山湾の水深20mの録音では、日の入りの約1時間前から鳴き声が少しずつ出はじめ、日の出までの間に多数記録されました。ただ、音を出した魚の種類までは特定されていません。

人が水中で音をどう聞くかは水中の見え方と音の記事で、魚以外の生き物の音はテッポウエビの記事で紹介しています。

よくある質問

どの魚も音を出すのですか?

そうとは言えません。音を出すことが分かっている魚は約1,000種と紹介されています。魚類は約35,000種いて、発音について調べられたのは1,000種あまりです。

魚は体のどこで音を出しているのですか?

種によって違います。浮き袋に付いた発音筋で浮き袋を震わせる種、骨や歯、ひれの棘をこすり合わせる種がいます。クマノミ類では、あごを素早く閉じて歯がぶつかる衝撃が浮き袋に伝わると説明されています。

クマノミは音で体の大きさを伝えているのですか?

クマノミ類では、体が大きい個体ほど音が低いという関係が示されてきましたが、2025年の野外研究の解釈をめぐって議論もあります。仲間が音だけで相手を見分けているかを確かめる実験はまだ行われておらず、音で大きさを伝えているかは分かっていません。

まとめ

魚の中には、自分で音を出すことが確かめられた種がいます。浮き袋に付いた発音筋で浮き袋を震わせる方法、骨や歯をこすり合わせる方法、クマノミ類のようにあごを閉じて歯を打ち合わせる方法など、音の出し方は種によってさまざまです。

音は、争いや追いかけ、仲間への合図、求愛などの場面で使われていますが、その役割は種と状況によって違います。水槽か海か、自然に出た音か実験で出させた音かによって、分かることも変わります。