モンガラカワハギは、背びれをどう使う?とげを固定する「引き金」の仕組み

サンゴ礁の魚、モンガラカワハギの仲間。背中には、立てたり倒したりできる太いとげがあります。この背びれは、何に使われているのでしょうか。

モンガラカワハギの仲間の第1背びれのとげは、立てた状態で固定できます。2本目のとげの付け根が1本目のとげの溝にはまり込んで留め具になり、2本目を押し下げると外れる仕組みです。英名の triggerfish(引き金の魚)は、この仕組みに由来すると説明されています。逃げ込んだ穴や隙間で体を固定したり、体を大きく見せたり、なわばりの威嚇や求愛に使ったりと、背びれの使い道をSOLBOY DIVE CENTERが一つずつ説明します。

和名の「モンガラカワハギ」は Balistoides conspicillum という1種の名前でもあるので、科全体の話をするときは「モンガラカワハギの仲間(モンガラカワハギ科)」とします。

とげを立てて「固定」する仕組み

モンガラカワハギ科の第1背びれには、見えるとげが3本あります。2本目のとげは1本目の半分より長く、1本目のとげは、2本目によって立てた位置で固定されます。

オーストラリア博物館の解説によると、1本目のとげを立てると、2本目のとげの付け根が1本目のとげの溝にはまり込み、玉と受け口のような「引き金」の仕組みでとげが倒れなくなります。2本目のとげを押し下げると、固定が外れます。英語で「なぜ triggerfish(引き金の魚)と呼ばれるのか」という題で、この仕組みが紹介されています。

同じ仕組みは、近い仲間のカワハギ科にもあります。一方、Triacanthodidae という魚の仲間では、2本目のとげが1本目を直接固定するつくりにはなっていません。

この仕組みは、生まれて間もないころから備わっています。大西洋の Balistes capriscus の仔魚を調べた研究では、背びれの発生の早い段階で、前方の2本のとげと、それを支える骨が引き金の仕組みをつくり、標本の仔魚はふつうとげが固定された状態で見つかりました。研究者は、立てた背びれのとげと腰の骨格を組み合わせた守りの仕組みが重要だとしています。

穴や隙間に体を固定する

とげを固定する仕組みは、身を守るときに役立ちます。捕食者から穴や隙間に逃げ込んだとき、モンガラカワハギやカワハギの仲間は、背びれを立て、腹びれにあたる腰の骨も下げて、体を隙間に固定します。こうして、捕食者に引きずり出されるのを防ぐと説明されています。

背びれだけで体を固定するのではなく、背中のとげと腰の骨の両方を使うところがポイントです。博物館の解説では、若い個体がこの方法で隙間に体を押し込んで固定できるとしています。

大きく見せて、ためらわせる

成魚では、第1背びれのとげを固定して腰の骨を下げると、体が大きく見えます。オーストラリア博物館は、これが捕食者をためらわせる可能性があると紹介しています。

威嚇と求愛にも使う

背びれは、仲間どうしのやりとりにも使われます。日本の研究者の総説によると、モンガラカワハギ科とカワハギ科では、第1背びれのとげを立てたりすぼめたりすると同時に、おなかの皮のひだを広げる行動が見られます。この行動は、オスどうしが威嚇し合うときや、オスがメスに求愛するときに見られます。

総説で扱ったモンガラカワハギ科の8種では、すべてのオスがなわばりをつくっていました。どの種でも親が卵を守り、卵の世話はメスの役割で、卵に近づく魚を追い払って食べられるのを防いでいました。

巣を守るときは、気が強くなる

産卵の時期には、巣を守るために攻撃的になる種もいます。ゴマモンガラは、侵入者から巣を攻撃的に守ることで知られる、なわばり意識の最も強いサンゴ礁の魚の一つです。

モルディブでの観察では、ゴマモンガラは産卵前にペアで浅い楕円形の巣(約35×25 cm、深さ約5〜6 cm)を掘り、月に1〜2回、ペアごとに離れた場所で巣をつくって産卵しました。同じモルディブで、大型のサメ(Galeocerdo cuvier)が集まる礁を2024年に記録した研究では、ゴマモンガラとこのサメの10回のやりとりがすべてゴマモンガラ側の攻撃から始まり、多くがサメの尾びれを狙っていました。いくつかは営巣の時期と重なっていました。

一方で、ゴマモンガラは巣を掘ったり守ったりしているとき以外は、シュノーケラーやダイバーが近づくと、たいてい離れていくと報告されています。

モンガラカワハギの仲間を眺めるときに

モンガラカワハギ科の多くは、水深50 mまでの浅いサンゴ礁にすんでいます。岩の隙間に入ったモンガラカワハギの仲間を見かけても、無理に出そうとしたり、とげに触れたりしないようにしましょう。とくに産卵の時期に巣を守っている個体には、近づかないことが大切です。観察するときの基本は、海洋保護区マナーのページに載せています。

よくある質問

モンガラカワハギの背びれは、なぜ倒れないのですか?

1本目のとげを立てると、2本目のとげの付け根が1本目の溝にはまり込み、留め具の役目をするためです。2本目のとげを押し下げると固定が外れます。

英名の triggerfish は、どういう意味ですか?

「引き金の魚」という意味で、2本目のとげで1本目を固定したり外したりする仕組みが、引き金のようであることに由来すると説明されています。

モンガラカワハギの仲間は、人に向かってくることがありますか?

ゴマモンガラは巣を攻撃的に守ることで知られています。モルディブの観察では、巣を掘ったり守ったりしているとき以外は、人が近づくとたいてい離れていきました。巣を守っている時期の個体には近づかないようにしましょう。

まとめ

モンガラカワハギの仲間の第1背びれのとげは、2本目のとげを留め具にして、立てた状態で固定できます。逃げ込んだ穴や隙間では、このとげと腰の骨を使って体を固定し、捕食者に引きずり出されるのを防ぎます。

とげを立てて体を大きく見せたり、威嚇や求愛の合図に使ったりもします。英名の「引き金の魚」は、この背びれの仕組みから来ています。