SOLBOY Learning 知識の補足(計器と記録)|全20レッスンの一覧
同じ日に2本目を潜ると、1本目と同じくらいの深さなのに、ダイブコンピューターの「その深さにいられる時間の目安」が、1本目の始めより短く表示されることがあります。1本目はもう終わっているのに、なぜ2本目の計算に影響するのでしょうか?
この記事では、前のダイビングの深さと時間、水面で過ごした時間が、次のダイビングの計算に引き継がれる理由を説明します。
まず何が起きるの?
- 2本目の潜り始めに、目安の時間が1本目の始めより短く表示されることがある
- 水面に上がっているあいだも、ダイブコンピューターは計算を続けている
- 水面で過ごす時間が長いほど、次のダイビングの目安は長めに表示されやすい
どれも、ダイブコンピューターが、そのダイビング1本だけでなく、それまでの潜り方の記録を続けて使っていることから説明できます。
30秒で理解
- 潜っているあいだ、呼吸する空気に含まれる気体(主に窒素)が体に取り込まれ、浮上したあとや水面にいるあいだに少しずつ外へ出ていく。
- ダイブコンピューターは、体の中を直接測らず、深さと時間の記録から、取り込みと排出を決まった計算のしかたで見積もっている。
- だから、前のダイビングの深さと時間、水面で過ごした時間が、次のダイビングの計算に引き継がれる。
なぜそうなる?
空気の中の気体は、体に取り込まれる
タンクの中身は、主に窒素と酸素からできた空気です。潜っているあいだ、まわりから押す力が強くなるにつれて、呼吸する空気に含まれる窒素などの気体が、体に取り込まれていきます。
取り込まれた気体は、時間をかけて出ていく
取り込まれた気体は、浮上して押す力が弱まると、少しずつ体の外へ出ていきます。この出ていく動きは、浮上したら一度に終わるのではなく、水面にいるあいだも続きます。Cressi(ダイビング器材メーカー)の取扱説明でも、浮上中や水面で過ごすあいだ、次のダイビングまで、気体の取り込みと排出を含めて計算すると説明されています。
速く出入りする部分と、ゆっくりの部分がある
PADI(ダイビングの指導団体)の解説では、ダイブコンピューターは体の中の窒素の量を実際に知ることはできず、代わりに、気体を取り込んだり出したりする速さの違う、いくつもの「理論上の体の部分」を想定して計算していると説明されています。
速く出入りする部分では、水面で過ごすうちに気体が出ていったと計算されても、ゆっくり出入りする部分には、前のダイビングの分がまだ残っていると計算されることがあります。
だから、2本目は1本目の続きとして計算される
2本目を潜り始めるとき、ダイブコンピューターは、1本目の深さと時間、そのあと水面で過ごした時間から、まだ残っていると見積もった分を含めて計算を始めます。PADIの解説でも、ダイブコンピューターは前のダイビングを計算に含めると説明されています。
そのため、1本目と同じ深さでも、2本目の目安の時間は短めに表示されることがあります。水面で過ごす時間が長いほど、残っていると見積もられる分は少なくなり、目安は長めになりやすくなります。
着けて潜った人の記録だから意味がある
ダイブコンピューターの計算は、その機械を着けて潜った人の深さと時間の記録にもとづいています。Suunto(計器メーカー)の取扱説明では、潜っているあいだ・続けて潜るあいだずっと着けていなかった人には、その情報は当てはまらないこと、ダイビング中に水面に置いたままにすると次のダイビングの情報が正しくなくなること、その機械を着けずに潜ったダイビングはどの機械も計算に入れられないことが説明されています。Cressiの取扱説明でも、表示される情報は、そのダイビングに使った人だけのものとされています。
体の中を測っているわけではない
ここで「残っている」「出ていった」と言っているのは、ダイブコンピューターが計算のしかたにもとづいて見積もった値です。体の中の気体の量を直接測っているわけではありません。
この言葉はどういう意味?
ここまで出てきたものに、名前をつけておきます。
- 1本目と2本目のあいだに水面で過ごす時間を「水面休息」と呼びます。
- 前のダイビングのあと、続けて潜るダイビングを「反復潜水」と呼ぶことがあります。
- 前のダイビングから体に残っていると計算される窒素を「残留窒素」と呼びます。
名前を覚えることが目的ではありません。「前のダイビングの記録と水面で過ごした時間が、次の計算に引き継がれる」という流れがわかれば十分です。
実際の海ではどう感じる?
1日に2本、3本と潜ると、潜り始めの表示が1本目と違うことに気づくことがあります。それは、ダイブコンピューターがその日の記録を続けて使っているからです。
その日に潜った記録を引き継いで計算するため、ダイブコンピューターは、1日のダイビングを通して同じ人が着け続けることが前提になっています。潜ったあとの記録は、ログブックにも残せます。
講習で一緒に確かめたいこと
- 1本目と2本目で、潜り始めの目安の表示がどう違ったか
- 使う機種で、水面にいるあいだに画面に何が表示されるか
想定シナリオ:同じ深さなのに、2本目は短い
【想定シナリオ】(実際の出来事ではなく、イメージをつかむための架空の例です)
午前に1本潜り、船の上で休んでから、同じくらいの深さで2本目を潜った。潜り始めて画面を見ると、その深さにいられる時間の目安が、1本目の始めより短く表示されていた、という場面。
この場面で起きていたのは、記録の引き継ぎです。ダイブコンピューターは、1本目で取り込まれたと見積もった気体のうち、水面で休んでいるあいだに出ていったと計算した分を差し引き、まだ残っていると計算した分を含めて2本目の計算を始めていました。同じ深さでも目安が短くなったのは、2本目が1本目の続きとして計算されていたからです。
覚えて帰る3ポイント
- 潜っているあいだ、空気の中の窒素などの気体が体に取り込まれ、浮上後や水面にいるあいだに少しずつ出ていく。
- ダイブコンピューターは体の中を直接測らず、深さと時間の記録から、取り込みと排出を見積もっている。
- だから、前のダイビングの深さと時間、水面で過ごした時間が、次のダイビングの計算に引き継がれる。計算は、着けて潜った人だけに当てはまる。
確認クイズ
Q1. 1本目と同じ深さなのに、2本目の目安の時間が短く表示されることがあるのはなぜ?
ア. 1本目で取り込まれ、まだ残っていると計算された分を含めて、2本目の計算が始まるから イ. 2本目は電池が少ないから ウ. 2本目は水温が必ず低いから
Q2. ダイブコンピューターの計算が、着けて潜った人だけに当てはまるのはなぜ?
ア. 機械が体の中を直接測っているから イ. その機械を着けて潜った深さと時間の記録をもとに計算しているから ウ. 名前を登録しているから
答え:Q1はア。ダイブコンピューターは、前のダイビングと水面で過ごした時間の記録を引き継いで、2本目の計算を始めます。
Q2はイ。計算のもとは、その機械を着けて潜った記録です。体の中を直接測っているわけではありません。
次に理解するとよいこと
この記事では、前のダイビングの記録が次の計算に引き継がれる理由を見てきました。
- 深さと時間で、いられる時間の目安が決まる理由は、レッスン「深さと時間で、潜っていられる長さの目安が決まるのはなぜ?」で扱っています。
- タンクの中身が空気である理由は、「ダイビングのタンクは酸素ボンベではない?」で紹介しています。
- 水面休息の過ごし方は、「ダイビングの水面休息とは?」で紹介しています。
- 潜ったあとの記録のつけ方は、「ダイビングのログブックとは?」で紹介しています。