潮の満ち引きはなぜ起こる?大潮・小潮のしくみと潮間帯の生き物

海辺では、同じ場所でも時間によって水際がずいぶん動きます。潮の満ち引きは、なぜ起こるのでしょうか。そして、大潮や小潮とは何なのでしょうか。

潮の満ち引き(潮汐)のおもな原因は、月の引力と、地球が月との共通の重心のまわりを回ることで生じる慣性力を合わせた「起潮力」です。太陽も、月の約半分の起潮力を生みます。月と太陽が一直線に並ぶ新月や満月の頃には満ち引きの差が大きな大潮に、直角にずれる上弦や下弦の月の頃には差の小さな小潮になります。潮の高さの変化は、岩場の生き物のすみ分けや、カニの仲間の子どもの放し方にもかかわっています。空の月と太陽から岩場の生き物までを、SOLBOY DIVE CENTERが気象庁やアメリカ海洋大気庁(NOAA)の解説と研究でつなぎます。

月の引力と、地球全体に一様に働く慣性力

気象庁によると、海面の水位(潮位)は、約半日の周期でゆっくり上下に変化しています。これが潮汐です。そのおもな原因は、月が地球に及ぼす引力と、地球が月と地球の共通の重心のまわりを公転することで生じる慣性力を合わせた起潮力です。なお、気象庁はこの説明で、以前は「遠心力」と書いていた表記を、正確な表現とするため「慣性力」に改めています。

気象庁の用語集では、起潮力を次のように説明しています。月や太陽の引力は、地球上の場所によってわずかに違います。一方、地球の重心で引力とつり合う慣性力は、地球全体に一様に働きます。この2つの差、つまり力の不均衡が起潮力です。NOAAの教材は、地球の月と反対側では、月から遠いために月の引力が弱いと説明しています。こうして地球には、潮の高まりが月の側と反対側の2か所にできます。

地球と太陽のあいだでも、同じ理由でやや小さい起潮力が生じます。NOAAの教材は、太陽の起潮力は月の約半分で、潮汐を左右するおもな力は月だとしています。同じ教材は、潮汐を起こす力は、その力を生む天体からの距離の3乗に反比例して変わるとも説明しています。引力そのものは、距離の2乗に反比例します。

1日に2回、毎日約50分ずつ遅れる

気象庁によると、地球は1日に1回自転するので、多くの場所では1日に2回の満潮と干潮を迎えます。また、月が約1か月の周期で地球のまわりを公転しているため、満潮と干潮の時刻は毎日約50分ずつ遅れます。NOAAの教材は、月の1日(太陰日)を24時間50分とし、満潮どうしは12時間25分離れて起こると説明しています。

ただし、どこでも同じように満ち引きするわけではありません。1日2回の満潮や干潮の高さがそろわず、大きく違うことがあり、これを日潮不等といいます。月の公転の軌道面と地球の赤道面が一致せず、角度をもっているために起こります。日潮不等が極端になると、満潮と干潮が1日に1回しか現れなくなることがあります。

NOAAによると、世界の潮の型は基本的に3つです。2回の満潮と2回の干潮がそれぞれほぼ同じ高さの半日周潮、2回の満潮と干潮の高さが大きく違う混合潮、満潮と干潮が1日に1回ずつの日周潮です。同じ場所でも、月の中で潮の型が変わることがあります。NOAAの教材は、地球が自転するとき、大きな大陸が潮の高まりの西向きの動きをさまたげ、それぞれの大洋の中で複雑な潮のパターンができると説明しています。

大潮と小潮は、月の満ち欠けとともに

気象庁によると、地球に対して月と太陽が一直線に重なると、起潮力の方向が重なって、1日の満潮と干潮の潮位差が大きくなります。この時期が大潮です。月と太陽が互いに直角の方向にずれると、起潮力が打ち消し合う形になって、満潮と干潮の潮位差が最も小さくなります。この時期が小潮です。

新月と満月の頃に大潮、上弦と下弦の月の頃に小潮になり、新月から次の新月までのあいだに、大潮と小潮はほぼ2回ずつ現れます。新月から次の新月までの周期は、およそ29.5日です。NOAAの教材によると、月が地球にいちばん近づく近地点の頃は起潮力がふだんより大きく、潮差が平均より大きくなります。なお、英語で大潮を表す spring tide は、季節の春とは関係のない歴史的な用語です。

気象庁によると、実際に観測される潮位は、月と太陽による天文潮に、気圧や風などの気象の影響が加わったものです。潮汐と潮の流れ(潮流)は、ひとつの現象を、海水の上下の動きと流れという2つの側面から見たものです。

潮間帯にできる、生き物の帯

潮の高さの変化は、岩場の生き物のすみ方にも表れます。北海道大学の研究者らによる2017年の論文によると、岩場の潮間帯の固着生物は、上下にわずか数十cmほどの狭い範囲に帯のように分かれてすんでいて、これを帯状分布とよびます。帯状分布は、世界中の海岸で広く見られます。潮間帯の生き物の多くは、種ごとの乾燥への強さに合わせて、それぞれの高さにすんでいます。

東京湾奥部の付着動物を調べた1985年の論文は、それまでの研究をまとめ、各種の分布の上限はおもに乾燥への強さで決まり、下限は幼生がつく場所の選び方、付着する面をめぐる種どうしの競争、食べられることなど、生き物どうしの要因で決まる傾向があると紹介しています。日本のフジツボ類を解説した1979年の資料では、潮間帯の上部にオオイワフジツボやイワフジツボ、中部にクロフジツボ、チシマフジツボ、タテジマフジツボなどが見られます。

同じ1979年の資料は、このような帯状分布は干満の差がある地域で典型的で、干満の差の少ない日本海側などではあまりはっきりしないとしています。一方、1990年の訪問記は、潮位表の干満差が約20cmの地中海のマルセイユで、海岸の生き物の帯状分布のパターンが、干満差約1.5mの陸奥湾から東北地方の太平洋岸のものときわめて似ていたと記しています。同じ訪問記には、フランス大西洋岸のサンマロ湾で、大潮のときに約13mの干満差が観測されることも書かれています。帯のでき方は、干満差だけでは決まらないようです。

すむ高さが変わると、帯も動きます。2017年の論文によると、岩手県中部の5つの自然海岸では、2011年の地震で地盤が沈むと、どの種でも帯状分布が下がりました。その後の変化は、種によって大きく違いました。

潮のリズムに合わせて子を放つカニ

潮の満ち引きに合わせて活動する生き物もいます。岡山大学の研究者による1988年の総説によると、潮の満ち引きのある環境にすむ生き物の中には、光や温度ではなく、潮の干満と同期した活動(潮汐リズム)を示すものがいます。アカテガニや近い仲間のベンケイガニ、クロベンケイが幼生を放すタイミングは、潮汐の周期と同期したパターンを示します。生殖活動では、新月や満月の頃に活動する個体数が大きく増える、半月周リズムを伴うことがあります。

アカテガニが幼生を放すタイミングを夜の満潮の時刻に合わせるには、昼と夜の周期のほかに、もう一つの手がかりが必要だと考えられました。人工の月光(0.1〜0.2ルクス)の下でアカテガニを長く飼い、幼生を放す様子を記録すると、はっきりした潮汐リズムが現れました。月の光が手がかりの候補になることを示した、飼育での実験の結果です。

よくある質問

満潮と干潮は、どこでも1日に2回ですか?

多くの場所では1日に2回ですが、どこでもではありません。2回の満潮の高さが大きく違う場所や、日潮不等が極端になって満潮と干潮が1日に1回ずつになる場所もあります。同じ場所でも、月の中で潮の型が変わることがあります。

大潮は、新月と満月の日に決まっているのですか?

決まった日というより、大潮は新月と満月の頃、小潮は上弦と下弦の月の頃です。月が地球に近い近地点の頃は潮差が大きくなり、実際の潮位には気圧や風などの気象の影響も加わります。

太陽は、潮の満ち引きにどのくらい関わっていますか?

NOAAの教材によると、太陽の起潮力は月の約半分です。月と太陽が一直線に並ぶと起潮力が重なって大潮に、直角になると打ち消し合って小潮になります。

まとめ

潮の満ち引きは、月の引力と、地球が月との共通の重心のまわりを回ることで生じる慣性力を合わせた起潮力によって起こります。太陽の起潮力は月の約半分で、月と太陽の並び方によって、新月や満月の頃に大潮、上弦や下弦の頃に小潮になります。多くの場所では1日に2回の満潮と干潮があり、時刻は毎日約50分ずつ遅れますが、潮の型は場所によって違います。

潮間帯では、生き物が乾燥への強さや種どうしの関係に応じて、数十cmほどの帯に分かれてすんでいます。アカテガニの仲間のように、潮のリズムに合わせて幼生を放す生き物もいます。