ジョーフィッシュは、なぜ口の中で卵を育てる?オスが守る巣穴の子育て

砂地の巣穴から顔だけを出しているジョーフィッシュ。その仲間には、オスが卵を口の中に入れて守る魚がいます。なぜ、わざわざ口の中で卵を育てるのでしょうか。

ジョーフィッシュと呼ばれるアゴアマダイ科の魚では、メスがオスの巣穴で卵を産み、オスが卵のかたまりを口の中で孵化まで守ります。ただし、この仲間の繁殖を含む暮らしぶりは、まだよく分かっていないことが多い段階です。分かっていることと、ほかの口内保育する魚から考えられていることを分けて、SOLBOY DIVE CENTERが取り上げます。

巣穴なしでは暮らせない魚

アゴアマダイ科の魚は、礁の近くの砂やがれ場の海底に、自分で巣穴を掘って暮らしています。大きな口で巣穴を掘り、小石やサンゴのかけらで補強して維持し、1つの巣穴に1尾がすみます。なわばり意識が強く、危険を感じると、すぐに尾から巣穴へ飛び込みます。巣穴なしでは暮らせない魚だと紹介されています。

なお、「アゴアマダイ」は Opistognathus hopkinsi という1種の和名でもあり、ダイビングでは容易に届かない深い場所にすむ種です。そのため、ここでは仲間全体をアゴアマダイ科として扱います。アゴアマダイ属は、世界で91種が知られています。

オスが口の中で卵を守る

アゴアマダイ科では、雌雄は別で、体の外で受精します。オスは手の込んだ求愛のディスプレイをし、一部の種は一夫一妻のペアをつくります。メスはオスの巣穴の中で卵を産み、受精したあと、オスが卵を口の中で孵化まで守ります。オスはときどき卵に水を通したり、掃除したりします。

一部の種では、オスの上あごの骨が長く、メスより口が大きいという、あごの雌雄差も知られています。

日本の海で観察された繁殖

2023年に、山口県でニラミアマダイ(Opistognathus iyonis)の繁殖を3年間にわたって海中で観察した研究が発表されました。この研究によると、産卵は日の出の約30分前、メスがオスの巣穴に入ってきたときに見られました。巣穴では平均48.2日のあいだに平均4.4個の卵のかたまりがあり、卵は孵化までに12日かかりました。孵化までの日数は、水温と関係していました。

卵が育つあいだ、オスは一部の時間、卵を口にくわえて世話をしていました。孵化は日没の約20分後に見られ、口の中で孵化させるときには、下あごで卵を外へ押し出しては戻す動きをくり返していました。

いつも口に入れているわけではない

カリブ海の Opistognathus aurifrons をバハマで観察した1973年の研究では、卵を口に入れたオスは、ふつう巣穴の入口の真上に浮かんでいました。卵を運んでいるあいだ、口はふつう開いていますが、ほぼ閉じることもできました。

飼育下の観察では、オスは卵を巣穴の中に置くことができ、そのあいだに餌を食べていました。この種のオスは、食べたいときに卵を巣穴に置くと紹介されています。ニラミアマダイの観察でも、卵を口に入れていたのは一部の時間でした。

なぜ口の中で育てるのか

口の中で育てる理由について、1973年の研究者は、孵化前の子は保育する親に守られると述べています。博物館の解説も、オスが卵を口の中で孵化まで保護する習性として紹介しています。ただ、2023年の研究が述べているように、アゴアマダイ科の繁殖を含む暮らしぶりは、まだよく分かっていません。

同じように口内保育をする別の魚、テンジクダイ科では、負担の面が研究されています。グレートバリアリーフで2種を調べた実験では、卵を口に入れたオスは、酸素の少ない水で酸素を取り込む力や、泳ぎ続ける力が有意に下がり、酸素が少なくなると卵を吐き出しました。オスのあごは食べることと卵を守ることの両方を担い、テンジクダイ科9種のオスは、同じ種のメスより頭やあごが長くなっていました。東京大学などの研究では、テンジクダイの仲間のオスは下あごの色を変えて、口の中の卵を目立たなくしていることも分かっています。

こうした結果は別の科の魚のもので、アゴアマダイ科にそのまま当てはまるかは分かりません。ただ、卵を口で守ることには、守る利点と同時に親の負担やリスクもあることを示しています。

オスが子を守る魚は、ほかにもいます。オスのおなかの袋で子を育てるタツノオトシゴの仕組みは、タツノオトシゴの記事でご紹介しています。

よくある質問

卵を口に入れているあいだ、オスは何も食べないのですか?

いつも口に入れているわけではありません。カリブ海の Opistognathus aurifrons の飼育下の観察では、オスは卵を巣穴に置いて餌を食べていました。山口県のニラミアマダイでも、卵を口にくわえていたのは一部の時間でした。

卵は何日くらいで孵化するのですか?

山口県のニラミアマダイの観察では、孵化までに12日かかりました。孵化までの日数は水温と関係していて、種や環境によって変わります。

「アゴアマダイ」と「ジョーフィッシュ」は同じですか?

ジョーフィッシュは、アゴアマダイ科の英名に由来する呼び名です。「アゴアマダイ」は、その中の1種(Opistognathus hopkinsi)の和名でもあります。

まとめ

アゴアマダイ科の魚は、自分で掘った巣穴に1尾ずつ暮らし、メスがオスの巣穴で産んだ卵を、オスが口の中で孵化まで守ります。山口県のニラミアマダイでは、産卵から孵化まで約12日、孵化のときにはオスが下あごで卵を押し出す様子も観察されました。

口の中で育てるのは、卵を守るためと説明されていますが、この仲間の繁殖にはまだ分からないことが多く残っています。同じく口内保育するテンジクダイ科の研究からは、卵を守る代わりに、親が呼吸や食事の面で負担を抱えることも見えてきています。