カイメンは植物?動物?水をこして食べる、口のない動物

岩に張り付いたまま動かず、形も色もさまざまなカイメン。見た目は植物のようにも見えますが、カイメンは植物なのでしょうか、動物なのでしょうか。

カイメン(海綿動物)は、多細胞の動物です。口はありませんが、体の小さな孔から水を取り込み、細胞の鞭毛の動きで水を流して、その中の粒子をこし取って食べます。精子をつくり、泳ぐ幼生が岩などに付いて育つことも、動物である根拠です。一方で、神経も筋肉も持たないなど、ほかの動物とは大きく違う体をしています。カイメンがどんな動物なのかを、骨片から系統の論争まで、SOLBOY DIVE CENTERがお届けします。

口はないのに、水をこして食べる

カリフォルニア大学古生物学博物館の解説によると、カイメンには口がなく、体の外壁にある小さな孔から水を取り込みます。体の壁の細胞が、体の中を通る水から栄養になるものをこし取り、水はより大きな開口から出ていきます。水の流れは一方向で、水路でつながった小部屋の表面に並ぶ鞭毛の動きで起こされています。

地中海のカイメンを調べた2019年の研究の説明では、水を引き込む力は、襟細胞室に集まった「襟細胞」の鞭毛の動きが生むわずかな負圧です。小さな粒子は襟細胞室で、大きな粒子は枝分かれした入水管でとらえられ、襟細胞室を通った水は出水管が合流した大孔から出ていきます。カイメンは大量の水をこし、浮かんでいる粒子を高い効率でとらえ、水に溶けた物質も処理しています。

水の通り道(水溝系)は、アスコン型・サイコン型・シライブ型・ロイコン型の4つの型に分けられ、2005年の日本の解説によると、大部分は最も複雑なロイコン型をとります。

神経も筋肉もない動物

カイメンは、神経系も筋肉も持たない動物です。淡水カイメン Spongilla lacustris の全身の細胞を一つずつ調べた2021年の研究では、18種類の細胞が見分けられました。この研究は、カイメンを私たちの遠い動物の親戚で、神経系を持たないものの、水をこして食べるための単純な体を持つ生き物と紹介しています。

大学博物館の解説は、カイメンの細胞はさまざまな体の働きをこなし、ほかの動物の細胞より互いに独立しているように見える、とも述べています。ただし、2005年の日本の解説は、カイメンは単純な生物などではなく、むしろ多様性に満ちていると強調しています。

体を支える骨片と海綿繊維

体を支えるつくりは、グループによって違います。石灰海綿綱は石灰質の骨片を持ち、主に浅い海にすみます。海綿動物の種数の約85%を占める尋常海綿綱(普通海綿綱)は、珪質の骨片や海綿繊維を持ち、浅い海から深海、淡水にまで分布します。尋常海綿の中には、骨片を持たず代わりに海綿繊維を発達させたものや、骨片も海綿繊維も持たないものも多く知られています。

現生の種の数は資料によって幅があり、数千種が知られています。

水中では、カイメンに触れたり、上に乗ったり、中をのぞき込んだりしないでください。海洋保護区マナーのページにも、観察のときの注意を載せています。

なぜ動物だと言えるのか

カイメンが動物の仲間であることは、子のつくり方からも分かります。2013年の日本の解説によると、同骨海綿綱(主に地中海産の種の研究)では、精子ができるときに、襟細胞がそのまま精子に変わります。成熟した精子は、ほかの多くの動物の精子と同じように、先体と呼ばれる部分を持っています。親の体から放出された幼生は、12〜48時間で岩などに付いて変態します。

歴史をさかのぼると、カイメンの位置づけには揺れがありました。2012年の日本の総説によると、襟で囲まれた鞭毛を持つ単細胞の生き物「襟鞭毛虫類」は、カイメンの襟細胞によく似ています。そのため19世紀には、カイメンは多細胞の動物より襟鞭毛虫類に近く、襟鞭毛虫類が集まった群体だと受け止められた時期がありました。その後、カイメンが多細胞の動物であることは、精子のでき方などから確かめられていきました。現在では、多細胞の動物と襟鞭毛虫類は、共通の祖先から分かれた姉妹群と考えられています。

大学博物館の解説によると、カイメンの化石は知られている最も古い動物の化石の一つで、先カンブリア時代の後期にさかのぼります。

最初に分かれた動物は、カイメン?

カイメンは、最も原始的な多細胞動物と言われることがあります。ただし、カイメンとクシクラゲ類のどちらが、ほかのすべての動物から最初に分かれたのかは、進化生物学の大きな問いで、答えは出ていません。

既存のゲノムのデータを解析し直した2015年の研究は、クシクラゲ類が最初に分かれたという説を支持せず、それは不適切な方法による見かけの結果だと結論しました。一方、染色体の上の遺伝子の並びを比べた2023年の研究は、クシクラゲ類がほかのすべての動物から最初に分かれたとする結果を示しています。

どのくらいの水をこしているのか

こす水の量は、種と体の大きさで大きく違います。スペインの地中海沿岸で尋常海綿5種を2年間野外で測った2019年の研究では、体の体積1cm³あたりのろ過量は、体内に微生物が多い3種で毎分2.0〜3.5mL、微生物が少ない2種で毎分8.5〜16.5mLでした。

体積や重さあたりのろ過量を決める主な要因は体の大きさで、意外にも、水温と餌の濃さの影響は小さいものでした。この数値は地中海の5種の値で、ほかのカイメンにそのまま当てはまるものではありません。

サンゴ礁の「スポンジループ」は仮説の段階

サンゴ礁でのカイメンの役割をめぐって、「スポンジループ」と呼ばれる仮説があります。カリブ海のサンゴ礁で調べた2013年の研究は、カイメンが水に溶けた有機物を取り込み、こし取る細胞をすばやく捨てて細かい有機物(デトリタス)にし、それを礁の動物が食べることで、溶けた有機物を動物が使える形にしていると示しました。サンゴの説明は、サンゴの記事で取り上げています。

2016年の研究では、紅海の暖かい海と北大西洋の冷たい海のカイメンを実験室で調べ、取り込んだサンゴの粘液の炭素の21〜40%、窒素の32〜39%が、その後デトリタスとして放出されました。著者らは、大きく異なる2つの礁の環境で見られたことから、礁の生態系に広く見られる特徴であることを示唆しています。

一方、カリブ海のベリーズの礁で調べた2024年の研究では、デトリタスを出すと報告されたカイメンの種が、礁の表面のデトリタスから一つも見つかりませんでした。礁のデトリタスへのカイメンの寄与はごくわずかで、仮説が当初考えたデトリタスの経路とは食い違う結果です。スポンジループが礁でどれだけ働いているかは、まだ確かめられている途中です。

よくある質問

カイメンに、神経や筋肉はあるのですか?

ありません。淡水カイメン Spongilla lacustris の全身の細胞を調べた2021年の研究でも、カイメンは神経系も筋肉も持たない動物として扱われ、18種類の細胞が見分けられました。

カイメンは、どのくらいの水をこすのですか?

種と体の大きさで大きく違います。地中海の尋常海綿5種の野外測定では、体積1cm³あたり毎分2.0〜3.5mLの種と、8.5〜16.5mLの種がありました。すべてのカイメンの値ではありません。

カイメンは、最初に生まれた動物なのですか?

分かっていません。カイメンとクシクラゲ類のどちらがほかのすべての動物から最初に分かれたかについては、2015年と2023年の研究で異なる結果が出ています。

まとめ

カイメンは植物ではなく、多細胞の動物です。口はありませんが、襟細胞の鞭毛で水を流して粒子をこし取って食べ、精子をつくり、泳ぐ幼生が岩などに付いて育ちます。神経も筋肉もなく、体は骨片や海綿繊維で支えられています。

こす水の量は種と大きさで違い、サンゴ礁で溶けた有機物をほかの動物へ渡す「スポンジループ」は、支持する実験と食い違う結果の両方がある仮説です。カイメンとクシクラゲ類のどちらが最初に分かれた動物なのかも、研究が続いています。