ウミヘビは魚?海で暮らすヘビの体の工夫と、水の飲み方

「ウミヘビ」という名前を聞くと、細長い魚を思い浮かべる人もいるかもしれません。ウミヘビは魚なのでしょうか、それともヘビなのでしょうか。

海で暮らすヘビのウミヘビは、魚ではなく爬虫類のヘビで、コブラ科の仲間です。ウミガメを別にすれば、海の環境に最もよく適応した爬虫類とされています。ただし「ウミヘビ」という名前は、ウナギ目ウミヘビ科の魚にも使われています。海で暮らすヘビには、縦に平たい尾や皮膚での呼吸など独特の体の工夫があり、研究された種では、海水ではなく雨水などの淡水を飲んでいることも分かってきました。ウミヘビの体の工夫を、SOLBOY DIVE CENTERが分類と研究の両面から解き明かします。

ウミヘビは、コブラ科のヘビ

2011年の総説によると、いま生きている爬虫類1万2,000種・亜種以上のうち、約100が海に戻り、その中にウミガメ7種と約80種・亜種のウミヘビが含まれます。ウミヘビは、インド洋と太平洋の熱帯・亜熱帯の海に分布しています。少数ながら、淡水にすむ種もいます。

日本爬虫両棲類学会の標準和名リスト(2026年7月2日版)では、ウミヘビの仲間はコブラ科のウミヘビ亜科に置かれ、日本産のエラブウミヘビ属としてアオマダラウミヘビ、エラブウミヘビ、ヒロオウミヘビの3種が載っています。海外の研究では、エラブウミヘビ属の仲間と、ウミヘビ属などの「真のウミヘビ」は、別々の陸のコブラ科のヘビから海へ進出したと考えられています。2023年の論文によると、エラブウミヘビ属の系統は約1,600万年前にアジアの陸のコブラ科から生じ、真のウミヘビの系統は、オーストラリアの陸のコブラ科から1,000万年に満たない比較的新しい時期に生じたと推定されています。

魚の「ウミヘビ科」とは別の生き物

同じ「ウミヘビ」という名前は、魚にも使われています。2020年の魚類の論文で報告されたフチナシウミヘビは、ウナギ目ウミヘビ科の魚で、英語では snake eel と呼ばれます。ウミヘビ科の魚は、世界の熱帯から温帯の海に分布し、川の感潮域から水深1,000mを超える深海までにすんでいます。名前は似ていても、爬虫類のウミヘビとはまったく別の動物です。

泳ぐための体の工夫

ウミヘビの最も典型的な特徴は、縦に平たい櫂のような尾で、陸や水辺のほかのヘビには見られません。ウミヘビ属などを中心にした2023年の論文は、ウミヘビが、水中で閉じる鼻孔と、舌の下の塩類腺を持つことを紹介しています。気管と右の肺の呼吸の組織は、体のほぼ全長にわたって伸びています。

陸に上がる度合いは種によって違います。台湾の蘭嶼でエラブウミヘビ属の3種を調べた研究では、より陸上性の種ほど皮膚から水分が蒸発しにくく、エラブウミヘビは皮膚からの水分の損失が最も大きく陸上性が最も低い一方、アオマダラウミヘビはその逆で、ヒロオウミヘビは中間でした。エラブウミヘビは、産卵のとき以外はほぼ完全に水中で暮らすと考えられています。

皮膚からも酸素を取り入れる

ウミヘビは肺で空気を呼吸しますが、皮膚からも酸素を取り入れています。その割合は条件によって違います。空気に出られる浅い実験水槽では、全体の酸素の取り込みの最大33%を皮膚から得ていたという報告があり、ウミヘビ属の2種を調べた研究では、皮膚呼吸は全体の酸素消費の最大23%でした。この2種では、水温が上がると浮上の回数と酸素の消費量が増え、潜る時間が短くなりました。

海の底で長く休む一部の真のウミヘビは、安静時に必要な酸素をすべて皮膚から得られる可能性が高いとも考えられていますが、これは推測で、測られた値ではありません。外洋で暮らすセグロウミヘビの皮膚は、ほかのヘビで知られているものと違い、その特徴は皮膚呼吸に必要な水や気体の通りやすさと関係している可能性があります。

海水ではなく、雨水を飲む

海の爬虫類は、余分な塩を塩類腺から出せるので、淡水を飲まなくても体の水分の釣り合いを保てると、長いあいだ考えられてきました。ところが2008年の研究で、エラブウミヘビ属の3種が、海の環境で実際に脱水することが報告されました。脱水させたヘビは海水を飲もうとせず、淡水か、ごく薄い汽水(海水の10〜30%)を飲みました。台湾の蘭嶼での6年間の観察では、雨の多い年のエラブウミヘビ属の観察数は、乾いた年の3倍近くになっていました。

有鱗目の爬虫類で唯一の外洋性の種とされるセグロウミヘビも、海水を飲まず、大雨のときに海面にできる淡水の層(淡水レンズ)から飲んで水分を取り戻すと報告されています。コスタリカ北西部の湾で、6か月の乾季の終わりに捕まえた個体のうち、実験室で自分から淡水を飲んだ割合は、雨が降り始める前後の8日間で80%から13%に下がりました。研究者らは、雨季の最初の雨でできた淡水レンズから飲んでいたためと解釈しています。

よくある質問

ウミヘビは、魚の仲間ですか?

海で暮らすヘビのウミヘビは、魚ではなくコブラ科の爬虫類です。ただし、ウナギ目ウミヘビ科の魚も「ウミヘビ」と呼ばれるので、名前だけでは区別できません。

ウミヘビは、海水を飲んで暮らしているのですか?

研究されたエラブウミヘビ属の3種とセグロウミヘビは、海水を飲まず、淡水やごく薄い汽水を飲んでいました。すべてのウミヘビで確かめられたわけではありません。

ウミヘビは、ずっと水中で暮らすのですか?

種によって違います。エラブウミヘビ属では、アオマダラウミヘビが最も陸上性で、エラブウミヘビは産卵のとき以外ほぼ水中で暮らすと考えられています。

まとめ

海で暮らすウミヘビは、魚ではなくコブラ科の爬虫類で、縦に平たい尾、水中で閉じる鼻孔、皮膚での呼吸など、海の暮らしに合った体を持っています。同じ名前の魚、ウナギ目ウミヘビ科とは別の動物です。

研究された種では、海水ではなく雨水などの淡水を飲んで水分を保っていることも分かりました。陸に上がる度合いや呼吸の仕方は種によって違います。