SOLBOY Learning 知識の補足(水の性質)|全20レッスンの一覧
マスク越しに見た魚が、思ったより近くにいるように見えた。ボートのエンジン音ははっきり聞こえるのに、どちらから来ているのか分からない。水の中では、物の見え方や音の聞こえ方が、陸の上とは少し変わります。
この記事では、光と音が水の中でどう進むのかから、その理由を説明します。水中で色が変わって見える理由は、「水中では色がどう見える?」で扱っています。
まず何が起きるの?
- マスク越しに見ると、物が実際より大きく、近くにあるように見える
- 音ははっきり聞こえても、どちらの方向から来ているのかが分かりにくい
どちらも、目や耳がおかしくなったわけではありません。光と音が、水の中では空気の中と違う進み方をすることから説明できます。
30秒で理解
- マスクが顔と水のあいだに空気の空間をつくるから、目がピントを合わせられる。
- 光は水からマスクの中の空気へ進むときに曲がる。そのため、物は実際より大きく、近くに見える。
- 音は水の中のほうがずっと速く進む。聞こえていても、左右の耳に届く時間の差が小さくなり、方向が分かりにくい。
なぜそうなる?
目の前に空気があるから、ピントが合う
人の目は、空気の中で物を見るようにできています。顔を直接水につけると、目はうまくピントを合わせられず、景色はぼやけて見えます。
マスクは、顔と水のあいだに空気の空間をつくる道具です。DAN(ダイバーの安全を扱う団体)の器材の解説でも、マスクのいちばん基本の役割は、この空気の空間によって目が正しくピントを合わせられるようにすることだと説明されています。
光が曲がると、大きく近く見える
水の中を進んできた光は、マスクのガラスを通って中の空気へ入るところで向きが変わります。光が性質の違うもののさかい目で曲がるこの現象のため、マスク越しに見る物は、実際より大きく、近くにあるように見えます。PADI(ダイビングの指導団体)の解説でも、マスクの中の空気と水のあいだで光が曲がることで、物が大きく、近くに見えると説明されています。
見かけの位置と、実際の位置
目は、届いた光から「物がどこにあるか」を判断します。マスク越しでは、光が途中で曲がっているため、目が受け取る像は実際の物より近く、大きくなります。
そのため、目の前の魚に手が届きそうに見えても、実際にはもう少し離れていることがあります。見かけの位置と実際の位置がずれている、と考えると分かりやすくなります。
音は、水の中のほうがずっと速く進む
音は、空気の中より水の中のほうが速く伝わります。海水の中では、およそ秒速1,500メートルと、空気の中の4倍以上の速さです。
聞こえることと、方向が分かることは違う
音が「聞こえる」ことと、音が「どちらから来たか分かる」ことは、別の働きです。陸の上では、音が左右の耳に届くわずかな時間の差などを手がかりに、方向を判断しています。
水の中では音が速く伝わるので、この時間の差がとても小さくなります。そのため、音ははっきり聞こえても、方向の手がかりが少なくなります。南デンマーク大学の研究の紹介では、空気中では数度の違いで方向を判断できる人も、水中では最大で90度ほどずれることがあると説明されています。
この言葉はどういう意味?
ここまで出てきたものに、名前をつけておきます。
- 光が、水と空気のように性質の違うもののさかい目で曲がることを「屈折(くっせつ)」と呼びます。
- 音が伝わる速さのことを「音速(おんそく)」と呼びます。音速は、空気の中より水の中のほうが速くなります。
名前を覚えることが目的ではありません。「光が曲がるから見かけの位置がずれる」「音が速いから方向の手がかりが減る」という流れがわかれば十分です。
実際の海ではどう感じる?
初めてのうちは、手を伸ばせば届きそうに見えた魚やサンゴが、実際には少し離れていた、と感じることがあります。見かけが近いぶん、実際の距離は見た目より少し遠い、と知っておくと、そのずれに驚かずにすみます。
音については、ボートのエンジン音や、ほかのダイバーが出す音がはっきり聞こえても、どこから来ているのかは分かりにくいことがあります。音の方向は、目で見て確かめると分かります。
講習で一緒に確かめたいこと
- マスク越しに見た距離と、実際の距離がどのくらい違って感じるか
- 水中で聞こえた音が、どちらから来たように感じたか
想定シナリオ:届きそうに見えたのに
【想定シナリオ】(実際の出来事ではなく、イメージをつかむための架空の例です)
岩の上にいる小さな魚を見ようとして近づいた。すぐ目の前にいるように見えたので、そこで止まったつもりが、実際にはまだ少し距離があった。そのとき遠くからボートの音もはっきり聞こえてきたが、どちらから来ているのかは分からなかった、という場面。
この場面で起きていたのは、二つの別々のことです。魚までの距離は、マスクの中で光が曲がったために、見かけの位置が実際より近くなっていました。ボートの音は、水の中で速く伝わったために、左右の耳に届く時間の差が小さく、聞こえていても方向の手がかりが少なかったのです。
覚えて帰る3ポイント
- マスクの中の空気の空間があるから、水中でも目がピントを合わせられる。
- 光がマスクの中の空気との境目で曲がるため、物は実際より大きく、近くに見える。見かけの位置と実際の位置はずれている。
- 水中の音は空気の中の4倍以上速く進む。聞こえることと、方向が分かることは別で、水中では方向の手がかりが少なくなる。
確認クイズ
Q1. マスク越しに見た魚が、実際より近くに見えるのはなぜ?
ア. 水の中では魚が大きくなるから イ. 光が水からマスクの中の空気へ進むときに曲がるから ウ. マスクのガラスが厚いから
Q2. 水中でボートの音がはっきり聞こえるのに、方向が分からないのはなぜ?
ア. 音は水の中で速く伝わり、左右の耳に届く時間の差が小さくなるから イ. 水の中では音が小さくなるから ウ. マスクが耳をふさいでいるから
答え:Q1はイ。光が水と空気のさかい目で曲がるため、目が受け取る像は実際より近く、大きくなります。
Q2はア。聞こえることと方向が分かることは別の働きで、水中では方向の手がかりになる左右の時間の差が小さくなります。
次に理解するとよいこと
この記事では、水の中で見え方と聞こえ方が変わる理由を見てきました。
- 水中で色が変わって見える理由は、「水中では色がどう見える?」で扱っています。
- マスクの中の空気が深さで押される理由は、レッスン「潜るとマスクが顔に押しつけられるのはなぜ?」で扱っています。
- 水中で使う基本の合図は、「ダイビングのハンドサイン入門」で紹介しています。
- サンゴや生き物との距離の考え方は、「セブ島ダイビングの海洋保護区マナー」でも扱っています。