魚は体の横で水の動きを感じる?側線と感丘の仕組み

多くの魚の体の横には、頭から尾にかけて1本の線が見えます。この線は「側線」と呼ばれ、魚が水の動きを感じ取る感覚に関わっています。魚は、体の横で水の動きを感じているのでしょうか。

側線は、弱い水の動きや圧力の差を感じ取る感覚の仕組みです。「感丘」と呼ばれる小さな感覚器の中で、毛を持つ細胞が水の動きを電気の信号に変えます。名前は胴の横の線に由来しますが、感丘は胴だけでなく頭や尾にも広く分布しています。獲物を見つける、捕食者から逃げる、群れで泳ぐといった行動に関わり、その使われ方は種や条件によって違います。側線の仕組みと働きについて、SOLBOY DIVE CENTERが解説します。

側線は「離れたところに触れる」感覚

総説によると、側線は、魚が弱い水の動きと圧力の差(勾配)を感じ取ることのできる感覚の仕組みです。生き物が起こす水の動きと、生き物以外が起こす水の動きの両方を感じ取ります。研究者の間では、「離れたところに触れる」感覚と表現されることもあります。

側線という名前は、多くの魚の胴の左右に見える線に由来します。しかし感覚器は線の上だけにあるわけではなく、頭など他の場所にもあることが多く、多くの魚では頭・胴・尾びれに数百個の感覚器が散らばっています。体全体で最大数千個に達することもあります。北里大学の研究者は、側線器官をすべての魚類と水にすむ両生類が持つ感覚器と解説しています。

感丘の中で、毛が水の動きを信号に変える

側線の最小の単位は「感丘(ニューロマスト)」です。感丘の中央には毛を持つ感覚細胞(有毛細胞)があり、まわりを支持細胞が囲んでいます。有毛細胞の毛の束は、ドーム形のゼラチン状の「クプラ」に埋まっています。

周りの水が動いてクプラが動くと、有毛細胞の毛が傾き、細胞の中へ陽イオンが流れ込んで電気の信号が生まれます。感丘の中には、向きが反対の2種類の有毛細胞が向き合っていて、それぞれ反対方向の水の流れを捉えています。この仕組みは、哺乳類の耳の奥で音を感じる器官(コルチ器)と同じで、側線器官は哺乳類の聴覚器と同じ起源を持つ器官と説明されています。

皮膚の表面の感丘と、管の中の感丘

感丘には2種類あります。皮膚の表面から水中へ突き出している「表在感丘」と、皮膚のすぐ下の液体で満たされた管の中にある「管器感丘」です。管は小さな孔で外とつながっています。

表在感丘は体のすぐ近くの流れに反応し、流れの向きと速さを感じる「速度の検出器」と考えられます。管器感丘は、隣り合う孔の間の圧力の差で生じる管の中の流れに反応し、「圧力の差の検出器」として働きます。1987年の日本の解説では、側線が水中の音にもよく反応するため、感じているのが流れなのか圧力なのかが議論されていたことが紹介されています。

側線が反応する刺激までの距離は、体長の1〜2倍程度とされています。側線の構造は種の間でも種の中でも大きく違い、その違いがどんな環境への適応なのかは、まだ議論が続いています。

獲物を探し、捕食者から逃げる

側線は、獲物を見つける、流れに向かって姿勢を保つ、捕食者から逃げるなど、いろいろな行動に関わっています。とくに、暗い水や濁った水など、目が使いにくい状況で獲物を見つけるのに重要になります。

ゼブラフィッシュの仔魚の実験では、目からの手がかりがないときでも、側線で捕食者が襲ってくるのを感じ取れることが示されました。体の後ろ側の側線を薬で壊すと、吸い込む流れから逃げる能力が大きく下がりました。

暗闇で側線を活かす魚もいます。メキシコの洞窟にすむ目の見えない Astyanax mexicanus は、暗闇で水の乱れの源へ向かって泳ぐ行動を示し、10〜50Hz、ピークは35Hzの低い振動に反応しました。この洞窟の型は、地表にすむ目の見える型より表在感丘が数倍多く、クプラの長さも約300µmと、地表の型の約42µmより長くなっています。

群れで泳ぐときの側線の役割は、種によって違う

側線の入力を断つと、正常に群れで泳ぐ能力をはじめ、いくつもの行動が変わったり失われたりすることが知られています。ただし、群れでどれほど側線に頼るかは、種と条件によって違います。

Devario aequipinnatus という小型の魚を使った実験では、側線を使えなくしても群れで泳げましたが、暗闇では群れになりませんでした。暗闇でも、近くの魚には明るいときと同じように引き寄せられ、側線で近くの仲間を感じ取れていましたが、離れた魚には引き寄せられませんでした。側線の有毛細胞を薬で壊した魚は、4〜8週間後には再び正常に群れで泳げるようになりました。

一方、ゼブラフィッシュ5匹の群れを調べた実験では、明るくても暗くても、正常な群れには視覚と側線の両方が必要で、どちらか一方だけでは足りませんでした。また、いつも群れで暮らすのに、側線の管を持たない魚としてニシンの仲間が挙げられています。群れで泳ぐ仕組みについては、小魚が大きな群れで泳ぐ理由のページで取り上げています。

仔魚のころから、少しずつ増えていく

側線は成長とともにできあがっていきます。南西海区水産研究所の研究者らがキジハタの稚魚を育てて観察した研究では、ふ化した直後の仔魚の頭の表皮に表在感丘があり、成長とともに頭と胴で数が増えていきました。35日齢の稚魚では、頭の管ができるのと同じころに、群れをつくる行動が見られるようになりました。時期が一致したという観察で、管ができたことが群れの原因だと確かめたものではありません。

よくある質問

側線は、体の横の線の部分だけにあるのですか?

いいえ。名前は胴の横の線に由来しますが、感覚器の感丘は頭・胴・尾びれに広く分布し、多くの魚では数百個、最大で数千個あります。

側線は、どれくらい遠くの動きまで感じ取れるのですか?

側線が反応する刺激までの距離は、体長の1〜2倍程度とされています。遠くの動きを感じる仕組みというより、体の近くの水の動きを感じる感覚です。

魚は側線だけで群れを保っているのですか?

種と条件によって違います。側線がなくても明るければ群れで泳げた魚もいれば、視覚と側線の両方が必要だった魚もいます。

まとめ

側線は、魚が弱い水の動きや圧力の差を感じ取る感覚の仕組みです。感丘の有毛細胞が、クプラの動きを電気の信号に変え、皮膚の表面の感丘は流れの速さを、管の中の感丘は圧力の差を捉えます。

感丘は胴の横の線だけでなく、頭や尾にも散らばっています。獲物探しや逃避、群れでの泳ぎに関わりますが、どの行動にどれほど頼るかは、魚の種類や明るさなどの条件によって違います。