ヒメジのあごにある「ひげ」は何に使う?砂の中の餌を探る感覚器

砂地の上を、あごの下の2本の「ひげ」で海底をなでるように探りながら泳ぐ魚がいます。ヒメジの仲間です。このひげは、何に使われているのでしょうか。

ヒメジの仲間のひげは、海底の表面やそのすぐ下に隠れた餌を探り当てるための感覚器官です。ひげには味を感じる細胞(味蕾)がびっしり並び、触れた刺激にも反応します。餌を探すときはひげを下ろして底に触れさせ、泳ぐときは後ろへたたんでいます。ひげの使い方や、仲間と協力する狩りの研究まで、SOLBOY DIVE CENTERがまとめて紹介します。

「ヒメジ」という和名は1種(Upeneus japonicus)を指すこともあるため、ここではヒメジ科の魚をまとめて「ヒメジの仲間」と書きます。

1対のひげを、使うときだけ下ろす

ヒメジ科の成魚には、どの種にもよく発達した1対のひげがあります。2本のひげは、それぞれ別々に動かせます。

餌を食べていないとき、ひげはあごの下とえらぶたの縁の下へ、後ろ向きに折りたたまれています。餌を探すときはひげを下ろし、体の下の海底に触れさせて、底の表面やそのすぐ下にいる餌を探り当てます。ひげを使ってこうした餌の探し方をするのは、ある程度成長した個体と成魚です。

ひげには、大きな味蕾がびっしり

ヒメジの仲間のひげの表面には、味蕾が均等に、高い密度で並んでいます。日本の研究者の総説によると、ヒメジの仲間のひげの味蕾はとくに大きく、これまで見た魚の中で最大のもので、高さ80〜100 μm、幅50〜70 μmほどもあります。

2002年の研究では、ひげ1 mmあたり約15本の輪のような神経の束が入り、それぞれが2つの味蕾の集まり(各14個)につながっていました。実験で調べると、ひげ全体が、脳の味を処理する部分の中に、ひげの部位の並びを保ったまま地図のように表されていました。

魚の味蕾は、味(化学的な刺激)と触れること(機械的な刺激)の両方に応じる器官と考えられています。総説の著者は、ヒメジの仲間のひげの味覚のしくみは、砂の中に埋もれた餌の生き物がどの深さにいるかを正確に探るために働いていると考えています。「ひげで味見をする」だけでなく、触って確かめる感覚でもあるのです。

掘る、差し込む、かき回す

ひげの使い方は種によって違います。Upeneus tragula などは、ひげを掘る道具として使います。ハワイの Parupeneus cyclostomus は、硬い海底の穴や割れ目にひげを差し込み、中の小さな動物を追い出すと報告されています。

ヒメジの仲間は、獲物を探して砂やサンゴのかけらを掃いたり、掘ったり、すくったりし、海底の柔らかい堆積物を巻き上げます。沖縄のサンゴ礁で調べた2025年の研究では、4種が礁の内側の砂の多い場所に多く、餌場として砂を好んで使っていました。一方、Parupeneus multifasciatus は、岩やサンゴのかけらの上も好んで餌場にしていました。どんな海底で餌を探すかも、種によって違います。

南シナ海北部で近い2種を比べた研究では、Upeneus tragula のほうが体が流線形で目が大きく、ひげも長いという違いがありました。

ほかの魚が、ヒメジについて回る

種によっては、海底をかき回して餌を探すヒメジの仲間の後を、ほかの魚がついて回ることがあります。ある種の後を別の種が積極的について回り、餌や情報、身の安全を得る関係は「随伴」と呼ばれます。熱帯の西大西洋の Pseudupeneus maculatus は、こうした複数の種の群れの中心となり、ほかの魚(英語で jacks と呼ばれる魚など)を引き寄せると記載されています。

ヒメジの仲間どうしや、ほかの生き物と一緒に狩りをすることもあります。紅海の Parupeneus cyclostomus の2尾組に、多くの入口のある人工の隠れ家へ逃げる模型の獲物を見せた実験では、協調した狩りが、それぞれが自分の利益のために下す単純な判断から生じうることが示唆されました。紅海でタコと魚が一緒に狩りをする群れを調べた研究では、ヒメジの仲間などの魚がどこを探すかを決めて探索を先導し、タコが群れが動くかどうかを決めていました。

砂地でヒメジを見かけたら

ひげを下ろして海底を探るヒメジの仲間を見かけたら、近づきすぎず、ひげの動きを少し離れた位置から眺めてみてください。サンゴ礁の砂ができる仕組みについては、ブダイと砂の記事でご紹介しています。

よくある質問

ヒメジのひげは、味を感じるのですか?

はい。ひげには大きな味蕾がびっしり並んでいます。魚の味蕾は味だけでなく触れる刺激にも応じるため、ひげは砂の中の餌を探る、味と触覚の両方の感覚器官と考えられています。

ひげは、いつも下ろしているのですか?

いいえ。餌を食べていないときは、あごの下とえらぶたの縁の下へ後ろ向きにたたんでいます。餌を探すときに下ろして、海底に触れさせます。

どのヒメジも、同じようにひげを使うのですか?

種によって違います。ひげで掘る種、岩の穴や割れ目に差し込む種がいて、砂地を好む種や岩場も使う種など、餌を探す場所も違います。

まとめ

ヒメジの仲間のあごの「ひげ」は、海底の表面やその下に隠れた餌を探り当てるための感覚器官です。ふだんはたたんでおき、餌を探すときに下ろして底に触れさせます。ひげには大きな味蕾がびっしり並び、味と触覚の両方で、砂の中の餌の位置を探っていると考えられています。

掘る、差し込むといった使い方や、好む海底は種によって違います。種によっては、ほかの魚がついて回ったり、ほかの生き物と一緒に狩りをしたりすることもあります。