海草と海藻は何が違う?藻場が海の生き物を支える仕組み

浅い海の砂地に、草原のように細長い葉が広がっている場所があります。岩には、ひらひらとした海藻が生えていることもあります。どちらも「かいそう」と読めますが、「海草」と「海藻」は別のものだと知っていましたか?

結論から言うと、海草は花を咲かせて種子をつくる「植物」、海藻は胞子で増える「藻類」です。そして、どちらかが茂っている場所をまとめて「藻場(もば)」と呼びます。セブ・マクタンの海でダイバーをご案内しているSOLBOY DIVE CENTERが、両者の違いと藻場の働き、そしてマクタンのすぐそばにあるオランゴ島の干潟と海草藻場についてお伝えします。

海草と海藻は何が違う?

水産庁は、海草を「海中で花を咲かせ種子によって繁殖し、海中で一生を過ごすアマモなどの海産種子植物」と説明しています。一方、海藻は海で暮らす藻類で、胞子によって増えます。区別するために、海草を「うみくさ」と読むこともあります。

大きな違いは根にあります。海草は本物の根と葉を持ち、地下茎と根で砂の中に体を固定しながら、栄養も吸収しています。海藻にも根のように見える部分がありますが、水産庁によると、海藻の「根」は栄養を吸収するためではなく、岩にくっつくためのものです。米国海洋大気庁(NOAA)も、大型の海藻であるケルプ(コンブの仲間)を、植物ではなく大型の褐藻と説明しています。

  • なかま:海草は花を咲かせる植物(海産種子植物)。海藻は藻類(緑藻・褐藻・紅藻)。
  • 増え方:海草は花を咲かせ、種子で増える。海藻は胞子で増える。
  • 根:海草は本物の根で体を固定し、栄養も吸収する。海藻の根のような部分は、岩などにくっつくためのもの。
  • 主な生える場所:海草は砂や泥の海底が中心(岩場に生える種類もある)。海藻は岩などの硬い場所にくっついて生える。
  • 例:海草はアマモ、ウミショウブ、リュウキュウスガモ。海藻はコンブ、ワカメ、ホンダワラの仲間。

私たちが食べるワカメやコンブは、海藻の仲間です。一方、ウミショウブやリュウキュウスガモは暖かい海の海草で、フィリピンでも記録されています。

藻場とは?海の生き物の「ゆりかご」

藻場は、沿岸の浅い海で海藻や海草が茂っている場所、またはその群落を指す言葉です。海草が茂る「アマモ場」、ホンダワラの仲間の海藻が茂る「ガラモ場」など、生えている種類によって呼び名が変わります。

水産庁によると、藻場は多くの生き物の暮らしを支え、魚の産卵や稚魚が育つ場所になるほか、水中の有機物を分解し、栄養塩や二酸化炭素を吸収して酸素を供給するなど、海水をきれいにする大きな役割を果たしています。茂みが稚魚の隠れ場所や餌場になることから、環境省は藻場を「海のゆりかご」とも表現しています。

海草の藻場にも、同じような働きがあります。国連環境計画(UNEP)の2020年の報告書を紹介した記事によると、海草藻場は、世界の主要な漁業の20%以上にとって稚魚が育つ場所になっていて、ジュゴンやタツノオトシゴ、ウミガメのすみかでもあります。NOAAは、海草の密な葉が水の流れを弱めて砂泥を捕らえ、海底を安定させて、沿岸の水を澄んだ状態に保つのに役立つと説明しています。

ウミガメやジュゴンの食卓にもなる

海草藻場は、大きな生き物の食事の場でもあります。NOAAによると、アオウミガメはウミガメの中で唯一の草食性で、主に藻類と海草を食べます。ただし、無脊椎動物などを食べることもあり、海草だけを食べているわけではありません。

ジュゴンは主に海草を食べる生き物で、フィリピンの海草についての総説では、ジュゴンの食べ物の約95%が海草と紹介されています。

セブの海でのウミガメとの出会い方や、観察するときのマナーはセブ島ダイビングでウミガメに会える?で紹介しています。

海草藻場は炭素をためる海の草原

海草藻場は、地球温暖化の原因になる二酸化炭素とも関わっています。UNEPの2020年の報告書を紹介した記事によると、海草藻場は海底のわずか0.1%を占めるだけですが、毎年海底の堆積物に埋もれる炭素の10%以上を担っていると推定されています。水産庁も、光合成で二酸化炭素を吸収する藻場を「ブルーカーボン生態系」の一つに位置づけています。

一方で、海草藻場は世界中で減っています。国連によると、19世紀末以降に世界の海草の面積の約30%が失われ、世界の海草72種のうち少なくとも22種が減少しています。

フィリピンも例外ではありません。2013年に発表された総説では、フィリピンの529地点の調査で18種の海草が見つかっています。一方、フィリピン政府の生物多様性戦略(2015〜2028年)は、過去50年で国内の海草藻場の30〜50%が、産業開発や港の建設、レクリエーションによって失われたとしています。

マクタンのすぐ隣、オランゴ島の干潟と海草藻場

マクタン島の東の沖には、オランゴ島があります。ラプラプ市のオランゴ島野生生物保護区は、1994年7月1日にラムサール条約の登録湿地になった、フィリピンで最初のラムサール条約湿地です。

登録時の資料(1994年)によると、この登録地はおよそ5,800haで、そのうち約2,900haが潮の満ち引きで現れる干潟です。干潟の下のほうや保護区の境界の浅い海には海草藻場が広がり、マングローブもあります。フィリピン環境天然資源省の保護区情報でも、サンゴ礁、干潟、マングローブ林、岩の海岸、海草藻場、砂浜がある場所として紹介されています。

マクタン周辺の海にあるのは、サンゴ礁だけではありません。海草藻場や干潟、マングローブも、この地域の海の環境の一部です。

海で海草や海藻を見かけたら

浅い海で海草や海藻を見かけても、引き抜いたり持ち帰ったりせず、そのままにしておきましょう。海草藻場は、稚魚や小さな生き物の隠れ場所でもあります。ウミガメが食事をしているところに出会ったら、近づきすぎず、進路をふさがないように少し離れて眺めてください。

海の生き物や環境を守るための基本的なマナーは、セブ島ダイビングの海洋保護区マナーにまとめています。

SOLBOYのダイビングで、海の環境にも目を向けて

SOLBOY DIVE CENTERは、イワシの大群に出会えることがあるハウスリーフのコンティキや、海洋保護区のヒルトゥガン島、サンゴ礁の広がるナルスアン島などのポイントをご案内しています。コンティキでは、ウミガメに出会えることもあります。出会える生き物はその日の海によって変わりますが、生き物が何を食べ、どこで育つのかを知っておくと、水中で目に入る景色の意味が変わってきます。

ポイントごとの見どころはセブ島のダイビングで見られる魚や海の生き物で紹介しています。ダイビングへの参加や行きたいポイントのご相談は、LINEからどうぞ。

よくある質問

海草と海藻はどうやって見分けますか?

海草は花を咲かせて種子をつくる植物で、本物の根で砂や泥の海底に体を固定しています。海藻は胞子で増える藻類で、根のように見える部分で岩などにくっついています。砂地に細長い葉が草原のように広がっていれば海草、岩に付いていれば海藻のことが多いですが、岩場に生える海草もあります。

ワカメやコンブは海草ですか?

いいえ、ワカメやコンブは海藻(藻類)です。食卓でよく見る「海そう」の多くは海藻で、海草は花を咲かせる植物の仲間です。

アオウミガメは海草だけを食べているのですか?

NOAAによると、アオウミガメは主に藻類と海草を食べますが、無脊椎動物などを食べることもあります。海草だけを食べているわけではありません。

藻場はなぜ大切なのですか?

藻場は魚の産卵や稚魚が育つ場所になり、海水をきれいにする働きもあります。海草藻場は海底を安定させ、炭素を海底にためる役割も担っています。

まとめ

海草は花を咲かせて種子をつくる植物、海藻は胞子で増える藻類です。どちらかが茂る浅い海の場所が藻場で、稚魚が育つ「海のゆりかご」として、またウミガメやジュゴンの食事の場として、海の生き物を支えています。海草藻場は炭素をためる働きも持つ一方で、世界でもフィリピンでも減ってきています。

マクタンのすぐ隣のオランゴ島には、海草藻場や干潟、マングローブのある湿地が広がっています。海に入ったときは、サンゴや魚だけでなく、それを支える海の草原にも目を向けてみてください。