SOLBOY Learning 知識の補足(水の性質と器材)|全20レッスンの一覧
あたたかい海でも、潜っているうちに、少しずつ冷たさを感じてくることがあります。陸の上なら過ごしやすい温度なのに、水の中ではなぜ冷えやすいのでしょうか? 体の熱はどこへ行き、ウェットスーツは何をしているのでしょうか?
この記事では、熱がどこからどこへ移るのかを手がかりに、その理由を説明します。
まず何が起きるの?
水に入ってしばらくすると、こんな変化を感じることがあります。
- はじめは気持ちよかった水が、だんだん冷たく感じてくる
- 同じ海でも、ウェットスーツを着ていると冷たさを感じにくい
- 体に合わないスーツだと、動くたびにひやっとする
30秒で理解
- 熱は、温かい体から、体温より低い水へ移っていく。水は空気よりも熱を伝えやすい。
- 多くのウェットスーツでは、保温の中心は小さな気泡を閉じ込めた発泡素材。気泡が熱を伝えにくくし、厚いほど熱は逃げにくい。
- スーツの中の水が入れ替わると、体の熱で温まった水が持ち去られる。深く潜ると気泡が押しつぶされ、保温と浮く力が下がる。
なぜそうなる?
熱は、温かい体から冷たい水へ移る
熱は、温かいものから冷たいものへ移ります。ダイビングで熱を生み出しているのは体で、まわりの水が体温より低ければ、体の熱は水へ移り続けます。
水は空気よりも熱を伝えやすい性質があります。そのため、同じ温度でも、空気の中にいるときより水の中にいるときのほうが、体の熱は速く水へ移っていきます。陸の上では過ごしやすい温度でも、水の中では冷えを感じやすいのはこのためです。
保温の中心は、気泡を閉じ込めた発泡素材
多くのウェットスーツの素材は、ゴムの中に小さな気泡をたくさん閉じ込めた発泡素材です。SCUBAPRO(ダイビング器材メーカー)の取扱説明でも、ダイビング用のネオプレン製品は、気泡が一つずつ閉じた発泡素材で保温していると説明されています。
気泡の中の気体は熱を伝えにくいので、体と水のあいだにこの素材があると、熱が水へ移る速さがゆるやかになります。素材が厚いほど、熱が通り抜ける道のりが長くなり、熱は逃げにくくなります。
中の水が入れ替わると、熱が持ち去られる
ウェットスーツは「ウェット」という名前のとおり、中に水が入ります。入った水は、体の熱で温められます。水そのものが体を温めているのではなく、熱を生み出しているのは体です。
スーツと体のあいだの水が何度も入れ替わると、体の熱で温まった水が外へ出て、また冷たい水が入ってきます。そのたびに、体の熱が持ち去られます。体に合ったスーツのほうが冷えにくいのは、水の入れ替わりが少ないからです。
深く潜ると、素材が押しつぶされる
深く潜るほど、まわりから押す力(圧力)が強くなり、素材の中の気泡も押しつぶされて小さくなります。SCUBAPROの取扱説明では、気泡が押しつぶされると、スーツの浮く力が小さくなり、熱を伝えにくくする力も弱まると説明されています。
深さによって空気の大きさが変わる仕組みは、基礎の20レッスンの一つ「水の中では、空気の大きさがどうして変わるの?」で扱っています。
水温は、場所や時期で層になることがある
海では、場所や時期によって、ある深さを境に水温が急に変わる層ができることがあります。潜っていく途中で、見えない境目を通ったように、急にひんやり感じることがあります。深いほど必ず冷たい、というわけではありません。
この言葉はどういう意味?
ここまで出てきたものに、名前をつけておきます。
- 多くのウェットスーツで使われる「ネオプレン」は、気泡を閉じ込めた発泡ゴムです。
- ある深さを境に水温が急に変わる層を「水温躍層(すいおんやくそう)」と呼びます。
名前を覚えることが目的ではありません。「熱は体から水へ移る。気泡の素材がその移り方をゆるやかにする。水の入れ替わりや深さの圧力で、その働きは変わる」という流れがわかれば十分です。
実際の海ではどう感じる?
冷たさの感じ方には個人差があり、同じ人でも日によって違うことがあります。同じ海、同じスーツでも、寒く感じる人とそうでない人がいます。寒さを感じたときは、一緒に潜っている相手やガイドに伝えてかまいません。
体が冷えると、呼吸のリズムが変わって空気の使い方が増えることもあります。その仕組みは、レッスン「同じように潜っていても、人によってタンクの空気の減り方が違うのはなぜ?」で扱っています。
講習で一緒に確かめたいこと
- 厚さの違うスーツを着たときに、冷たさの感じ方がどう違うか
- スーツが体に合っているとき・合っていないときで、水の入り方がどう違うか
想定シナリオ:動くたびにひやっとしたとき
【想定シナリオ】(実際の出来事ではなく、イメージをつかむための架空の例です)
いつもより大きめのウェットスーツを着て潜った。泳ぎ始めると、首元や手首から冷たい水が入ってくるような感じがして、前に潜ったときより早く冷たさを感じた、という場面。
この場面で起きていたのは、スーツの中の水の入れ替わりです。体の熱で温まった水が、すき間から外へ押し出され、代わりに冷たい水が入っていました。スーツの素材は同じでも、水が入れ替わるたびに体の熱が持ち去られるため、冷たさを感じやすくなっていたのです。
覚えて帰る3ポイント
- 熱は温かい体から、体温より低い水へ移る。水は空気よりも熱を伝えやすい。
- 多くのウェットスーツでは、保温の中心は気泡を閉じ込めた発泡素材。厚いほど熱は逃げにくく、水の入れ替わりが少ないほど体の熱が持ち去られにくい。
- 深く潜ると気泡が押しつぶされ、保温と浮く力が下がる。水温の層は場所や時期で変わる。
確認クイズ
Q1. ウェットスーツの中に入った水を温めているのは何?
ア. スーツの素材そのもの イ. 自分の体の熱 ウ. 海の水
Q2. 体に合わない大きめのスーツで冷えやすいのはなぜ?
ア. 素材の気泡がなくなるから イ. 体の熱で温まった水が入れ替わり、熱が持ち去られるから ウ. スーツが重くなるから
答え:Q1はイ。熱を生み出しているのは体で、スーツの中の水は体の熱で温まります。
Q2はイ。すき間から水が出入りすると、温まった水が外へ出て冷たい水が入り、そのたびに体の熱が持ち去られます。
次に理解するとよいこと
この記事では、水の中で体が冷えやすい理由と、ウェットスーツが熱の移り方をゆるやかにする仕組みを見てきました。
- 深さによって空気の大きさが変わる仕組みは、レッスン「水の中では、空気の大きさがどうして変わるの?」で扱っています。
- 寒さも含めて、やめたほうがよい場合がある理由は、レッスン「続けるより、やめたほうがよい場合があるのはなぜ?」で扱っています。
- 船の上での過ごし方は、「ダイビングの水面休息とは?」で紹介しています。